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花を吐き死に至る病

作者: 寄木露美

 妻が花吐き病に罹ってしまった。あくる日に彼女と会話していたら、突然薔薇の花弁が口から零れ落ちたのだ。僕は慌てて妻を医者の元に連れて行き、診断を受けた。結果、妻は花吐き病であると診断されたのである。

 花吐き病は、最近巷で流行っている死病である。患者の体内で花が生成され、体外に出る体液が花弁となってしまうらしい。勿論人体の中で花が形成されるなんて出来事は異常であるので、患者の体には負担がかかる。そして徐々に患者は衰弱し、最終的には死に至るのだという。

「持って半年ですね」

「なんとか出来ないのですか」

「花吐き病に対する特効薬は見つかっておりません。残念ですが、私共にはどうしようも出来ません」

 無機質な白い服の医者はそう言った。僕は何も言えなかった。

 妻は自分は花吐き病に罹っていると告げられても、特に取り乱しはしなかった。まるで本日の夜会が中止になった、とでも言われたように少しだけ目を見開いただけだった。

 僕の妻は美しい少女である。一説に拠れば、花吐き病は美しい少女が罹り易い病気であるらしい。だとしたら花吐き病は僕の妻に相応しい死に方なのかもしれない。

「わたくしは、死ぬのでしょうか」

「さあ、どうだろうね」

「わたくしは、貴方と共に居られたらそれで良いのです」

 花弁を零しながらそれだけ言って、妻は黙った。長い睫毛に縁どられた瞳が真っ直ぐに僕を見る。僕は黙って妻を抱き寄せた。華奢で小柄な彼女の体は、普段以上に軽い気がした。




 妻が花吐き病に罹ってから二ヶ月が経った。医者は死病であるといっていたものの、妻は特に衰弱しているようすもない。何時も通り朝食を作り、家事をして、刺繍を行ったり鉢植えに水をやったりしている。変わった点といえば時折唇から薔薇の花弁が落ちること、くらいだろうか。

 医者の言葉は本当だったのだろうか。時折僕はそう思う。花弁を口から零すことを除いては、妻は何時も通りなのだ。死病を患っているというのは全くの嘘で、本当は大した病気ではないのではないだろうか。

「エリカの花が、良かったです」

 三時のお茶の時間に、花弁を零しながら妻が急にそう呟いた。

「急に、どうしたんだい?」

「花吐き病の話です。わたくしの口からこぼれ落ちる花は、エリカの花の方が良かったと」

 妻は長い睫毛を伏せ、どこか拗ねた口調でそう言った。どこか憂いを帯びた表情は、とても美しい。

 妻はエリカの花がとても好きだ。家に置いてあるエリカの鉢植えは常に丁寧に世話をされている。確かに華やかで大輪の花を咲かせる薔薇よりは、小さくて可愛らしいエリカの花の方が妻に似合っている。

「エリカの咲く季節になったら、近くの野に行って散歩をしようか」

 僕がそういうと、妻は嬉しそうな顔で頷いた。エリカが咲くのは、後二つ季節を乗り越えた後だ。薄紫色が丘を覆う風景を妻と一緒に歩くのは、とても幸せに違いない。

 妻の小さくて細い指先が、茶菓子へと伸ばされる。その時ふと、微かな薔薇の香りを感じて僕は目を細めた。僅かであるけれども妙に鼻腔の奥に残るそれは、何処か僕を不安にさせた。




 妻が医者に花吐き病であると告げられてから四ヶ月後のある日のことだった。普段僕は家で仕事を行うので滅多に家を空けることがないのだが、その日だけは特別な用事で街に行かなければいけなかったのである。

「ちょっと出かけてくるよ」

 コートを着て鞄を手に持った僕を妻はじっと見ていた。深い紺色の瞳で、じっと。そういえば心なしか普段に比べて顔色が悪い気がする。

「……大丈夫かい?」

「いえ、大丈夫ですよ。ただ、お土産はマドレーヌがいいな、と」

 先程までと全く違った雰囲気で妻は微笑む。僕はそれに笑みを返して玄関を出た。

用事は二時間程度で終わった。僕は適当に街をふらふらとした後、日用品やお土産のマドレーヌを買って、家に帰ることにした。

「ただいま」

 最初に覚えたのは違和感だった。基本的に妻は僕が家から帰ってきた時に何時もおかえりなさい、と返してくれるはずだ。何かあったんだろうか。僕は玄関を通り過ぎ、そのまま家の中へと上がった。

 部屋の中で最初に目に付いたのは、幾重にも散った薄紅の花弁だった。木張りの床に点々とそれは散らばって落ちている。ぞわり、と背筋を冷たいものが上がっていく。まるで、血だ。部屋が、血で塗れている。

花弁は部屋の外へと続いている。嫌な予感を抱えながら、僕は花弁を辿っていく。リビングからキッチンへ、廊下を辿って寝室の前へ。寝室へと近づけば近づくほど、花弁の量は増えていき、色合いは徐々に強くなっていく。恐る恐る寝室のドアを叩くと、返事は無かった。どくり、と心臓が高鳴る。少し躊躇した後、僕は扉を開けた。

目の中へと飛び込んだのは、部屋中に散らばった赤だった。血のような真紅が白い部屋を赤く染めている。むせ返るような薔薇の匂いが、鼻の奥を突いた。妻は、妻はどこにいるんだ。必死に視線を巡らすと、床に倒れている妻の姿が目に入った。赤い花弁の中心で白いドレスを花弁に塗れさせて床に横たわる妻の姿は、ある種の芸術品のようだった。

その姿を目にした瞬間、僕の頭の中は真っ白になった。妻の名前を何度も呼びながら、何度も必死に彼女を揺さぶる。まさか、そんな。死なないでくれ。起きてくれ。

何度も揺すぶった後、妻は薄目を開けた。ほっとするのと同時に、少しだけ力が抜ける。目の端が熱くなったのに気が付いた直後、白い指先が僕の目尻を拭った。

「大丈夫、だから。だから、泣かないでください」

 弱々しげに微笑みながら、彼女は微笑む。僕は何も言えずに、ただ彼女の細い体を抱きしめた。さらさらとした髪が僕の頬に触れる。同時に彼女の髪からは、薔薇の匂いがした。ああ、妻は死へと誘われているのだ。彼女の身体を抱きながら、僕はそう直感した。




 あの出来事から、急に妻は衰弱していった。以前は花吐き病にかかる前と同じくらい動いていたのに今では歩くことすらもままならなくなってしまった。

 あの日以来、妻から溢れる花弁は更に増え、身体からは濃密な薔薇の匂いが漂うようになった。いや、僕が目を背けていただけなのだ。きっと以前から花弁の量は増えていたのだろうし、薔薇の香りは強まっていたのだろう。ただ、僕は事実から逃げたかったのだ、妻が死んでしまうという事実から。しかしそうやって目を背けることすらも、もう出来なくなっていた。

「ごめんなさい」

 あくる日、妻は僕に向かってそう呟いた。僕が彼女に手を貸して、居間へと移動している時のことだった。前は庭の散歩をすることが出来たのに、今では寝室と居間を一人で往復することすら彼女は出来なくなっていたのだ。

「どうして謝るんだい」

 妻に尋ねると、彼女は僕から目を逸らした。こういう時の妻は、何か言いたいことを意図的に我慢している。僕がじっと見つめ続けていると、彼女は根負けしたのか口を開いた。

「わたくしは、あなたを残して」

「言わないでくれ」

 僕は彼女の言葉を遮った。それ以上のことを、聞きたくはなかった。

 妻はどこか憐れむような目で僕を見た。次に目を逸らすのは僕の方だった。

「そんなことより、お茶にしよう。今日は何が飲みたい?」

 わざと明るい声を出して、妻へと問いかける。彼女は少しの間黙っていたが、カモミールが飲みたいとだけ言った。僕はそうか、とだけ返事を返す。

 妻を椅子に座らせ、僕はお茶とお菓子の準備をした。ただ心を無にして、淡々と茶葉をポットに入れる。お湯を沸かして皿に茶菓子を並べ、僕は小さく息を吐いた。花吐き病に関する全て、今現在起こっている全てが夢であることを願いながら作業をした。

 覚めろ、覚めろと何度も心の中で自分に言い聞かす。しかしながら一方でこれが現実であるということを僕は理解しているのだ。

 妻が咳き込む音が、背後から聞こえた。




 妻の身体から漂う薔薇の香りは、日に日に濃くなっていった。彼女の髪を漉き、華奢な身体を抱く度に鼻腔を掠めるそれを、僕はまるで死臭のようだと思った。この香りが強くなればなるほど、妻は死へと近づいてゆくのだ。

 妻が死んでしまうのは嫌だ。きっと彼女がいなくなってしまったら僕の日常は空虚なものとなって、どうしようもなく日々を消化するだけになってしまうのだろう。僕の願いは妻と共にあること、それだけなのに何故許されないのだろう。死が二人を分かつまで。しかし僕はそれすらも乗り越えてしまいたいのだ。

 そんな時だった。僕がある噂を耳にすることとなったのは。

 その日は、病気で動けない妻の代わりに買い物に出かけた日だった。必要な日用品を詰め込んでレジスターへと持っていった後、雑貨店の店主と話をした。

「知っていますか」 

大柄な体を持った店主は、僕にそう尋ねた。

「何のことだい」

「巷で流行している、奇病の話ですよ。花吐き病というらしいですが」

 僕は店主に目を向けた。この男は何故今こんな話をするのだろう。

「何やら奇病に罹った患者は花弁を吐くらしいのですが、その花弁を摂取すると高確率で花吐き病になってしまうらしいのです」

 どくり、と心臓が脈を打つ。

「既に闇市では花吐き病の患者から出た花弁が紅茶や砂糖漬けとして加工されて売られているらしいですね。嫌いな人間に食べさせて感染を引き起こすとか」

「何故、そんなことを僕に言うんだ」

「さあ」

 大柄な店主は何も読み取れない笑みを僕に向ける。ぞわり、と妙な寒気を体に覚えた。

「何やらお客様が思いつめた表情をしていらっしゃったので。助けになればと思った次第です」

 全てを見透かすような口調で店主は言う。何とも言えない不気味な印象を覚え、僕は店を後にした。

 帰り路、店主の言葉が脳内をぐるぐると回っていた。花吐き病の患者の花弁を摂取すれば、花吐き病に感染する。花吐き病は死病である。花弁が、感染を引き起こす。

 家に帰り、寝室へ行くと薔薇の花弁を散らして眠っている妻の姿が目に入った。その姿はまるで眠り姫だ。

 僕は無言で妻の周りに散らばっている花弁を集めた。紅色のそれを、一枚一枚逃さないように近くに置いてあった鉢の中へと入れていく。

 僕の名前を呼ぶ、妻の声で僕は我に帰った。長い睫毛に縁どられた大きな瞳が、じっと僕を見ている。

「どうかなされたのですか?」

 訝しげな目で僕を見る彼女に、僕は微笑みを返した。

「いいや、なんでもないよ」

 妻はそうですか、と言ったきり何も言わずに再び寝台に横になった。言葉を零す最中にも、紅色の花弁は唇から零れ落ちる。ああ、もっと花弁を集めなくてはいけない。




 妻の身体から零れ落ちる花弁を集め始めて三日が経った。妻が零した花弁一枚一枚を僕は拾い集めて、鉢の中へと入れていった。そして、気が付いたら鉢は花弁で一杯になっていた。干からびたりしないようにと水を張った鉢に花弁が沈んでいる様子は、まるで紅色の水が溜まっているようだった。

 眠りについた妻の額に口付けを落とした後、僕は居間へと向かった。テーブルに置かれた鉢には、紅色の花弁が大量に散らばっている。もうそろそろ頃合だろう。これでやっと、僕の願いへと近づくことができる。鉢の中から一つ花弁を取り出して、おもむろにそれを口の中へと入れた。ざり、とした食感の後に仄かな甘味が口の中へと広がっていく。それを丁寧に咀嚼した後に飲み込む。これで、一つ。

 一枚、もう一枚と花弁を咀嚼して飲み込んでいく。鉢を覆っていた紅色が、徐々に薄らいでいく。でも、まだ足りない。もっと飲み込まなければいけない。

 その時、背後で物音が響くのが聞こえた。瞬間的に振り向く。

 そこに居たのは眠った筈の妻だった。白い肌が明かりを反射して、暗がりの中で妙に明るく見える。夜空のような藍青色の目で、妻はじっと僕を見ていた。

「何を、なさっているのですか」

 どこか硬い声で、妻は僕に尋ねる。歩くこともままならない筈なのに、どうやってここまでやってきたのだろう。

「この前、街で聞いたんだ。花吐き病の患者が零した花弁を摂取すれば花吐き病になれるって」

 妻の顔が少しだけ強ばる。何故、そんな顔をするのだろう。

「前に僕と一緒に居られたらそれでいいと言っていただろう? 僕もそれを望んでいる。けれどもこのままじゃ駄目なんだ。君はもうすぐ逝ってしまうだろうから、だから」

 そう。死が二人を分かつまで、これを破ることが出来ないのなら。彼女が生きることが許されないと言うのなら。いっそ僕が花吐き病になってしまえばいい。彼女の方が逝ってしまうのが速いだろうけれども、それでも直ぐに僕も彼女の元へと逝けるだろう。そうすれば、もう二人を分かつものは何もない。ずっと、一緒にいることが出来る。

「死ぬのだったら君の身体だったものを受け入れて死にたい。僕も君と一緒に向こうに行きたいんだ」

 全ての言葉を紡ぎ終わったその時だった、妻の体が動いたのは。テーブルの上の鉢を手を伸ばし、そのまま宙へと持ち上げる。あ、と思ったその時には鉢は床へと転がり、中身は床へとぶちまけられていた。何故。どうしてそんなことをするんだ。そう思った直後、妻の身体は崩れ落ちた。

 瞬間的に腕を伸ばし、床に倒れ込もうとする彼女を抱きとめる。彼女が咳き込む度に、紅色の花弁が口から零れ落ちていった。何故だろう。何故、苦しい思いをしてまで。

「どうして止めるんだ。僕は君と一緒に」

「嫌です」

 か細い声が、僕の言葉を制止する。

「貴方が死んでしまうのは、嫌です」

 妻は顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。小さな肩がひどく震えている。

「花吐き病の噂は、随分前から存じていました。この病に罹った頃に、街で噂を聞いたのです。だから貴方が花弁を集めていた時も、なんとなく其の意図は理解していました」

 細い腕が力なく、僕の胸元を辿って首へと伸ばされる。そのまま彼女は僕を抱きしめた。

「本当は貴方が一緒に逝って下さろうとしていると知って、嬉しく思いました。一人で逝くのは怖かったのです。貴方を遺して逝ってしまうのも」

「ならば、何故」

「貴方が花弁を食べているのを見て、瞬間的に駄目だと思ったのです。わたくしは貴方に死んで貰いたくありません。わたくしは、貴方に」

 生きていて欲しいのです。小さな声で、妻は確かにそう言った。

 随分と自分勝手な話だ。遺される側のことも、分からないだろうに。本当は、一人で逝く事が怖くて仕方がないだろうに。それなのに。

「……随分と、残酷なことを言うのだね」

「自分勝手であるとは存じております。でも、貴方が死ぬのは嫌です。生きてください。生きて、わたくしのことを忘れないで欲しいのです」

 僕は改めて妻の顔を見た。彼女は泣き続けていた。涙と共に、緑がかった白色の花弁が零れている。ああ、僕はどうしようもなく彼女に甘い。こんな顔をされてしまったら、諦めざるをえなくなってしまうではないか。

 僕は妻の軽い体を抱き寄せた。妻が驚いた顔で、僕を見る。そのまま僕は彼女の小さな唇に口付けをした。柔らかな感触と共に、濃密な薔薇の匂いに脳が犯される。そのまま暫くした後に唇を離すと、息を荒くして涙目になった妻と目が合った。妻が何かを言う前に、もう一度唇を塞ぐ。花吐き病も生も死も関係ない。このまま溶け合ってしまえばいい。心の底からそう思った。




 妻が死んだ。あれから三ヶ月後のことだった。医者曰く、これだけ永く生きられたのは奇跡に近いとのことだった。

 妻が僕を止めて以来の日々は穏やかだった。僕たちはお互いになるべく長く傍にいて、短い時間を二人で埋め尽くしながら過ごした。そしてあくる日、妻は僕の腕の中で安らかに逝った。逝ってしまった後の彼女の体は少しだけ暖かくて、薔薇の匂いがして、僕はこのままずっと居れたらどれだけ幸せだろうかと思った。

 結局僕は花吐き病には罹らなかった。美しい少女が罹り易い病気だとされているから、美しくも少女でもない僕が罹るのは無理があったのだろう。でも僕が感染しなかった理由はそれだけではなくて、生きろという妻からの最後の遺言だと思ってしまう。それはきっと僕の妄想に過ぎないだろうけれども、そう考えればこれからも生きていける気がした。

 妻が死んでから一ヶ月、エリカの花が咲く季節になった。妻との約束を思い出し、僕は鞄に幾つかの物を詰め込んで近くの野に行くことにした。

 野は咲き誇るエリカの花で、一面が薄紫に染められていた。春の風が穏やかに吹き、それに花々が揺れる姿はとても美しい。あと少しだけ彼女が生きられたのなら、この風景を見ることが出来たのだろうか。そんなことを考えてしまい、少しだけ胸が苦しくなった。

 暫く春の風に身を任せた後、僕は鞄からあるものを取り出した。瓶に詰められた、少しだけ色褪せた紅色の花弁。そう、僕は約束を果たしにきたのだ。

 すっかり乾いてしまったそれを一つずつ取り出して掌へと乗せる。春の風はいとも容易く僕の掌から花弁を攫い、それを野へと運んでいった。紅色が、薄紫の中へと溶けていく。

 妻はエリカの花が好きだった。けれども彼女の身体から零れたのは薔薇の花弁だった。だとしたら妻の一部であるそれらは、エリカの咲く季節に放してやるのが相応しいと思った。僕の掌から運ばれていった花弁は地面に落ち、やがてエリカの花の糧になるだろう。紅色から、彼女が望んでいた薄紫へと変わることが出来るだろうから。

 瓶の中の花弁は徐々に減っていき、やがて最後の一枚も僕の手から離れていった。妻の名残は全て僕から消えた。少しだけ寂しいけれどもどこか穏やかな気持ちが胸の中へと広がっていく。きっと、これで良かったのだ。

 春の風は暖かで少しだけ冷たい。エリカの花の匂いが僕の体を包んでいる。もう少しだけこの場所に立っていたい。そう思いながら目の前に広がる薄紫を僕は眺めていた。


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