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ダールさんに付け届けをしよう

「ご領主様にお菓子は送ったけど、ダールさんにも送っといたほうがいいよねぇ」

 ユグの村の木賃宿の炊事場で、顔に縦線の入っている銀の鷹と騎士達を見てアマーリエは呟いた。ノールなどは口から魂魄が抜け出していきそうな感じだった。

 魔力溜まりの事件の発端に居る彼らがこんな感じなら、事件の調整役をするご領主はもちろんその補佐役のダールの仕事量がいかばかりかと慮ったアマーリエだった。

「何にしようかな?いつも季節ごとに送ってる昆布のお菓子と昨日村の人からきのこ貰ったからきのこのチップスにしよ〜っと。あーあ、結局キノコ採りに行けなかったなぁ」

 アマーリエはリュックから昆布を取り出すと鍋に水を出し昆布を入れて戻し始める。晩御飯は昆布出汁の鍋物にする予定だ。

「さて、昆布を戻している間にきのこをスライスしてっと」

 もらった肉厚しいたけを薄くスライスしていくアマーリエ。

「何作ってるんだ?」

 今日の護衛役、ベルンがアマーリエに尋ねる。

「きのこのチップスです」

「?」

「昨日じゃがいものスライスして揚げたの出したでしょ?アレのきのこ版です」

「なるほど!お前は酒の飲みたくなるようなもんをまた作ってるのか」

「一応ダールさんに付け届けしとこうかなーって」

「なるほど。そりゃ大事だな。怒りの拳の速度が少しは遅くなるんじゃないか?」

「……やっぱ、怒ってました?」

「いや。俺らと一緒で頭はちゃんと大事だってわかってるぞ。ただな、巻き込まれた理不尽さに心が泣いてるだけだ」

「そこはもう、すみませんとしか言えないです」

「せいぜいうまいもんを送っとけ」

「は〜い」

 書類仕事に戻ったベルンに返事をして、アマーリエはきのこチップスの続きに戻る。スライスしたきのこに、刷毛で油を塗り天板に並べ石窯に入れる。焦げないようにひっくり返す作業があるのでアマーリエは石窯につきっきりになる。

「クッ、いい匂いだな」

「味見しますか?」

「ああ」

 カリッと揚げ焼き状態のきのこを石窯から取り出し、半分は塩コショウ、残り半分はチーズをすりおろして味付けする。

「はい、どうぞ」

 できたてのしいたけチップスをベルンに差し出すアマーリエ。

「ん!美味い。かぁ〜、エールがほしいぞ!アルバンに着いたらまずエールだ!」

「そうしてください。それまでに酒の肴作りためときますから」

「頼んだ」

「さて、昆布も戻ったかな?」

 昆布の水気をさっと風魔法で飛ばし、3cm四方に切っていくアマーリエ。フライパンに油を入れ、低温でさっと揚げていく。いりごまをふりかけてあっという間の完成だ。出来たものを少しベルンに分け、残りをしいたけチップスと一緒に発送準備する。

「よし、俺も書類を送るから、一緒に行くか?」

 ベルンと一緒に村役場でダールあてに荷物を送ったアマーリエ。その後、度々ダールからきのこチップスを送るように言われるとは思っていなかったアマーリエだった。


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