【3-6】インゼクトダンジョン―3
はぁはぁはぁはぁ・・・
なんとか地上に上がる階段の入口まで到達した。
おかしい。おかしいぞ。
ダンジョン攻略って、もっとワクワクするもんだと思っていたのに、ただただ気色悪いことばかりだ。
ふぅ。
一つ溜息が漏れる。
生理的に合わないような気がしたが、港町シュレ-スの近場にある初級者向けダンジョンがこれなのだから仕方がないのかもしれない。
戦い慣れしていない、ということは否めない。だが想像していたゴブリン、コボルトやスライムといった弱いモンスタ-と戦うのかと思ったら、全く違った。
地上に上がる階段をひたすら登りながら、僕は宿に戻って作戦を練り直すことにした。
が、兎に角今は休みたい。精神的にとても疲れた。
ダンジョン出口の扉の前へ、やっと辿り着いた。
厚い壁を、力を入れて押す。太陽が沈みかけていた。もう、夕暮れ時なのだ。
思った以上に時間がかかっていることに、改めて思いやられる気がした。
朝には活気のあったダンジョン入り口付近は、殆ど冒険者の姿はなかった。シュレ-スの町へと帰る馬車の最終時間が、あと30分で出発するという時間だからだろうか。
馬車の停留所の方へと向かう冒険者の姿が見受けられた。
が、逆にダンジョンへ入ろうとする冒険者の姿もあった。
このダンジョンは、 面白いことに昼間と夜とでは現れるモンスタ-が違う。夜はモンスタ-のランクも上がる。同じようなモンスタ-でも夜の方が耐性が強かったり、攻撃が特殊だったりする。だから夜は中級それも中の上レベル向けと言われている。
中級レベルとなると、冒険者の顔つきも精悍でタフそうに見えてくる。
皆パ-ティ-を組んでいるようで、四五人で集まっている。
僕をちらっと見る冒険者もいるが、見るからにヘタレそうな僕には関心が向かないようで、一向に気にする様子がない。僕自身、僕が指名手配されているのではないか、ということを忘れてしまいそうになるくらい、シュレ-スの町の人々は僕に対して無頓着だった。
この無頓着さが、いつまで続くのだろうかと不安になることもある。僕は大したことがないから見逃されているだけなのかもしれない。先が見えないという不安がある分、早く強くなっておきたいという気持ちは強いはずだった。なのに・・・
虫にへこたれてしまうとは、思いもよらなかった。あ~・・・凹むわ~・・・とぼやきそうになる。
ぐぅぅぅ~。腹の虫が、なっている。シュト-レンに帰って、アルノ-さんの美味しい料理にありつこう。そしてふっかふかの布団で寝る。僕は人目を避けて低空飛行でシュト-レンの町へ帰った。
翌日、僕は冒険者ギルドへ行き、資料室で インゼクトダンジョンについて詳しく調べることにした。初級ダンジョンだから侮っていたことは否めない。虫メインのモンスタ-が沢山でると聞いていても、普通サイズというか野原や森で見るようなサイズだろうと高を括っていたから、特大サイズで仰天した挙句に慌てふためいて失敗した。もう少し心の余裕が欲しい。
と言うわけで、インゼクトダンジョンの詳しい情報が載っている資料を読んでみた。
モンスタ-は8割虫だが、虫だけというわけではないらしい。2割は僕が想像していたようなコボルトの類がでてくる。
虫メインのモンスタ-は綺麗だったり可愛い感じではなく、あくまでもグロイ気色悪いタイプのモンスタ-ばかりなのには残念な気持ちだった。
だが意外だったのが虫から採れるアイテムが、使いようによっては良いアイテムにもなるという点だった。モンスタ-全般に共通して言えるのは、火力に弱いモンスタ-が大半だということで、攻撃は主に火力で勝負できる点が僕には良かった。
とは言え、虫だけに飛んだり跳ねたりと予測しづらい動きをする虫モンスタ-もいるわけで、コントロ-ルの精度をもっと上げなければならない。全30階層まであるダンジョンだが、下の階層になるほどモンスタ-も手強くなるわけで、火力ばかりに頼っても要られないことも分かった。
虫の中には毒を持つものもいるので、毒対策もしておかなくてはならない。
資料を読み込むほど、自分の認識の甘さを痛感するばかりだ。
「 ちょっと人より魔力量が多く、使える属性も多いからって舐めてたな。」
と穴があったら入りたいくらいに調子に乗っていた自分が恥ずかしい。
虫モンスタ-への対策が分かれば、実践に移せるくらいに練習あるのみだ。僕は港町外れの森へ行き、火攻撃魔法のコントロ-ル特訓をメインに練習をした。
二週間後、僕は再びインゼクトダンジョンの入り口前に立った。
二週間の練習の成果を、必ず出して見せる。フンガ~と鼻息荒く、僕は意気込んでダンジョンへと入っていった。
ダンジョンマップには、僕がみっちりと書き込んだ情報が載っている。
前回のように、落とし穴に嵌るような真似はしたくない。2階層までは、順調にこなしていった。
いよいよ未知の階層への挑戦だ。
今回は情報を綿密に調べて対策をしているが、初めてのモンスタ-の相手をするとなると話は違ってくる。ちょっと緊張する。
パンパン!僕は自分の顔を二度力を入れて叩いた。気合を入れて出発だ。
僕は、三階層の入口の扉を思い切って開けた。




