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【1-6】とりあえず身近なところで、自由市場-2

すっかりご機嫌になった僕は、次は何がでてくるのかとワクワクした気分だった。

カチャカチャ、とズボンのポケットから軽い音が聞こえる。オルスに貰った銅貨の音だ。そうだ。財布が欲しいな。今は現金を稼げる手立てはないけど、いずれ必要になるものだ。

「 オルス。財布を見たいんだけど、どこかにいい店はないかな。」

オルスが僕と横並びで歩いている。パステ-トを食べて上機嫌でいるオルスに、聞いてみた。

「 そうだなぁ・・・・・のぶはどんな財布が欲しいんだ?」

「 どんな財布があるのかなぁ。それ次第なんだけど。例えば、皮製品。袋状なのか、長財布、または折り畳みになっているのか。」

と、僕。

「 う~ん。市井の人の財布は、袋だ。商人や冒険者など、ある程度の稼ぎがある者は、皮だ。

もちろん皮にも、沢山種類がある。一般によく使われるのは、馬か牛といったところだな。

魔物の皮も重宝されるが、こちらは物によるかな。そして財布の形は、長財布だ。」

とオルス。

「 長財布か。街中で暮らす分には、長財布でもいいと思うんだが、旅に出たりするときにはコンパクトな形の方が重宝すると思うんだよなぁ。」

そう僕が率直な意見を伝えると、オルスはちょっと目を丸くして、

「 もう旅に出ることを、考えているのかい?まぁ、いいか。そうだ。丁度あそこに小間物屋がある。ちょっと覗いてみようか。」

と応じながら、一軒の店を指さした。こじんまりとした外見の店だ。

あまり高そうな品物を売っているような店にみえないので、僕は直ぐに同意し二人で店に入った。


入って驚いた。こじんまりとしている。してはいるのだが、置いてある品物が凄かった。

皮の種類が豊富なうえに、形も様々なタイプが置いてある。財布だけでなく、皮製品は一通り置いてあった。店の入口付近には馬や牛の皮製品が取り揃えてあり、値段を見ると手頃そうなものから桁が違うものまで多種多様。この感じだと奥に行けば行くほど、レアな皮で作られた品々が鎮座しているような気配さえ感じられる。

加えて正面から見ると狭そうな店は、実は奥行きがあり、それなりに広い店のようだ。僕は、すっかり店の威厳に気圧されてしまった。

オルスを見ると彼には馴染みの店なのか、気軽に店員に話しかけている。

僕と違ってオルスは、一向に気圧されている感じがしない。まぁ、そうか。なんつったって、領主の跡取り息子なんだもんな。僕が途方に暮れつつも、店の入り口付近に並べられている馬の皮財部を眺めていた。

ん?こ、これは、憧れのマジックボックス!サイズによって収納量が違うというが、こういうのがあれば持ち物に融通がきく。こういうのがあれば、本当に便利なのにと元の世界で何度も思ったっけ。

うっひょ~っ。と小躍りをしたいくらいに嬉しかったが、店の雰囲気が小躍りさせてくれる感じがしない。ショルダ-バック型で、大中小のサイズ展開・・・・・・と。

で、値段は、と。小で10,000ペニヒ。

中で20,000ペニヒ、大で50,000ペニヒ・・・・・・って、日本円でいくら?

何でもないような素振りで、僕は頭をフル回転させてみる。さっきのパステ-トが2ペニヒ。日本だと大体・・・・500円ってところか。う~んと・・・・・・

ぶふぉっ。激しくむせそうだった。エルメスのパ-キンくらいの値段がしている。

恐ろしい。高い、高いと口を揃えて小説の登場人物は言ってたが、本当に半端なく高いなっ。

「 おや、それに目をつけたのかい?」

と、ニヤニヤした楽し気な声で、オルスが僕に話しかけた。

「 あ、あぁ、噂に聞いていたマジックボックスが売られているので、おいくらするのかなぁ、と。」

苦笑しつつ僕は応じる。

「 目の付け所はいいが、予算、オ-バ-だな。ちなみにこれは、ここで買ったマジックボックスだ。」

ズボンのベルトに通してぶら下がっている皮の小物入れを指さして、オルスは話を続ける。

「 今日みたいに町をぶらつくときには、便利なんだ。このサイズでも、意外と物は入る。

そうだなぁ・・・・・・このくらいのサイズの鞄に入るのと同量じゃないかな。」

オルスは説明しつつ、陳列されている中型のボストンバッグを指さす。

「 確かに10cm x 5cmくらいの箱にしては、入る方だなぁ・・・。」

ふむふむ。と僕が感心しながら説明に頷く。このサイズでボストンバック並みなら、サコッシュみたいな小だと、どのくらいになるのだろう。分かったような、わからんような。

とにかく、とてつもなく高いことは、分かった。今の僕には不相応な品だということも。

くぅぅ~、現実、これが現実だよ。

「 オルスさん、その小さい箱で、いくらしたんですか。」

「 これか。いくらだったかなぁ。確か、5,000ペニヒはしなかったんじゃないか、な?」

う~ん。ペニヒの金額だけ聞くと買えそうな金額に聞こえるのだが、ほら、5,000円みたいに。

しかし日本円換算すると、ばかみたいな値段になるな。ははっ。笑っちゃう。

「 そうですか。まぁ、憧れますけど。今の僕には高嶺の花です。ここじゃ、財布も買えそうにない。いずれ自分でお金を稼いで、買えるようにがんばりますよ。」

と遠い目をして、僕はオルスに言った。

「 よく言った。偉いぞ、のぶ。おねだりなしで、自力で買う気でいるとは。頑張れよ。」

ポン、と僕の肩を叩いたオルスは、とびきりの笑顔で僕に応えた。

いや、奢ってくれてもいいんですけどね。

それから道に面した店内の商品を僕は一通り眺め、あれやこれや欲しいものを見つけてしまうのだった。そして二人は、店を出て市場散策の続きをした。


ちょっと歩くと、皮製品を売っている出店があり、僕はその店をのぞいた。

袋型の財布が売られていた。とても柔らかくて、軽い。色は染めてあるようで、草原の草色をしていた。袋の口を締める紐は、落ち着いた赤色。紐にはチャ-ムがついていて、小さな旅行鞄のような形をした金属がぶら下っていた。

「 おじさん、この財布、いくら?」

「 見ない顔だな。ここは初めてかい?」

こくりと首を縦に振る僕。

「 じゃぁ、これも何かの縁だ。安くしとくよ。80ペニヒで、どうだい。」

「 買った!じゃ、80ペニヒ。」

100ペニヒ銅貨を受け取ったおじさんは、皮の財布を紙で手早く包むと、

「 じゃ、釣銭20ペニヒと財布だ。大事にしてやってくれよ。」

と言いながら、とびきりの笑顔で僕に渡した。

僕は釣銭と財布を受け取りながら、

「 あぁ、大事にするよ!」

とおじさんに負けないくらいの笑顔で返したのだった。

それにつけても、日本円に換算すると、とんでもない金額になるような気がするが、そこはあんまり考えたくないな、と思った僕だった。


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