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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第二章:Heroes who is not returned.
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Heroes who is not returned. 10

<<ハッハッハ成程な、空から来たりし者は迷子だったのか>>


 念話と呼ばれる声を私にかけつつ、左目をつぶりった上半身裸の筋肉質の大男はがっはっはと笑った。そのやけに大きい声はかなりの広さを誇る山間の洞に響き渡る。


 この少しくすんだ赤髪の彼は誰だろうか?この人が住むには大きすぎる洞で私の話を聞きつつどこからか持ってきた酒をかっ食らっている彼は。


「ですから物資を分けてもらえればと思いまして寄った次第です」

<<なるほどな、ドラゴン族の物でよければ幾らか差し出そうか>>

「ありがとうございます」


 そう何を隠そう先ほどのドラゴン、ドランさんだ。あの後銃口を下げた私は彼の背に乗せられ住処に案内されていた。


 こんな所に連れてきて何をするのかと思っていると。彼が一瞬大きく輝いた。そしてドラゴンがかき消え彼が笑っていた。


 彼曰く、人化と言うらしい。成長を遂げたドラゴンだけが身に着けられる高度な魔法だそうだ。


 それを見てかなり驚いた、物理法則を軽く無視した現象が目の前で起こったのだから。

 幸いにもファンタジーの本はかなり読んできていた、その予備知識が無ければもっと混乱していただろう。


 そして今は片目が潰れたというのに何故か気前よくなっている彼にこちらの事情を説明している最中だ。


「ありがとうございます。と言ってもすぐに、と言うわけにはいかないのですが」

<<空から来たりし者たちにも色々あるんだな……>>


 彼は私を空から来たりし者と言う、ヤミと言う名前は教えたがうまく伝わらなかったようだ。共通していない固有名詞は念話では難しいと言う事ですかね?


 彼が彼から見て左側にある酒瓶を片手で探っている。恐らく視界に違和感があるのでしょうか。


「すみません、片目を潰してしまって」

<<良いよい、数百年もすれば治るだろうからな。それよりも新しい友人に会えたことの方がうれしいさ。ほら、杯があいているぞ?>>


 彼から出された酒を受け取り一口含む。どこかラム酒に似た酒だ、と言ってもいくら飲んでも酔えるわけではないんですが。


 そう言うと彼はかなり強いなと楽しそうに笑っていた。そんなドランさんを見ていると一つの疑問が大きくなってきた。


「でも、なぜドランさんはここまで良くしてくれるんですか?」

<<俺達ドラゴン族には一つ大事な風習があってな、一番空高くまで飛べる者が長になるんだ。俺はその長だったんだがお前はもっと高い所から来た>>

「高い方が偉い……それが理由だということですか?」

<<ああ、俺たちは自分の翼に誇りを持っているからな>>


 なるほど、彼らの価値観で偉い人?という物の中に私が入っていたと言う事ですかね。

 しかし長とは……ドラゴンだとしてもかなりはっきりとした文化を築いているんですね。


「その長は人と仲良くするのは良いんですか?」

<<いいも何も俺には他にも人間の友人が居るからな。ヒトの身でありながら、魔法でかなり良い所まで飛んだエルフの賢者とかな>>


――エルフですか。


 どうにもファンタジーな種族の名前が出てきた。

 しかし、この星の文明はどうなっているんでしょうかね?どうも、月に剣を突き刺すまで進んでいるように思えないのですが。

 これはかなり調査しないとまずそうな気がしますね……。


<<それに俺はもっと高く……それこそ月まで行ってみたいんだ。お前に聞けばもしかしたら、そのヒント位は貰えるかもしれない>>

「そうですか?私は飛べませんし、あまり言える事は無いかもしれないですけど?」

<<だが人は知恵を持っているじゃないか、空の果てから来たならかなりの物を持っているはずだ>>

「それがあまり言えないんですけどね……この世界の文明がどの程度かもわかりませんし」

<<なるほど、人間の言葉で言う取引と言うやつだな……?そうだな、俺がこの世界の常識や言葉を教えてやる。その代わりにアドバイスを貰えないか?>>


 少し考える。幸いにも彼は私に好意的だ。それに彼から提案された事も必要なものだ。

 しかし文明の尺度がわからない、どの程度まで言って大丈夫だろうか?


「判りました、対価に見合うかはわかりませんがお願いします」

<<任せておけ。それに俺たちはもう友人だ、そんなにかしこまるなよ>>


 そう言って彼はまたひと際大きく笑ったのだった。













<<と言うわけで協力関係を結べました>>

<<了解です、ヤミさんも無事で何よりでした>>


 レイリー拡散によって赤く染まった夕陽を見つつ。通信の復旧したアイリスに現状の報告をする。

 

 ちなみに彼らは食事中だ。お前もどうだと言われていたが、出されたのが仕留めたばかりと思われる獣だった。

 やはり見た目人でもやはり中身はドラゴンのようだ、

 

 流石に生のままの肉を食べる訳にもいかず断った。食べなくてもいいこの体に感謝するしかないでしょう。

 そして食事中に席を外してアイリスと通信を始めたというわけだ。


<<輸送船の様子は?>>

<<あの後すぐ重力波も感知されなくなりました。生体装甲含めて現在位置は不明です>>

<<結局あれだけ撃っても倒し切れなかったということですか>>

<<流石に回復に努めると思いますが>>

<<そうでしょうね>>


 流石に撃ち始めた位置が遠すぎましたか。数発当たればいい方でしょうが、憂いは立っていてほしかったですね。

 流石にどこかしらに隠れて回復に努めるでしょう。

 

 生体装甲は教科外骨格の体を取っていても生きているから、全ての個体に自動修復機能を持っている。

 かの装甲はまるで再生医療のように自分で回復する。特に近接型ならその能力も高い、例え手足が取れても動くだけなら数日もかからず復活するだろう。


<<それと頼まれた地図、荒いですがどうぞ>>


 彼女からはこの周囲を上空から撮った画像を送ってくれていた。

 中身を確認する。通信の容量の都合で雲も多くこの周囲だけだが、この世界では偵察衛星のような物だろう。

 

<<それと中継アンテナを通して今の状況をヴィルヘルムに通信をしておきました>>

<<返信はなんと?>>

<<こちらからでは遠すぎる為、現地での行動はそちらの人道的な判断に期待する……と>>


 その答えを聞いてため息が出る、見事な放任宣言だった。

 無理にこちらに来たからしょうがないのでしょうが、恐らくへましたら責任を取らされるのでしょうね、


<<了解、向こうの様子は?>>

<<調査に向かわせた無人探査機がコクーン外周についたころだそうです。データは……恐らくまだ調査中かと>>

<<先が長いですね>>


 山に日がかかり沈んでいく。空と雲が茜色に染まり幻想的な光景が映し出される。

 その光景は宇宙空間からでは決して見れない物だ。


 私は視覚情報を三次元映像データにするとアイリスに送りつけた。


<<このデータは?>>

<<慰労と言ってヴィルヘルムに送りつけてください>>


 恐らく艦隊の方も緊急事態の連続で気が張っているだろう。古典的なVRでも原風景を見て気が休まるならそれに越したことは無いでしょうが。


<<まさに永遠の夕焼けですかね>>

<<……そうですね>>


 それは私たちの探偵社の名前でもあり船の名前だった。だがそのタイトルはさすがに少し寒いだろう。

 アイリスがまさかその名前で送りつけはしないだろうか、と一抹の不安を覚えたがあえて声には出さなかった。

 

 背に背負ったライフルからスコープを取り外して単眼鏡代わりに周囲を見渡す。


 送られた地図データと合わせて森を覗く。地図にはそこに村があると書いてあったが今は森しか見えなかった。

 恐らくドラゴン達が言っていたエルフの結界のせいだろう。


<<それで、マガジンのビーコンはキッチリ出てます?>>

<<ばっちり出てますよ、場所送ります>>

<<どれどれ……ダメですね>>


 送られてきたデータと照らし合わせて場所を割り出す。マガジンから送られてきている地点は結界の中だった。


<<結界、でしたっけ?こちらからの映像では人の住んでいる普通の森に見えるんですけどね>>

<<こっちからは村も見えないですよ>>


 こっちから歩いて行こうとすると鍵となる剣が無い限り、知らない間に元の場所に戻されてしまうという。

 こうなるとマガジンの回収は後回しにした方がよさそうですね。


――コンテナの回収を先にしましょうか?


 コンテナの落ちた湖は地図で見れば結界の外側だ。恐らく結界の範囲外のせいであまり開発されていなかったのでしょう。

 単眼鏡をその方向に向ける。


<<あれ?>>

<<どうしました?>>

<<バリケードがあります>>


 目標の湖の周辺の洞窟に倒木などで作ったバリケードが張ってある。

 もしかしたら周囲で暮らしている人がいるのかもしれない。


<<これは要観察かもしれませんね>>


 この惑星の探索も一筋縄ではいかなそうだ。

 少なくとも本格的な調査開始は言葉を覚えてからにしよう。二人でそう話し合った。

お読み頂いてありがとうございます。

ご感想お待ちしております。

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