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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
プロローグ:無差別
3/56

無差別 3

 獣に気を付けつつ森を走る、運がいいのか不思議と獣たちは出てこない。

 しかし、崖から見て一番近い村の端についたころにはすでに昼前になっていた。


「誰か!誰か居ないのか!」


 木々の間に家が寄り添うようにできた小さな村だ、だが――。


 ――人の気配が……ない?


 昼前なら人が活発に活動してるであろう村は静まり返っていて、人の気配が一切しない。

 

――それにこの腐ったような……錆び付いたような匂いは……。


 慌てて村の中心に向かう、中央の広場は嗚咽一つを除き静まり返っていた。


 戦闘があったんだろう、錆び付いた臭いが充満する中、十数人の人が倒れその周りに剣や弓が散乱している。

 倒れている人はみな一様に体中を爪でえぐられ唯一動いているのは――。


 ――嗚呼、だめだ……

「)%’”&!&=$!」


 片方の腕に巨大な爪を持ち、血濡れの異形の"大鎧"と。

 その中、すでに死に体の男を守ろうと弦の切れた弓をもって立ち向かってる金髪の少女だけだった。


「おい……って、エ?」


 慌てて駆け寄る俺の声に少女が振り向く。こちらを見て戸惑ったような翡翠色の瞳、そして――。


――エルフ?


 少女はまるでおとぎ話のように長い耳をしていた。驚いて足が止まりそうになるのを無理やりに前に進め――


「!&%&?」

「危ない!」


 "大鎧"が腕を振り上げるのを見て、慌てて少女を投げ飛ばす――。

 直後鎧が爪をふるう。間一髪、鎧の爪は俺たちのすぐ近くを通って――。


「そいつは、もうだめだ!――逃げろッ!」


 叫びつつ左腕に鋭い痛みと視界をかすめる赤い液体。どうやら爪がかすったようだ。

 体勢を立て直し、少女を守るようにナイフを構え――。


――左肘から先が動いてねえな……


 横目で違和感のある左腕を確認する。肘のあたりにバッサリと深い傷。

 奥に白い何かが見える、どうやら骨まで達しているようだ。


 「&、&&(?」


 状況をうまく理解できていない少女に向かって、左腕を乱暴にふるって下がれと合図を送る。周囲に派手に血が散るが今は構わない。


 背中から逃げる足音が聞こえる、少女が状況を理解してくれたらしい。

 痛みを訴える腕から意識を外して、再び鎧に意識を移す。


――改めて、でかいな


 深い緑色の金属質な光沢を放つ血まみれの大鎧、背丈は俺の1.5倍はある、武器は異常に発達した右腕の爪だろうか。

 高い位置にある顔はフルフェイスのマスクで判らないが、確かに視線をこちらに向けている。


――逃がしては、くれなそうだな


 ならば、と踏み込み鎧のすぐ下に張り付き、大鎧の隙間にダガーを刺しこみに行く。

 しかし狙いが甘かったようでダガーが鎧の表面を滑る。

 

「くっ」


 間髪入れず薙ぐように振るってくる爪をしゃがんでかわす。

 髪の毛が数本遅れ、千切れていく。


――見た目より、速い


 どうやらこいつを動かしてはいけないようだ。

 大鎧の意外と素早い動きを殺すため、今度は足に狙いをつける。


 鎧が一歩踏み込んだ左足、その膝の裏に向けダガーを刺しこんでいく。


「よし――!」


 今度は上手くいった、鎧の隙間にダガーが刺さる。

 手元で肉を裂く感覚を確認するとそのまま捻りつつ引き抜き。鎧を蹴りつつ飛びのいた。


 大鎧の装甲の一部がはじけ、膝から深緑色の体液がにじむ。


――人じゃないのか?


 にじみ出した鎧の体液に驚きつつ、再び同じ位置を刺していこうと――


「どうして邪魔をする?    」

「!?」


 突然かけられた意味ある言葉に驚き、一瞬止まる。

 まさかこの大鎧、俺が誰かを知っている?いやそもそも俺の言葉がわかるだと?


「それは、どういう――」

「――!」


 突如、鎧が爆発した。いや――


「援護か?」


 どこからの援護で大鎧の周りの地面がひとりでに爆発を続ける。

 どこだ――?周りを見渡しても誰も見えない。


 ひとまず構えを解かず、息を整え爆発が収まるのを……。


 ――えっ


 構えようとした手から力がぬけてダガーがすりおちていく。体中から力が抜けて膝をつく。


――血が……


 血の流し過ぎた、急激に体中が凍えていく。動かない左腕からひたすら熱い雫が落ちていく。思考が急速にぼやけていく。


「    」


 いつの間にか終わった爆発を耐えきった、穴だらけの大鎧に頭を掴まれる。

 かすむ視界と鎧の隙間からの視線がかち合う……。


「……」


 隙間は暗く中身が見えないが、鎧は俺を舐めるように見渡して、興味がなくなったかのように乱暴に捨てられた。


「ま……て……」


 倒れた伏した状態で、去っていく大鎧に手を伸ばす。

 それもむなしく、大鎧は森に消えていった。


 もう指の一本も動かない、頭の回転もどんどん鈍くなっていく。


――俺は、死ぬのかな……


 体中が寒い、もう音も聞こえない。

 あの少女は、逃げ切れたのだろうか?


「死にたくは無い、な……」


 結局、俺は、誰だったのだろうか?

 薄れた思考の中、それだけが心残りだった……。

次章予告

彼、Mr.Kについて話しをしよう

彼はいつでも揺らがない男だ

日常で、戦場で、そして異世界で

何時だって、どこでだって彼の精神性は揺らがなかった

次章『同一性』

なに?その自己同一性(アイデンティティー)は記憶を無くしても維持できるのかって……?




お読み頂いてありがとうございます。

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