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騎士の宿舎から宿に戻る道すがら、

「本当に、リエを連れて行って大丈夫なんだろうな?」

少しばかりベルンが心配そうにマリエッタに尋ねる。

「大丈夫よ。昼間に色々確認したから。ほんとに器用なのよあの子。魔石つけて魔力の底上げしたら、初級の魔法使いよりも使える魔法使いに早変わりするわね」

「わかった。魔石をつけよう」

「ちょ、ベルン!?」

「いや、安心は大事だよな安心は」

「はぁ、わかったわ。持たせる」

「むしろ心配なのは森のキノコやベリーじゃないのか?ちょうど今の時期、春のキノコやベリーがいっぱいだと思うんだが」

そう突っ込んだのはダフネ。

「「「うぐっ…それは否定出来ない」」」

きのこを見つけたアマーリエがあちこちうろちょろしてきのこを探す光景がメンバーの頭をよぎる。

「…おいてくか?」

さっきよりも心配そうにベルンが言う。

「うんぐぐぐぐぐー、側にいないほうがより不安だから連れて行きましょう」

ものすごく低い唸り声を上げながら、マリエッタが最後の決断を下す。

「俺が、リエの手綱を掴んどくから」

グレゴールが半笑いでベルンに言う。

「頼んだグレゴール」

ドラゴンとやりあうよりも真剣なベルンだった。

「しかし、腹が減ったなぁ」

ダフネがお腹をさすりながらつぶやく。

「リエがもうとっくに夕飯作ってたから、さっさと戻って食べましょう」

「おおっ」

そそくさと宿に向かうダフネを笑いながら、メンバーは後を追う。

「おかえりなさい」

炊事場から顔をのぞかせたファルが声をかける。

「おう、ただいま。村の人は?」

「それぞれお部屋で休まれてます」

「そうか」

「あ、おかえりなさい。すぐご飯の用意しますね」

そう言ってリエは晩御飯を並べ始める。

大きめの皿に千切りにしたキャベツをたっぷり盛り食べやすい大きさに切ったとんかつを載せ、脇にじゃがいもと人参のサラダを添える。因みにダフネの分だけとんかつは3枚にしてある。朝食べてる量を見たアマーリエは、1枚では足りないと判断したのだ。モルシェンの店で作っている中濃ソースの瓶をリュックから出して、小皿に入れていく。パンは、先ほどの炊き出しで残ったものをそのままだし、かぼちゃのポタージュを器によそっていく。

「お疲れ様でした。できましたよー」

「ごはん~」

「豚のロースをパン粉つけてあげたものです。うちの店でカツサンドとして出してるものの具の方だけですね。横の小皿のソースを付けて食べてください」

「お肉!」

すぐさま食べだしたのはダフネだ。

「!」

無言で食べているが、尻尾がすべてを物語っている。

「うまい」

「キャベツと交互に食べるといいですよ」

「キャベツで口の中がさっぱりします」

「その後にまたとんかつの肉汁がじわっと来る」

「パンよりお米と一緒に食べたいんですけどねー」

「そうなの?パン屋の娘なのに?」

おかしそうにマリエッタが言う。

「ええ、お米のほうが他の味をしっかり受け止められるんです」

「ふーん」

「明日の朝、ご飯を炊いたほうがいいですか?リジェネの効果がありますし」

「ああ、そうしてくれるか?」

「わかりました」

「騎士たちの分も頼む」

「はい」

「ふぅ。満足」

ゆらりと尻尾を揺らしてダフネが幸せそうに呟く。

「ああ、ガッツリ食べた気がするなぁ」

ダリウスも横で頷いている。

「ダフネさんはそんなに食べてなぜ余分なお肉がつかないのかホント不思議ですね」

ファルが羨ましそうに言う。

「お茶淹れますね。ああ、ベルンさんとダリウスさんの分のお菓子ありますよ」

「ああ、朝にいってた芋のお菓子か?」

「ええ、これですどうぞ」

アマーリエはお茶を皆に配って、ベルンとダリウスには黄色と紫のスイートポテトの皿を置く。

「あっさりした甘さだから、ベルンさんでもいけるよ」

躊躇うベルンに、グレゴールが声をかける。

「あれ?ベルンさんは辛党ですか?」

「あんまり甘いモノは好んで食わんな。のりのかかった揚げ芋のほうが好みだ」

「そうですか。じゃあ今度は酒の當にいいもの考えときます」

「応、頼まぁ」

「ではでは、ベルンさんの分は、私が…」

いそいそと皿に手を伸ばすファルから、皿を守ってベルンは言う。

「食べないとは言ってないぞ、ファル。第一だなファルがそこまで食いつくものはちゃんと味見しとかないとな」

美味しいものに目がないファルの食べる物が外れたことがないのでメンバーは必ずファルが食べる物は食べるのだ。

「…」

がっくりするファルをニヤニヤ笑いながらみて、ベルンはスイートポテトを口にする。ダリウスは甘党なのか、すでに食べ終わって切なそうに皿を眺めている。

「ああ、これなら俺も大丈夫だ。うまいな」

「リエ、おかわりは?」

訴えるように言うダリウスに何処かのご領主を思い出し、レシピの登録しなければと思うアマーリエ。

「ああ、すいません一人二個ずつきっちりです。まだお芋はあるので時間のある時に作りますよ。他にもいろんな甘味になるので楽しみにしてください」

「ぜひ頼む」

「わかりました」

「さて、リエ。明日のことで話がある。マリエッタたちと一緒にこちらの部屋に来てくれ」

「わかりました」

使った食器を片付けてアマーリエはマリエッタたちとベルンたちの部屋に行った。

「その辺に腰掛けてくれ。明日なんだがな、リエ」

「はい」

「お前さんも一緒にいくことになった」

「はぁ、足手まといにならないなら、一緒に行きます」

「マリエッタの判断じゃ、大丈夫なようだが」

「戦闘能力は皆無に思いますが、とりあえず防御に徹しろと言われたらなんとかはなると思います」

「お前さんが戦わなきゃいけない状況ってのは詰んだってこった。それはまずないから安心しろ」

「でもリエさん、防御に徹するってどうするんです?」

「一応シールド張ります。こんな感じです。『アイギス』(絶対なる盾)

アマーリエの周りにドーム状の魔力が展開する。誘拐事件以降アマーリエなりに防御に関して頑張った結果だ。

「どれ」

ダリウスが拳を落とす。拳がめり込むが、ドーム状にまた元に戻る。

「…スライムみたいだな。物理攻撃は問題なさそうだが、マリエッタ?」

「魔術攻撃も上級以上じゃないと通りそうもないわね」

「問題ないか。問題はないんだが、なんというか器用なシールド作るなぁ」

ベルンがしみじみという。

「ほら小器用なことするでしょ」

「なかなか面白いと思うぞ。俺も盾の前面に張れたら突っ込んでくる奴の力をうまく逃がせそうな気がする。スライムみたいな膜のように魔力を練り上げればいいんだな」

アマーリエのシールドを触りながら、ダリウスが言う。

「え、ダリウスさんまでやっちゃうの…」

グレゴールが呆れたように言う。

「あのあの、長時間は無理ですよ、さすがに。あんまり魔力無いですから」

そう言って、アマーリエは魔法を解く。

「それは、これを使いなさい。魔石よ」

「うわぁ、でもこんな大きいのいいんですか?」

アマーリエは拳ほどの大きさの魔力のたっぷり感じられる、カボションに磨かれた鮮紅色の魔石をじっくり見る。大きく純度の高い魔石はかなりの値段がする。

「いざって時のためよ。そこからあなたなら、魔力取り出せるでしょ。なくしたらお仕置きね」

「ぐはっ、わかりました」

「明日護符もつけるからね」

「了解です」

「明日の鐘一つには村の北西側に集合予定だ。馬車で、今朝俺たちが行った牧場まで行くことになる。その先は徒歩になるから、動きやすい格好にするんだぞ」

「わかりました」

「よし、明日は早い。さっさと寝るぞ」

ベルンの言葉で、明日に備えることになったアマーリエとメンバーだった。


朝早く起きたアマーリエは、米を二升分炊き、耐熱スキルを使って、さっさと塩むすびを作っていく。

これは、食べるものというより支援アイテムに近いだろう。アマーリエはのりを巻こうと思ったのだが、食べなれない黒い物体をみて、いやいや食べられるのも納得がいかなかったので、本当にただの三角塩むすびになってしまった。

「ううう、納得いかないけどしょうがない」

油紙に包んでアイテムリュックに入れていく。

「おお、はやいな、リエ」

「おはようございます、ダリウスさん」

「なにか手伝うか?」

「パンをこれぐらいにスライスして火で炙ってください」

そう言ってアマーリエは指で隙間を開けてパンの厚みを指示する。

「よしきた」

ライ麦パンを手渡されたダリウスは、どんどんパンをスライスして、火で軽く炙って焦げ目をつけていく。アマーリエは昨日買った卵の残りをゆで卵にする。

そして、卵をゆでている間にレタスをちぎり、パセリを刻んで、チーズをスライスしていく。茹で上がった卵を剥いてボールに入れ、塩コショウにパセリ、マヨネーズを入れて潰していく。

ダリウスがどんどん焼きあげるライ麦パンにバターと粒マスタードを塗って、卵のペーストとレタスとチーズを挟んでサンドイッチにしていく。

「おお、ずいぶんたくさん出来たな」

「後は持ってきたコーンポタージュで大丈夫でしょう」

「ああ、いいと思うぞ」

そうこうするうちにメンバーが集った。

「ああ、リエ。昨日農家で鶏を買ったんだ。今日早く帰れたら夕食に食べたい」

「わかりました、ダフネさん」

「…なんだ?うちの連中はここまで食い意地はってたか?」

「食べられるなら美味しいものが食べたいぞ、ベルン」

「肉なら何でも良かったダフネがなぁ」

「ブクク、リエのが伝染ったかな」

「いいじゃないですか。美味しいは正義です!」

「はいはい。朝ご飯食べましょ。騎士様方を待たせちゃ悪いわ。リエ、食べ終わったら護符貼るからね」

「はーい」

「そうだな」

「サンドイッチは手軽に食べられていいですね。スープもとうもろこしの甘みが美味しいです」

「携帯食は、アイテムポーチがなかった頃の名残だからなぁ。まあ、あれも大事ちゃぁ大事だが、やはりどこでも旨いもんが食える方がいいなぁ」

「短期の依頼のときは美味しいものを持っていくようにしませんか?」

「それも考えておくか」

「ダンジョンに潜る時は、リエさんに携帯食作ってもらいましょうよ」

「リエの負担にならないならな」

「需要があるならやりますよ」

「あります!専らダンジョンの中では携帯食しか食べられませんから早く上に戻りたくなってしまうんです!」

「ファルったらもう」

「まぁ、それは否定できんな。実際、いい獲物もなく、食事もまずいと早く切り上げたくはなる」

「なるほど。考えてみますね」

「是非是非お願いします!」

「その話はそこまで。ほら、早く食べる!」

アマーリエ達は、せっせと朝食を食べる。マリエッタは防御の護符をアマーリエの背中に貼り付け、護符の陣を展開させる。残ったサンドイッチは紙に包んでそれぞれのアイテムポーチに入れ、炊事場を片付け馬車に乗って待ち合わせの場所に向かった。

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