Heroes who is not returned. 4
「我々はグラゼ革命軍である!機動エレベーターは我々占拠した!手を上げておとなしく投降すれば命は保証する!」
鏡で覗き見たバリケードには、甲冑にも似た甲殻に包まれたノマーニュ型生体装甲が2体と随伴歩兵が4人。
生体装甲とは先に言った万能細胞を使い生体工学と機械化工学の組み合わせで生まれた、人造の装備品型生命体だ。この生き物を着ることによって何倍もの力を発揮することができた。
相手は道を封鎖するように車などを使った即席のバリケードに陣を張っている。こちらに銃口を向けいつでも撃てる様子だ。
命は保証するなんて言っているが、先ほど撃ってきたのはそちらでしょうに――。
「ちょっとー聞いてるかなー?」
「何ですかうっとうしい」
軽薄そうな男に鏡との間に手を入れられる。
そう言えば彼もいましたね……鬱陶しくなり男の方を向いた。
「やっと向いてくれた」
「どうしたんですか?ここで怯えて丸まってればいいでしょうに」
「そういうわけにもいかないのさ、ほら」
男が胸元から身分証を取りだす。軍人を示す黒い合成革製の身分証に書かれた所属は一三六独立部隊、知らない無い部隊だ。
名はカイン・ハーネスト、階級は一等兵……まだ新米じゃないですか。
「で?そのカイン君がなんです?」
「だから俺には軍人として市民の平和を守る義――ウワァ!」
カイン君が興奮して立ち上がろうとしたところで相手が撃ってきた。カイン君の頭をひっつかんで車の陰に降ろす。
「……義務があってだな……」
「そう言う事ですか?じゃあこれを」
服に忍ばせていた名刺を投げ渡す。
「探偵社ネヴァーサンセット……ヤミ?」
カイン君は良くわからないといった表情で拾う。どうやら書かれた内容が理解できていない様子だ。
「あれ、私だから追ってきてたんじゃないんですか?」
「いや俺は次の任務で一緒になる人員を見張っておけと上官に言われただけで……って言っちゃいけないんだった!」
ああ、なるほど……軍人の派閥同士の問題ですか。
私は、カイン君に対する警戒を解いた。
感じから騙そうとしてもこの性格なら問題ないでしょう。すぐにぼろが出そうな性格ですし。
それよりも向こうのバリケードをどうにかしなければならないですかね。
「通信は?」
「ジャミングされてるみたいだ」
一応こちらからもネヴァーサンセットを呼び出すがノイズしか返ってこない。
まあ私の方は公共通信の間借りなの呼び出しがかかるとは思ってなかったのですが。でも丁度いいですね……。
「なら私が上官ですね」
「えっ?」
「そのの名刺に傭兵ギルドのランクBと入ってるはずです」
「今そんなギルドの階級が何の役に」
「戦時特例で少佐扱いになります、カイン君武器は?」
「君って俺は……」
「銃はどこだって聞いたんですが?」
「失礼しましたマム!車の中ですマム」
「……もう良いです、車の後部座席に袋が有る筈ですから出してください」
調子のいいカイン君が後部座席を開け袋を出してくる間に、持ちっぱなしだった空のリボルバーの弾を取りだす。
留め具を外すと引き金の前で拳銃が二つに折れ中から空の弾倉がのぞく。フルムーンクリップに詰め込まれた六発の弾丸を弾倉に入れ元に戻す。
残りの買ってきた来た物を漁ってもう一つのリボルバーを取り出す。こっちはカイン君に渡しますか。
武器買ってきてよかったですね、実弾兵器が多いのは趣味で買ったものだからですが。
「おっも……何なんだよこれは」
「そこまで出れば後はこっちで取ります。実弾銃は使えますよね?」
「VR訓練ならやった、実践は初めてだ」
「説明書も渡します、当てなくても良いので牽制を」
実に頼り無い事を言うカイン君に2本目のリボルバーと弾薬の詰まった箱を渡す。なれない様子で装填してバリケードに牽制するのを見ながら。重たそうに引っ張っていた袋からライフルを取りだした。
「作戦を説明します、あなたが乗り捨てたオープンカーがみえますか?」
「見えるが何を言って――ってなんだそのお化け銃!」
「私のライフルです、私がこれでバリケードを破壊するのであれを取ってきて下さい」
「破壊ってそんなんでき――」
ドオオォォォォォン!
カイン君が疑問を浮かべるのでその疑問に答えるようにバリケードを構成してる一台の車を撃つ。中のバイオ燃料タンクを撃ち抜かれた車が爆発炎上し隠れていた歩兵の一人が吹き飛んだ。
「わかりましたか?」
「お、おう……」
「なら早く行ってください」
突然爆発した車に混乱しているバリケードを見つつレバーを引き次弾を装填。セレクターをレーザーに切り替える。
「待て貴様、ギャアアアア」
混乱から立ち直り前に走っていくカイン君を撃とうとしている随伴歩兵。その肩を構えた銃ごとレーザーで焼く。
「顔を出すな撃たれるぞ!今治してやるからな」
――これで3人無効化っと
撃ちぬいた奴が後ろに運ばれていく。肩を狙ったのは「命を大事に」なんて理由ではもちろんない。撃たれた人と介抱する人、これで一射で2人無力化したことになる。
バリケードの生体装甲の一機が動く、爆発から立ち直り銃を構えようと動いたところで胴体を撃ち抜いた。
――確かノマーニュ型のコアは胴体だったはずですが……。
人工生命体である生体装甲には絶対的な弱点が存在する。それは培養を始める前、作りだす装甲の遺伝子を詰め込んだコアだ。このコアは装甲が出来上がった後コンピュータとしての役割を持つ。人間でいえば……脳だ。
撃ち抜いた胴体が爆発したような勢いで後ろに吹っ飛ぶ。コアが撃ち抜けてればこれで良い筈だ。
――ああ、心配無用でしたね。
倒れた生体装甲は動かない。コアは撃ち抜けていなかったが、どうやら着ていた中身が死んだようだ。
「どうなってんだよ、くそが!応援を!」
今の2発でこちらの威力がわかったのか相手が隠れて出てこなくなった。しばらく待っているとカイン君が車を回して来た。
「ヤミさん取ってきましたよ!」
「上出来ですカイン君」
荷物をオープンカーに放り込む、ライフルを構えたまま助手席に乗り込んでバリケードにグレネードを投げ込んだ。
「で、どこに行くんだ?」
「エレベーターです。ナビのAR表示に地点を回します」
投げ込んだグレネードがバリケードを吹き飛ばして車一台分の隙間が空いた。カイン君のARとナビに地点情報を打ち込んで助手席でライフルを構える。
「ってそこ、敵地のど真ん中じゃねえか」
「管制室が無事ならそのエレベーターは私の貸し切り状態です。行ってください!」
「ああっ!もうどうにでもなれ!」
カイン君がアクセルを踏み込んだ。この状況で管制室が制圧されてないなら地上にこのエレベーターがまだ残っているはずですよね。
「カイン君!次を右です」
「くそまたBOAが出てきやがった何機いるんだ!」
「無視してください、こちらで対処します」
「そしてなんなんだよヤミさんは!」
――さあね?気にしたこともありませんよ。
正面に出てきた生体装甲の足を撃ち抜き無力化しエレベーターへ向かう。軌道エレベーター基地内を車で駆け抜け少しで乗り込め――
『活動中の全革命軍へ、管制室を確保した、これよりエレベーターを全機、途中で止める。繰り返す、活動中の全革命軍へ……』
館内放送とテロリストの勝どきが施設内を響きわたる。
軌道エレベーターを使え無くしてきましたか。
軌道エレベーターが上に届くまでは約90分、すぐ戻したとしても180分……3時間だ。
だからこそ途中で止めて双方から簡単に使えなくしようと言う事でしょう。
カイン君がテロリストの館内放送と激しい抵抗にいったん車を物陰に止めて射線から隠れる。制圧射撃が開始されて身動きが取れなくなる。
「やべえよヤミさん!管制室、占拠されちまったぞ。逃げるか?」
「目的地はこのままです」
「はっ?でも今行ってももうエレベーターが居ないだろ!?」
「管制室を取り戻すにしてもこの方向です。ですけどね、もう大丈夫だと思いますよ?」
「何言って……」
地上でここまで大規模に動いていれば、彼女がいくら非干渉だと言っても動き始める事だろう。
『……な、コンソールがロックされた!?』
『内部からです、館内放送もロックされて解除できません!』
『モニターが全部ブラックアウトした!キー入力も効かねえどうなってんだ!』
『扉があきません、無線ジャミングも解除されました!』
狂乱した管制室からの放送をされて、一瞬テロリストのからの制圧射撃がゆるんだ。そのすきを逃さずカイン君が強制突破する。私もすかさずレーザーを起動して薙ぎ払う。半分を無力化して残りが追ってくる。
「ほらね?そこ右でエレベーターです」
「はあ……はあ!?」
追ってくる奴らを止めるように後ろの隔壁が上がり始めた。突然のことに混乱するカイン君を追い打ちする様にナビから声が聞こえだした。
<<こちらアイリス、ヤミさんは無事ですね?>>
「なっハッキング!?」
「状況は?」
<<管制室は完全にロックしました、中にこのテロの主犯と思われる方も閉じ込めてあります>>
「私達にできることは?」
<<逃げる事だけですエレベーターを回しますから、宇宙軍が出張ってくる前に退避を>>
「聞きましたねカイン君行きますよ」
「何がどうなってるんだ!」
カイン君が車を出すと同時にテロリスト側がざわめき始める。振り返れば20mを超える高さのアイリスのアバターが空中に浮かんでいた。広告用のホログラフ装置ハッキングしましたようですね。
――しかし大きいとシュールと言うか……
テロリストが空中に突如現れた青い少女に向かって撃ち込んでいる。が、もちろんホログラフのため何の効果もない。
『全テロリストに告ぎます。主犯格は管制室に閉じ込めました。宇宙軍も間もなく到着予定です。あなた方に勝ち目はありません、武器を捨てて投降してください。繰り返します……』
「あいつもヤミさんの仲間か?」
「ええ、彼女はアイリス。私の自慢の相棒ですよ」
迎え入れるように入り口を開けたエレベーターに車ごと滑り込んだ。
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