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【2-6】 それは、ある日突然に

毎日の授業に慣れたとはいえ、夕食後に座学の宿題をこなしてから魔術の復習をしているので、夜は爆睡しているので滅多に起きることはない僕、のぶです。

ところが今晩はやけに部屋の外が騒がしい。眠たい為に直ぐに起きなかったが落ち着かないので、やっとの思いでベットから出て部屋の外に出てみた。

どうやら上の階で揉めている様だ。怒鳴るような声が、聞こえる。

周囲の様子を伺いながら、どうしようか迷っていると、突然、背後から何者かが僕の口を抑えてきた。

思わず驚いて抵抗しようとすると、

「 のぶ、大きな声を出さないで。」

とアルバン先生の声が聞こえた。声は続けて、

「 驚かせて済まない。今、状況を説明するから、騒がないでくれ。」

僕は、ドキドキする鼓動を鎮めて、ゆっくり頷いた。

するとアルバン先生は、僕においてた手をゆっくりと外した。僕はアルバン先生の方に、ゆっくりと振り向いた。アルバン先生は、いつになく緊張した面持ちで、

「 のぶ。ここから脱出する。君を安全な場所まで連れていく。飛行魔術は、できたな。」

僕は、とても驚き、

「 はい。」

と返事をするのが、やっとだった。

「 一旦、部屋に戻ろう。服を直ぐに着替えて、荷物を。」

僕たちは、そっと部屋に戻った。僕が急いで服を着替えている間、アルバン先生はかばんを取り出すと着替えの衣類などを詰め込み始めた。僕の着替えが終わるころには、アルバン先生も荷物が入れ終わっていた。そして僕に尋ねた。

「 一通り衣類など旅に必要な物は、鞄の中に入れておいた。他に、のぶが持っていきたいものはあるかい?」

僕は、部屋をさっと一通り見回した。机の上のノ-ト、魔法書数冊、筆記用具が目に入った。

「 魔法書数冊、筆記用具は入りますか?」

「 大丈夫だ。これはマジックバックだから。このマジックバックは、君に貸しておくよ。」

そう言い終えると、アルバン先生は、大股で机に歩み寄ると、テキパキとマジックバックに魔法書などを詰め込んだ。そして部屋の庭側のガラス張りのドアを開けると、

「 じゃ、いこうか。」

と、僕を促した。僕はうなづくと、アルバン先生の後に続いた。

アルバン先生が杖にまたがり呪文を唱える。アルバン先生と杖は、地面から10cmほど浮いた。

僕も先生に倣って、同じように地面から浮いた。

バタバタバタ

何者かが、廊下を走ってくる音がする。

「 のぶ、行くぞ。」

アルバン先生が言う。

「 はいっ!」

僕は、気合を込めて返事する。

二人は一気に上昇を始めた。地面が、ぐんぐん離れていく。

屋敷の屋根くらいの高さにきたかと思うと、男らしき人物が5、6人ほど庭に出てきた。

「 上だ!」

と一人の男の声がすると、男たちは一斉に上を見上げたままのぶ達に向かって大声で叫びだした。しかしアルバン先生と僕は、ぐんぐん上昇しているので、あっという間に男は小さくなっていき、彼らの声が聞こえなくなった。

やがてアルバン先生は上昇を止めると、前へ進んだ。僕は無言で、先生の後に続いた。


山脈に向かって進んでいたが、アルバン先生は進路を変えて左に曲がった。

山脈は北の方向にある。左に曲がるということは、西へ向かっているようだ。西には魔術の国があったんじゃなかったか。随分飛んでいるが、まさか魔術の国まで行くのだろうか。

いや、先生は僕を安全な場所まで連れて行き、引き返すと言っていた。瞬間移動の魔法が使えるなら、それも可能だろうが、果たしてそんな魔術がポイポイ使えるものだろうか。

アルバン先生が瞬間移動の魔法を使えると、聞いたことがない。僕が知らないだけかもしれないが。

最初はエアフルト領の下、つまり南にあるハイブルドン伯爵家領エドガ-の実家へ行くのかと思っていた。だが北に向かっているので、違うと分かった。

一体、僕たちは、どこに向かっているのだろう。


暫くしてアルバン先生は、スピ-ドを徐々に落としていった。

そして僕に言った。

「 降りるぞ。」

僕は、無言で頷くと、先生の後に続いて下へと向かった。

下は、どうやら森らしい。直に木の先っぽにぶつかるだろうという時、少しだけ開けた空き地が見えた。あそこへ着地するようだ。案の定、アルバン先生は、そこへ降り立った。僕も、先生に倣って地面に両足を着けた。僕が着地すると、アルバン先生は言った。

「 のぶ。ここは鉱石の国北西部の端にある森だ。これを渡しておこう。これは通信ができて、君の場所も分かる優れモノだ。」

言い終わると、丸い金属でできた懐中時計のような形をしたものを、僕に渡した。

「 アルバン先生、これは。」

そうだ。エドガ-さんの発明品、メ-ル機能の通信機だ。

「 使い方は、分かるな。これで僕から連絡を入れるようにする。マジックバックの中には、野営できる道具が入っている。野営経験は?」

「 少しあります。」

「 よし。また連絡する。この機械を肌身離さず持っているんだ。いいね。」

アルバン先生はそういうと、再び杖に乗り、颯爽と去っていった。

僕はポツンと空き地に立ったまま、先生の後姿を眺めていた。いつまでも。いつまでも。

先生の姿が、消えて見えなくなっても。


僕は、はっと我に返ると、マジックバックの中に手を突っ込んでみた。

テント、寝袋、食料品、水。

取り合えず生活するには困らないものが、入っていた。

こういう時、どうでもいい事が、無性にしたくなる。

「 あ~、風呂に入りたいなぁ。」

ぐぅ~。あぁ、腹が減っていたんだ。僕は火をおこす準備を始めた。


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