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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第二章:Heroes who is not returned.
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Heroes who is not returned. 7

「これより会議を放送する、作業中の者は作業の手を止めずに聞いていてほしい……」


 VR会議室はまだ前回の会議から24時間たっていないというのに、約半分の顔ぶれが入れ替わっていた。

 船長の意識が戻っていない間、船の指揮を最高階級者が代替しているのでしょう。


 その点二人とも無事目が覚ませた私たちは幸運だった。

 厄介事を押し付けられるという意味では不運でしょうが。


「まず最初にバラバラになった時計を合わせる。現在時刻を宇宙歴3000年5月4日、銀河標準時で12時ジャストとしよう」

 

 不確定空間を通ったせいであらゆる計測機器が狂っていた。それは時間の観測装置ともいえる時計も同じだ。

 

 アイリスが内部のプログラムを弄り何も表示されていなかった時計が12時ジャストを示す。

 私も手元の懐中時計を12時に合わせた。

 

「……よろしいかな?それでは現状確認と今後についての話し合いをしよう。皆階級関係なく忌憚のない意見を頼みたい」


 VR会議室の議会席、疲れた様子のジョシュア提督が会議の開始を宣言した。


「みな知ってのとおり現在船員の約半数が意識が戻っていない。原因は不安定なジャンプで意識が六次元のはざまに行ってしまった置き去り減少に近いらしいが詳細は不明だ。幸いなところ死者は確認されていないため、全員を休眠装置で眠らせている。解決方法は目下調査中だが、医者の見解によると時間経過で肉体に意識が戻ってくる可能性が高いだろうという事だ」


 まず切り出されたのは、若干の希望論は入っていたとしても朗報だ。

 

 コールドスリープ中に意識が戻ってきた場合どうやって確認するのかなど考えることもあるが、死者は出なかったらしい。

 

 代理している人たちの一部が安堵する。やはり船団の長ともなれば責任が強いのでしょうかね。


「幸いながら休眠措置を取ったことで物資にはすこし余裕が出ている、このままなら三年は持つと計算が出ている」


 コールドスリープの措置を取ったため物資には余裕はあるらしい。

 しかし三年……長いようで短い時間ですね、特に宇宙空間でなら時間はいくらあっても足りない。


「しかし人員が減ったせいで満足に動かせない船も多いのが現状だ、この状態でコクーン内の調査は出来そうにない」


 約半数が動けない、更に休ませている装置にも若干名人手が取られるとなるとなるとそうなるでしょうね。

 調べるには時間がかかる、ですが意識が戻ってきても人を増やせばその分消費する物資が増える。完全にジレンマだ。

 同じ事に気が付いた数人が暗い顔になる。


「そこで物資のあるうちにコクーンからの離脱を試みようとおもう、これについて反対意見は?」


 大きな反対意見は特に出なかった。

 一人来た時と同じようにジャンプでの離脱を提言した者はいたが、来た時と状況になる可能性が高いという。

 ジョシュア提督としては、最後の手段として取っておきたいそうだ。


「……可能性は一つでも取っておきたいからな、他に意見は?」


 そう言って彼は周囲を見渡す。他の人も特に意見はなさそうだ。

 

 しかし、居住可能惑星について何も言っていないのが気になりますね。

 まさか惑星について私たちしか気が付いていないのでしょうか?


「ネヴァーサンセットのヤミです、追加の情報を良いでしょうか?」

「追加か?」

「ええ、もし気が付いていたなら結構なのですが……アイリス先ほどの映像を」


 アイリスが私の意図を組んで何も表示されていなかった会議室の円卓を制御する。

 青を基調とした小さな花のロゴが表示され、その後MX003惑星の映像が映る。

 水の反射する青をたたえた星が表示されると会議室に動揺が走った。

 

「先ほどこちらでMX星系の構成を確認してる時に発見された、MX003惑星です」


 そう言えば言ってなかったが、MX003と言うのは各星系の惑星を命名する時の命名規則にのっとった命名だ。人類が到達したことのあるMX番目の恒星系で、そこの恒星で近い方から順番に001、002と連番されていく。

 つまり10進数で言えば362番目に到達した恒星系の3番目の衛星と言う事ですね。


 到達している恒星系が意外と少ない?そもそも別の恒星系にたどり着くこと自体が大冒険なので、しょうがないのでしょう。そんな危険な冒険をするよりゲート同士でつながった星系を巡った方が良いでしょうし。

 137億光年先より貴方が良い、なんてラブソングが一昔前にありましたが……話がそれましたね。


「目視ですが見てのとおり水のような物質が有ります、有機物の補給も可能でしょう。補給が可能なら三年というタイムリミットは無い物と出来るはずです」


 私の報告に会議室が若干湧く。ボトルネックになっていた物資の危機が無くなれば、後は時間をかけて探索すればいい。


「しかし懸念も有ります」

「……懸念か?」


 私の一言に再び静かになる会議室、ジョシュア提督が代表して質問を返してくれた。

 私は続ける。


「コクーン内に入る前の会議でも言われていた通り文明が有る可能性があります。そこから私たちのような宇宙の迷子に物資を分けてもらえるかどうかは交渉次第と言ったところですが――」

「ヤミさん、引き継ぎます。それとこちらの方が厄介ですが……文明レベルが低い可能性もあると思います」


 アイリスが私の言葉を引き継いだ。どういうことだと一瞬思ってその可能性を聞いて納得した。

 

 そうだ、文明が有ったとしてもその文明が低い方が厄介なのでしたね。

 前に獣人惑星と戦争になったと言ったでしょうが、その原因がこれでした。

 

 当時、初の異星系文明との遭遇と言うことで、積極的に獣人文明と接触した人類は彼らに積極的に技術を分け与えた。

 当時の人間たちは、まるで1:4:9の四角い柱のように彼らに進化を促した。

 

 その影響は凄まじく彼らの技術は発達した。しかしそのたった数年で彼ら独自の文化が壊れていった。

 当時彼らの世界を統一していた王は、これを私たち人類側の文化侵略だと糾弾し戦争へとの発展した。

 

 戦争は王の暗殺と、その後継者争いに乗じた人類側の代理戦争で泥沼化。結局完全に人類側の勝利で終わって獣人文明とは同盟を組んだんですが。死んだ王の言っていた文化を用いた侵略そのものになってしまっていた。

 

 この悲劇から未開文明保護法と言う法律が定められた。文明レベルがまだ発達しきっていない場合は、観察だけに努めて接触をなるべく避けようという法律だ。


「……と言うわけです」


 アイリスがそのあたりの事をわかりやすく説明する。

 

 ちなみに未開文明かの判断基準はその付近の惑星ないし宇宙に人工物があるかどうかだ。つまりロケットなど宇宙開発が活発になった段階で段階的に我々の事を知らせていこうということになっている。


 問題はまだ前例がないという事ですが……。


「つまり目の前にあっても、手を出せない可能性があるという事か?」

「あった場合はこの辺りの星から鉱石を取る事なども違法です。さすがに非常事態では認められていますが……後で保証をすること前提で」

「なるほど……見つかってしまった以上、調べ無い訳にはいかないのか、だがいける船が居ないぞ……」


 ジョシュア提督が考え込む。そうですね、流石に動かす人員が減った船で調べに行けるような簡単な仕事ではないでしょうが。

 

――ああ、そういう事ですか……


 そう考えたところでアイリスの意図が分かった。なんというか悪辣で、ですが効果的とも言えるんでしょうが……。


「一隻だけ、現状乗員が全員揃って身軽に動ける船が有ります」

「何だと」


「私たちです」


 アイリスはそう自信満々に言い切ったのだった。










「物わかりのいい提督で良かったですね、独自の指揮権限ももらえましたし」

「いや……あれは……」


 輪の付いたガス状惑星のMX006惑星のそばを減速スイングバイで抜け速度を落とす、フィフスドライブを再起動。光速の75%の重力慣性航行へ移動する。


 あれから会議はアイリスの独壇場だった。

 一隻しかいない事と軍以外の外部組織と言う事を盾に、現場での独自の判断権限と一部の物資をもぎ取っていった。詳細は伏せますがまるで海賊のような手法だったとだけ言っておきましょう。


「と言ってもヤミさん忘れてませんか?」

「はい?」

「私たちはどっちにしろ行かなければならなかったんですよ?ライト少将の言葉忘れてませんよね?」

「あっ、あー……」

「忘れてましたね?」


 そうでしたね……兵器を乗せた輸送艦が居るんでしたね。なんかいろいろな事があって忘れてた気がします。たしかこの宙域から救難信号が出てその船を探すために……。


「あれ?そう言えば救難信号は今は出てないんですか?」

「……」

「アイリス?」

「出てないんですよね……」


 出ていない?

 なぜだ?まさか出せないような状況になった?


「これまでに輸送船の残骸は?」

「ありません」

「そうですか……急ぎましょう」


 今の私にはわからないが、どうやら複数の状況が複雑に重り合っているらしい。それだけは確かだった。

お読み頂いてありがとうございます。

ご感想お待ちしております。

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