【1-2】 能力鑑定と魔力量測定
あれから二週間が経った。朝7時に起きて身支度を整え、30分後には朝食を摂る。
12時より昼食。18時に夕食。
食事は西洋風な味付けで、山間部の立地のせいかブイヤベースのような魚介類たっぷりな料理はでてこない。しかし新鮮な肉や野菜、そして酪農製品が豊富で、しっかりした味付けの煮込み料理などが多い。肉の種類も豊富で、豚や牛に鶏といった馴染みのあるものからジビエまで。
ただ、ここの世界のジビエは、元の世界と違って兎や鹿というようなものだけでなく、見た目では想像できない美味しい肉もあったりする。
主食はパン。そして麦の粥である。早くも米が食べたいなぁと内心思わなくもない。
食事の合間には、部屋で好きにできた。
時には広大な庭を散策したし、図書館があるというので行って面白そうな本を借りて読んだり。
意外と時間を潰すことができた。
建物は、古の西洋のように石造りで頑丈。
天上が意外と低いのは、ここが北部で冬が寒いからなのだとか。
元から天井が低かったわけではない。
以前、寒波到来の際に、凍死者が続出してから森の木々を大量に伐採するものが増え、禿山があちこちにできた。
すると今度は夏に大雨が降って土石流などが発生。土石流などに巻き込まれた遭難者が続出し、僅かな燃料で部屋が温まるように、部屋の面積を小さくしたというわけだ。少なくとも高さにおいて。いや、部屋面積も以前に比べると大分小さくなったというが、やはり面子を重んじる人たちが一定数いて、場所によってはあまり変わってないところもあるとか。
特に、首都ではその傾向にあるという。首都は社交界の集まりも多い、という理由もある。
なんやかんやと少しづつ馴染み始めた僕に、オルスが告げた。
「 そろそろ能力と魔力量鑑定をしてみましょうか。」
ぐっ、一瞬、僕は言葉に詰まった。
とうとう来たか、という思い。
元の世界で見ていたアニメや小説では、才能がないと言いつつ、とんでもない才能を持つ主役が活躍する。とにかく規格外の優れモノが多い。だが、実際のところ、僕はどうだろう。
本当に何か特殊な能力などがあり、将来が安泰なんてこと、あるだろうか。
不安だ、もしも・・・を考えると、とても落ち着かない。
特殊能力がある主人公は、転生前に神様に会って特殊能力を授かったりしていたが、僕は神様に会った覚えがない。あぁ~、怖い。怖すぎる。
誰かに、大丈夫、安心していいよ、と言ってほしい。
情緒不安定気味な僕を見たオルスは、あの柔らかい笑顔で
「 大丈夫です。仮に才能がなくとも、なんとかなるものですよ。」
と更に言い加える。
あぁ~、だからその笑顔が怖いんだが、と僕は曖昧な笑顔を顔に張り付けたまま言葉を濁した。
「 場所を移して鑑定します。歩いて行きますので、一緒に行きましょう。」
この屋敷は大きい。とはいえ、パリ郊外のベルサイユ宮殿のように、大きくはない。
とはいえ、この地方の有力者であることは間違いない、というレベル。
その屋敷の端に、僕の部屋はある。
屋敷の庭を散策したりするけれど、屋敷内を全て見たわけではない。
僕の部屋は二階にあるが、四階建ての建物の三階から上には行ったことがない。
なんとなく、行きづらい雰囲気が漂っていて行かなかったわけだが、今回は三階から上にいくようだ。オルスの後について三階の来ると、赤髪の青年が待っていた。赤髪の青年は、オルスと同じような年齢に見えた。
「 やぁ、オルス。その子が異世界の子かい?」
赤髪の青年が片手を上げて、にっこりと微笑んでオルスに尋ねる。
「 あぁ、そうだ、エドガ-。のぶ、彼はエドガ-。研究者だよ。」
オルスが僕に説明をする。オルスは僕のことを、のぶと呼ぶことに決めていた。
「 のぶ、彼は優秀な研究者だから、今日の鑑定も安心して受けられる。」
「 いや、オルスさん、余計に恐怖しますよ、能力ゼロが確定したら怖いじゃないですか」
ははははっと、珍しく大きな口を開けて笑うと、オルスは更に僕に言う。
「 だから言っているじゃないですか。才能なくても、悪いようにはしないと。」
「 信用がないな、オルス。」
と赤髪の優秀な研究者、エドガ-がニヤニヤした顔でオルスをからかう。
「 まぁ、いきなり信用しろと言っても、無理だろう。
知らない世界に、突然呼びこまれたわけだから。」
二人は楽しそうに会話をしながら、三階の廊下を進んでドアの前に立った。
そしてドアをゆっくり開けると、幾つもの人物の彫刻が並んでいる部屋に入った。
奥に机が置いてあり、その上に何か物が置いてある。
あれで鑑定するのかなぁ・・・・と早速先読みを初めてしまう、僕であった。
丸い石?のようなものがあり、周りに金属の細長いものがついている。
メモリみたいなものが刻まれ、針が0を示している。
「 ここに手をかざして、鑑定を行うんだ。痛くないから、その点は安心して構わない。」
とエドガ-が笑顔で僕に説明すると、
「 これで、魔力量と才能を鑑定するんだ。」とオルスが更に詳しく説明をする。
あぁ、怖い。これで、僕の運命が、大方決まるんじゃないか。
緊張で心臓が口からでてきそうだ。だが、やるしかない。
覚悟を決めて、丸い石?水晶玉?に手をかざす。
水晶玉が、ぱぁ~っと光を帯びて耀きだした。と同時に、針が動きメモリを刻む。
パリン!
水晶玉が割れ、破片が床に散らばった。
おぉ~・・・・と感嘆する青年たち。なんとなく、魔力は高そうな気がする。機械が壊れる程度には。
「 凄いぞ。鑑定機の上限を超えていることになる。最上位の魔術師でも、250くらいなのに。」
「 300超えて、しかも計測不可とは、どれほどの魔力量なのか。」
二人は、向かい合って真剣な表情で話し合っている。
とりあえず、魔力量については、“才能あり”のようだ。
「 ところで才能については、どうなんでしょう?」
僕は二人に恐る恐る尋ねると、
「 どれどれ・・・」とエドガ-が鑑定機を見ると、あっと驚いた声をだした。
「 どうしたんだ、魔力量みたいに、とんでもない才能があったのか?」
とオルスが尋ねると、
「 いや・・・その・・・なんというか・・・才能がない・・・という才能がでた!」
と、やけっぱちな感じでエドガ-が叫んだのだった。




