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クリムゾンスカイ  作者: えーじゃん
第二章:Heroes who is not returned.
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Heroes who is not returned. 3

 AB004ガジェ機動エレベーター上に作られた宇宙港に船をつけた。そのままエレベータを一機、貸し切って私だけ地上へ。アイリスは港の大容量回線を使って情報収集をしてくれている。


「いますかね?」

 

 エレベーターで車を借り、ドーム状になったテラフォーミング済み地域の端、スラムの一角の廃ビルのような建物につける。地下へつながる階段を降りドアを開ける。銃を預けた店だ、そこは嗅ぎなれた油と鉄のにおいが充満していた。

 銃が無造作に散乱した店内、ドアベルなんて気の利いたもののついていない。私は開けっ放しにしたドアに寄りかかるとノックして店主を呼ぶ。

 店主が奥の部屋から少しだけ顔を出す。ゴツゴツとした筋肉の体に爬虫類のような顔をした獣人だ。

 

「客か……レンジの奥にあるから持って行け」

「またそんな出来合いの料理みたいに」


 そう言うとドアの向こうに引っ込む、相変わらずの不愛想だ。私は勝手知ったると言った感じで、試射場につながる分厚いドアをくぐる。

 非常用のエアロックを数枚くぐり広い空間に出る。テラフォーミングされていない地下まで大きく伸びた試射場だ、そこの一番奥のレーンにそれは有った。

 

 傑作銃であるファイアーアームズ社製M2107の外観だけを持って来た古典的な対LPSライフル。

 特徴的な箱型大型マズルブレーキを備えたそれを手に取ると、ボルトレバーを引く。引っかかる感じは無い、動作は良好そうだ。

 

 ライフル用のシューティングレンジ台には5発の弾丸……いや砲弾と大型の箱型マガジンが4つ。これで試し撃ちしろと言う事なのだろう、マガジンの一つを手に取ると一発一発砲弾を詰めていく。

 

 おおよそその箱には入らない量の弾丸が難なく入っていく。新開発の六次元回路で、中身はほぼブラックボックス。というよりオブザーバーエフェクトで解体すると動かなくなる可能性が高い。理由は判らなくても動作する物は動作する、六次元回路とはそういう物だ。

 

 弾のつめ終えたマガジンをはめ、安全装置を外しセレクターをセミオートに変えると持ち手を握る。

 

 バイポットを台にしっかり固定できたのを確認する。ボルトレバーを引き薬室に銃弾を押し込む。スコープを覗く。

 目標は500m先、30cm刻みで書かれた同心円で描かれた的だ。

 

 精密スコープを覗いて的の円の中心に銃弾の予想ラインを合わせる。

 物理的にも電子的にも動くようになった引き金に指をかけ、ゆっくりと力を入れていく。

 

 スナイプ時に厄介な鼓動など止めて既に無い、屋内地下のシューティングレンジは完全無風状態で風もほぼ考慮しなくていい。この星の重力と自転速度だけを考慮に入れればいい。

 

 引き伸ばされた思考の中、キリキリと内側のばねを伸ばしていく感触を指先で感じながら引き金をを引いていく。キッチリ1kg力を入れた時、くびきの解けた撃鉄がチャンバー内の薬室を叩きつけた。


ドオォォォォン!


 爆薬が点火され36mm弾を推し進め、ライフリングを通り銃口へ。膨大に出る噴出ガスは、計算された大型のマズルブレーキを通り音と一緒に拡散させられる。だが拡散しきってもなお抑えられない音が部屋の中へ散って腹に響く。

 発生した猛烈な反動は体全身を使いに使って、地面に押し付けるように吸収する。


――フッ……


 私は心の中で笑った。たった一射でこれですか……素晴らしい。

 

 ちらりと横を見る、入り口付近には対減圧服の完全防備で先ほどの店主が来ていた。こちらを睨みつけ、視線で撃てるのか?と問うてくる。

 余裕だ、と視線で返すしてスコープを再び覗く――。

 

「あっ……」

 

 見ると中央の部分が吹き飛んでいる。36mmの破壊力に的自身がついていけなかったらしい。

 すっかり集中が切れてしまった。しょうがない、的の中心に打ち込むとしましょう。

 

 腹に響く重低音を連続して4回響かせ、ボルトレバーを引き薬莢を排出すると、いったん安全装置をかける。

 

「いい仕事ですよ店主」

「ああ、そのようだな、その化け物……」

「エーヴィヒ・モルゲンロートですよ?」

 

 エーヴィヒ・モルゲンロート、永遠の朝焼けと言う意味を冠したスナイパーキャノンだ。

 その名前は、昔私自身が名づけたとアイリスが言っていた。意味については良く知らない、たぶん船の名前と対になっているんでしょうけどね。


「そう、そんな名前だった……もう一つの方も試してみろ」


 店主は名前にはあまり興味が無いらしくぶっきらぼうに言ってくる。もう一つの方……弾種のことを言っているんでしょうかね


 この銃の使用可能弾種は、今撃った36mm徹甲砲弾と同一砲身から放たれる対人用レーザーの2種。フルオートセミオートとは別のセレクターを切り替えて使用弾種をレーザーのセーフティーに切り替える。

 

 軽く狙って引き金を引く。可視性のレーザーが飛び、的に書かれている外側の円に突き刺さる。

 これは試験用の殺傷能力の無い低出力レーザーだ。これでも目に入ると危ないですが覗き込みでもしない限り安全でしょう。そもそも銃口を覗きこむのはバカのやる事ですし。

 そのまま手元で僅かな操作をして円を一周なぞるとレーザーを消した。

 

「よさそうですね、では貰っていきますよ?」

「ああ、その銃も化け物だが――」


 やっぱりお前さんも化け物だよ。


 店を後にする、店主から漏れ出た最後の言葉は聞かないようにしていた。












「まったく化け物なんて失礼しちゃいますね」


 持って来た袋にしまった身の丈ほどあるライフルと一緒に買ってきたものを、後部座席に放り込んで運転席につく。

 ナビの目的地に軌道エレベータを入力すると借り物の車は軽やかに廃ビルを後にした。

 

「まあいいですか、仕事はキッチリしてましたし」


 車は自動運転で走っていく、スラムになっている地域を抜け。一路、区域同士をつなぐ高速道路へ向かう。

 

「んー……?」


 バックミラーに先ほどから同じ車が映っている気がする。

 カーブを数個抜けても変わらない。

 

「まさか着けられてますか……?」


 自動操縦を切りわざと1ブロックを回る、偶然自動運転が同じ方向ならこれで先に行かせられるはずですが――

 

――ダメですかね?

 

 誇示するようにわざとらしく、ぴったり真後ろについて来る。信号待ちの時にぶつかりそうなほど近づいてきた。

 これで気が付かないわけがない、荒々しくエンジンをふかすとマニュアル運転のまま高速道路に向かう。

 

「区域間道路に入る場合自動運転に切り替えてください」


 車が自動運転に切り替えろと警告するなか、高速道路に乗る。

 アクセルを一段踏み込み、一定の速度で走る車の群れをかいくぐる。

 

 バックミラーには、先ほどの車がつたないながらも前に出ようとしているのが見える

 だが高速の流れにうまく乗れなかったのか距離は離れていく。


 完全に見えなくなったあたりで一安心して自動操縦に切り替えた。


「大丈夫ですかね?しかしどこから……」


 どこの組織が追ってきたのかと絞ろうとして諦める。絞るにも候補が多すぎた。

 

 高速を降りると軌道エレベータが見えてくる、後はこの車を返してエレベーターに乗ってこの星から出るだけだ。

 平日の昼間、人の少ない道路を曲がる、正面には軌道エレベータのエントランスが。

 

「――いやいやいや!」


 道路を封鎖するように張られたバリケードが見えてきて、急ブレーキで路肩につける。

 助手席の荷物をひっつかみ運転席を飛び出ると車を即席の盾にする。


「失礼!、ちょっと入れてくれ」


 後続車の運転手の男が同じように車を乗り捨てて影に入ってきた。

 男が乗り捨てた車がバリケードに突撃する。

 

――ってあの車追っていた車じゃないですか?


 どうやら撒けていなかったらしい。

 

「いやー危なかった危なか……おいおいおい、ちょっと待て!ちょっと待て!」


 軽薄そうな男は笑いながらそう言いかけていたので、店で買ってきたリボルバーを突きつける。

 とほぼ同時にバリケードの方から撃たれレンタルカーの窓が割る。


「ほ、ほら撃ってきた、休戦!休戦しよう……な?平和が一番!」

「貴方はどこの誰です――ッ!」


 チュンチュンと銃弾が近くをかすめる。先にバリケードの方の対処をしなければいけませんか。

 

「……そうですね」

「……ふぅ、ありがとう、俺はカイン。君は?――」

 

 リボルバーを降ろす。露骨にほっとした軽薄そうな男が質問を投げかけてくる。その質問を無視して荷物から手鏡を取って車の陰から覗き見る。


――普通に宇宙に帰ろうと思ったら……まったく何がどうなっているんですか……。


 軌道エレベータは生体装甲の部隊に封鎖されていた。

お読み頂いてありがとうございます。

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