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翌日の昼近く、一行は小高い丘の上に着いた。そこからアルバン村方面が一望できる。
「あれがアルバン村だ。魔物よけの結界が張ってあるんだ」
「あ、あれですね! なんかモヤッ~ってしてる」
「モヤ~って何ぃ?」
「その子、魔力感知が視覚なんですよ。村の結界がモヤッと見えてるんですよ」
温泉村からの道中で漸く南の魔女に構えすぎなくなったマリエッタが説明する。
「……芋っ娘、なにげに便利ねぇ」
「意識しないと見えないですよ?」
「?」
首を傾げる南の魔女に、アマーリエがわかりやすいように説明する。
「感知するために魔力を目に集中するんです」
「「「「「「「はぁ?」」」」」」」
「え、肌で感じるのはどうやってるんですか?」
「……言われてみなきゃ考えたこともなかったわぁ」
「もうイヤだこの子……。また問題増やすんだから」
「え~、そう言われても。聞こえてる人は耳に魔力集中してるんじゃないんですか?」
「まあ、はっきりきれいな結界の魔法陣が見えるようになったわ。あの結界を作った方は素晴らしい技量の持ち主ねぇ」
「え?え?東のぉ?」
「リエさんが言うように魔力を目に集中しましたの。ほんとくっきり見えるんですのねぇ」
「……さすが、当代一の魔法バカ」
「まあ、マリエッタ。やらなきゃわからないじゃないの」
「あたしぃ、あんた達と居ると魔女の中でもまだまだ常識のある人間なんだって思うわぁ」
「ちょ、一緒にしないでください」
「あんたを一緒になんてしないわよぉ。西のことよ。ねんねちゃんなんてまだまだよぉ。精進なさぁい」
「それはそれでなんか納得いかないような?」
「面倒くさい子ねぇ」
「あ、あれあれ。あの村より奥にあるのが騎士様方が居る砦ですか?」
「ああ、そうだ。そのさらに奥の石の門がダンジョンの入口だ」
そう言ってカクさんが指差す方向に目を凝らすアマーリエ。
「……なんで鳥居?」
「ん?」
「イエ、ナンデモナイデス」
「そうか」
それきり村に着くまで黙り込んだアマーリエを気にせず、他の連中は魔力を目に集中することに一生懸命になっている。ワイワイ、結界が見えてきたなんだと話している内に、馬車はアルバン村の門へとたどり着く。
「ようこそアルヴァン村へ!」
にこやかに村の門番に迎えられ、漸くアマーリエは新天地へと到着したのであった。なぜだか増えた大物たちと鳥居の謎というおまけとともに。




