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上位世界

そこは上に住む者が下に住む者を見届ける場。

神などいない。

全ては世界が繋がるのみ。

意識はある。

記憶もある。

体もある。

しかしここはどこだ?


俺こと最上新もがみはじめは異常な空間にいた。

地面が無いのにしっかりと二本足で立っているし、真っ白とはまた違ったいろんな色が含まれた太陽光線のような光の世界に俺はいる。

俺の他には誰もいなかった。

そう、さっきまでは。

今はいつの間にか男が立っていた。

もしこの男が暗殺者だったら俺は気付く間もなく殺されてしまっていただろう。

それくらい生物としてのレベルの差があることを男から滲み出る圧迫感から推察することができる。


「ほう、どうやら昨今多い身の程知らずのようでは無いようだな。やたら無双転生とうるさい小僧じゃないのは望ましい」


それが分かっているから呼んだ訳でもあるのだがという男の声は酷く澄んでいるが冷気を感じるほどの威圧も感じられる。

この次元の違う生物は神様なのだろうか。


「そうでもあるし、そうでも無いと言える。最上がいた世界で神という枠組みがしている仕事を私は担当しているからだ。しかし私たちの名称は只の管理者。それが世界の管理という仕事をしているだけの最上のいた世界の役人と何ら違いはない」


思考が読める時点でこの男がなんと言おうと神だろう。

この管理者が言うには世界には世界を管理する者がおり、さらにその管理者がいる空間を管理している者がいる。

さらにまたその管理者を管理している人間を管理する……というように無限のように管理する間柄が続いているようだ。

故に地球以外にも世界は大量に存在するし、ある意味それだけ世界が存在するのなら余裕のある異世界に転生することもまた容易であるとのこと。


「さて、最上よ。君をここに呼んだのはまさにその異世界に行ってもらうためだ。しかしもちろん行ってもらう異世界には行ってもらうだけの原因がある世界でもある」


その異世界はここ数千年もの間全く文化の進展がされていない世界らしい。

人々は小さな国から領地を広げようとせず、その小さな範囲内でのみ争いごとを繰り返し、内側を見るばかりで外を見ようとしない。

その原因の一つが……。


「そこに住む人間の戦闘力がほぼ地球人レベル、なのに科学も魔法も発展していない。しかもビルを超えるような怪物が外を闊歩している世界。むしろ今までこの戦闘力で生きてこられたのが不思議なくらいの世界だ」


そりゃあ文化も発展しないわな。

そんな恐ろしい敵が外にいてなおかつ戦う術も満足に開発できていないなら。

周辺の敵を倒すことも報復を恐れてろくにできないなのだとか。

チキンだと思うが滅亡と隣合わせならば無茶をすることもできないのか。

難儀な人間が住む世界である。


「最上にしてもらうのは、そこにいる人間を弟子にとり戦う術を教えること。そして未開の地を開拓して有用な資源が使える場所を知らせることだ」


いや、戦う術なんて俺持ってないんだけど。

ビルを超える怪物に一秒で踏みつぶされる自信があるんだけど。

しかも資源に関する知識なんて欠片も無いんだけど!


「む、一応最上はその世界では上位世界に住む人間になるのだから身体能力は高くなるはずだが……。いや、地球は科学が発展した世界だったか。しかも最上はろくにその科学の知識はないようだな」


すみません地球のみなさん。

俺が科学の世界の代表で。


「仕方がない。最上が現地人と同じ魔法を使えるようにするか。もちろん源である力と操作するための知識は授けよう。力の量と魔法の強さは……地球と同位レベルの世界で魔法が使える世界くらいでよいか」


え、そんなんでビルを超える怪物に勝てるの?

それでも瞬殺されそうなんだけど。


「問題ない。むしろ強すぎれば資源ごと地形を吹き飛ばしてしまうだろう。それでも下位世界人と上位世界人の力の差は歴然としている。私と最上に圧倒的な差があるくらいには」


ふむ……つまり神並の威圧感たっぷりの人間になってしまうということか。

確かに俺相手なら神は瞬殺できるだろう。

自分を殺せる力を持つ者がそばにいるということに変な悪寒を感じてしまう。


「その通りのことが最上の行く世界で最上も体験するということだ。その世界の知識は……なんとかなるようにしておこう」


なんとかって割とてきとうだな。

まあ、説明を聞く限りでは俺じゃなくてもできそうな感じだからきっと俺が失敗しても代わりの人間が派遣されるのだろう。


「そういうことだ。まあ、そういう場合はまた一からとなって手間となるわけだが不可能では無いことを頭の隅にでも置いておけ」


はい、神の先兵としてきりきり働けってことですね。

気分は天使だな。


「ふ、天使か。最上のような不幸面には似合わないな」


ほっといてくれ。

地球のときにろくに恋人がいた訳じゃないくらいの顔だ。

人生のほとんどが片思いだったんだから。


「そうだ。地球での人生も最上自身の人生であった。そして次の世界アーシェでも最上の、最上だけの人生である。失敗を恐れるな。成功のみにすがるな。それはきっと最上を次のステージへと導く」


いきなり何を言って……。

あれ、だんだんと意識が虚ろになってきた。

頭が……重い。


「下位世界人が上位世界に留まるにはそれ相応の力が必要なのだ。最上はよく耐えた方だ。期待している」


く……。

まだ聞きたいことや話したいことがあったのに。

そう、一番重要な、なんで俺で、なんで俺はここに呼ばれて、なんで俺が行かなければならないか。

しかしもはや神の声も聞こえないレベルまで俺の意識は落ちかけている。


無表情だった神の瞳が一瞬悲しみに染まったのが最後に見て取れた気がして俺の意識は無くなった。

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