シルヴァンとダリウス
誘拐されていた砦跡から村に戻ったアマーリエはグレゴールと一緒にリルとハルの世話に向かう。一緒に着いてこようとするシルヴァンをアマーリエが止める。
「シルヴァン、まだリルとハルがお前に慣れてないから待ってて」
「キュゥ〜」
地面に伏してアマーリエをうるうると見つめるシルヴァンの姿にダリウスの心が撃ち抜かれた。
「……シルヴァン?」
「オン?」
ダリウスにそっと呼ばれ、そちらに顔を向け首をかしげるシルヴァン。シルヴァンに怯えた様子がないので、ダリウスはしゃがんでおいでおいでをする。
「シルヴァン、ダリウスさんに遊んでもらうといいよ」
アマーリエから遊んでいいと言われ、尻尾をちぎれんばかりに振ってダリウスに突撃するシルヴァンだった。その様子を見たマリエッタがボソリとこぼす。
「普通の魔狼でも今のダリウス見たら怯えるのに、変な子ねぇ?」
「そうですよね。普通の狼だと尻尾挟んで逃げ出してますよね」
ファルがマリエッタに相槌を打つ。
「くっ、ようやくダリウスになつく動物が現れたか!なんか感慨深いなぁ」
シルヴァンはダリウスの顔を舐め回している。ダリウスはそれを避けつつもシルヴァンをモフりまくっていた。
「ベルン、顔笑ってるわよ」
「いや、だってよ。子供の頃から身体がでかくていかつい面で猫に避けて通られるわ、犬は怯えて逃げるわ、雀は視線があったら気絶して落ちるわ、大変だったんだぞ。うちで飼ってた犬も漏らしてたしなぁ」
マリエッタに突っ込まれたベルンが次々とダリウスの心の傷をえぐる事象をあげていく。
「うるさい、ベルン!」
ダリウスの声にピタリと固まるシルヴァンに、慌ててダリウスがなだめに入る。
「あ、すまんすまん。お前に怒ったんじゃないからな〜」
「デレデレですね」
馬の世話から戻ってきたアマーリエがダリウスとシルヴァンの様子を見てポツリと漏らす。
「デレデレだね。ダリウスさんのあんな顔始めてみたよ」
グレゴールがアマーリエのつぶやきをつぶやき返す。
「ダリウスさん、よかったら今日シルヴァンと一緒に寝ますか?暖かいと思いますよ」
「いいのか!?」
アマーリエの言葉に目をキラキラさせるダリウスに、ベルンが腹を抱えて笑う。
「いいですよ〜」
「よし!シルヴァン一緒に寝ようなぁ」
「オン!」
こうしてダリウスと一緒に寝ることになったシルヴァンは、明け方、ダリウスに抱え込まれ抜け出せなくなり、キュウキュウ鳴いてアマーリエに助けを求めることとあいなった。




