【3-1】 港町シュト-レスへ
何度がエドガ-さんの発明品、通信機を使ってアドルフ先生へ連絡を試みた。しかしアドルフ先生の声を聞くことは、一度もなかった。
あれから10日。アドルフ先生からの連絡を待っていたが、一度も来ることがなかった。
「 う~ん。これから、どうすっかなぁ~。」
と呟いてみる。僕は、今まで10日間も人に会わずに生活したことがない。一人暮らしをすると、独り言がやたら増えると聞いたことがあるが、本当に増えた。
マジックバックの中を、ガサゴソと物色してみる。
食料約10日分。水も同じくらいか。
簡単に煮炊きできる調理道具一式。
着替えは五着分。これをロ-テ-ションで着ている。
魔法書が一冊。これは、本当に持ってきて良かった。
この魔法書に体を綺麗にする魔法や衣類を綺麗にする魔法が載っていて、これで体や衣類を清潔にできた。まぁ、風呂に入りたいのは、やまやまなのだが、近場に川や湖がないので致しかないか。温泉が湧いているところがあると、いいんだが。
そして地図が3枚。大陸の地図と、エアフルト領の地図、そして大陸を4分割にした地図だ。
金貨、銀貨、銅貨などが合計約500枚。一年くらいは軽く生活できそうな額が入っていた。しかし、こんな森の中では、お金は無用の長物。
「 町に行きてぇぇぇぇ~っ!」
僕は、絶叫した。登山が趣味なので、野宿やキャンプには慣れている。しかし、それは期間限定だからできるのであって、いつまでも野宿はしてられない。
「 ベットでふかふかの布団に入りたいなぁ・・・・・・」
おっと、愚痴が止まらなくなってきた。
空を見上げると、雲が暢気そうにぷかぷか浮いている。
飛行魔術で移動したいと思っていたが、森を外れて見つかるのが怖くて飛び出せずにいた。敵が誰なのか、分からない。追いかけられて攻撃でもされたら、僕は殺されるんじゃなかろうか、とさえ思えてくる。だが追手がいて探しているなら、こんな開けた場所にテントを張っていれば、上空から直ぐに見つかってしまう。それが10日間、見つからずにいるのだ。いつまでもここでじっとしているわけにもいかない。10日後には、食料や水が尽きてしまう。
「 よしっ。思い切って移動しよう。」
エアフルト領の地図を広げ、地図に少しだけ魔力を込めてみた。
暫くすると地図がぽっと青白く光り、小さな丸い光が点滅した。
どうやらオルデンの町を更に西へ行った森林地帯の中で、光が点滅している。
僕は地図を持って、動いてみた。すると小さな丸い光もまた、同じように動いた。
「 なんて便利な!ナビだよ、この地図!」
いいもん、貰ったなぁ~。と僕は感激した。なんて気の利くんだろう。アルバン先生、本当に有難う。
これでピンチアウトインができたら、もっと便利なんだけどなぁ。
というわけで、地図の上をピンチアウトとインをしてみた。
「 うっわ~。できる、できるよ、この地図。凄いな!」
飛び跳ねたくなる気分を抑えて、早速撤収することに決めた。張ってあったテントを片づけ、マジックバックの中に入れる。調理道具もだ。
「 よっこいせっと。」
僕はマジックバックを斜め掛けで肩にかけると、杖にまたいで飛行魔法を使って移動を始めた。
本当なら上空を飛びたいところだが、誰に見つかるかもわからない。なので、障害物が多くて嫌だったが、森の中を飛ぶことにした。向かう場所は、海だ。
鉱石の国は、四方を海に囲まれていて、海の先には5つの国がある。どの国に行こうか迷ったが、僕は魔力量が半端ない。魔術の勉強をしている最中でもあるし、場所的に魔術の国が一番近かったので、魔術の国へ行くことにした。
魔術の国の学校に行けるかどうかは全くわからないけど、取り合えず何かしなくては不安でもあった。
杖に乗って、ひたすら海を目指した。50ccのバイクに乗っているよりも、速度は遅かった。
木の枝が体のあちこちにぶつかって痛いのが、嫌だからスピ-ドが出せずにいた。途中から、そんな状況が嫌になり、思い切って森林の上空を飛ぶことにした。上空に出てからは、スピ-ドが出せたので、速かった。
もう直ぐ森林を抜けるというところで、海岸に港町らしい建物が見えた。
ここで一旦、地上に降りることにした。地図を見たかったからだ。便利なもので、拡大すると都市名や町の名前が地図に浮かんだ。
「 えぇ~っと、この先の町は・・・・シュレ-スか。」
シュレ-スは交易の町の一つである。資源が豊富な鉱石の国は、シュレ-スのような交易港が幾つかある。物資だけでなく、人もまた行き来している。だがしかし。僕は、身分を証明するものがない。それで船の切符を買って、乗ることができるだろうか。ちょっと心配だ。お金で解決できるのが、一番いいのだが。
森林を貫ける手前で杖をマジックバックに仕舞い、僕は歩いて町に向かった。
町へ向かう道があり、よく整備されていた。馬車で色々な品を運んでいるようだった。町に近づくほど活気があり、人の往来が激しかった。
門には城番がいる。僕は思わず口を歪めた。元の世界の異世界ものでは、門番らに通行書の代わりになる冒険者ギルドや商業ギルドの登録証を求められることが多いからだ。
僕は、暫く門を通り過ぎる人達や馬車の様子を見ていた。馬車は荷物の確認をしているのか、止められることが多かった。だが、人に関して言えば、よっぽど怪しげな感じでなければ、通しているようだった。列を作って順番を待っている様子がない。
僕は、ほっとすると大勢の人に紛れて門を通ることにした。
怪しまれないように、何気ない素振りで歩こうとする。なんだか体がギクシャクしているような、気がしなくもない。大丈夫。誰も僕なんか見ていない。
人々に紛れて門をくぐりぬけて、シュレ-スの町へと僕は入っていった。




