騎士ですが、世の中平和が一番なんです!
ノールさんの一人称でお送りいたします。一仕事終えて、温泉に漬かって気が大分緩んでます。
温泉!なんと素晴らしいものか!体の芯から温められ、全てが解放されるある意味恐ろしい空間!ちょっぴりアマーリエの無茶振りを許してやってもいいかもしれない。
「はぁ、ここに騎士の屯所を作って欲しい。死ぬまでここ駐在でいい」
そうこぼすと最近開き直ったグゥエン殿が冷たい目をしてこちらを見た。
「そうなったら、ゲオルグ様の担当になるだけだぞ?リエはこの温泉に関することはウィルヘルム様ではなくゲオルグ様に頼む気で居るからな」
そう言って鼻で笑われた。
「……」
ゲオルグ様に顎でこき使われる未来が垣間見えた。ご領主様とアマーリエが起こす騒動とどちらの方がマシなのか……。
「それはそれで大変だろうな」
アーノルドがポツリとこぼしやがった。
「あー。否定はできんな」
「割りとあの方、人使い荒い所あるからな」
「そうなの?」
ええそうなんですよ、グレゴール殿。
「ああ。グゥエン殿、この依頼が終わったらこの相互通信機をご領主に返却したいんだが」
「無理でしょうね」
銀の鷹のベテラン二人もゲオルグ様と関わったことがあるのかグゥエン殿の発言を否定しない。そしてなるべく関わらずに済むようにしようとしていた様だが、グゥエン殿ににべなく断られてがっくりしていた。ウン、うちの代々のご領主方は使えるものは容赦なく使うからな。優秀な者なら尚更、逃がすようなことはしない。
「はぁ、平穏を求めて騎士になったはずなのに……」
「は?騎士なんて剣持ってなんぼで平穏とは限りなく遠いだろ?」
ダリウス殿に呆れられてしまった。
「うちの場合、領土の平和のために騎士が居ますからね。平和の促進のためになら頑張れると思ったんですがどこでどう道を間違えたのか?」
「……お嬢と出会っちまったところじゃないのか?」
「ベルン殿何か?」
「いや、なんでもない(気付いてないんじゃなくて無意識で考えなくしてるのか?)」
「そうですか?それにしても、温泉。いい!唯一許せるリエの騒動かもしれない」
「ノール殿は毎回お嬢の騒動に?」
「ええ。一度巻き込まれたら、そのままいつの間にか実務処理担当に?」
「それは……」
「年々、やらかすことの規模が大きくなって。銀の鷹の皆さんが護衛についてくれてちょっとホッとしてます」
「「「えっ!?」」」
「アルバンの砦勤務なんで、しばらくは遠くからリエを見守る立場ですし。アハハ〜。ちょっと気が楽になったかも。やっと騎士らしい仕事ができる〜」
何やら銀の鷹の皆さんオタオタし始めましたが、私、自分の平和のためなら他人を贄にすることも辞しませんので。
「砦の騎士の監督頼んだぞ」
「ええ、もちろん」
なんか鼻歌漏れてきちゃったかも。ああ、この開放感!すばらしい!




