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【2-4】 その男、凶暴につき

「 のぶ!何度言ったら分かるんです。魔法を扱う時は、精密に行うように言っているでしょう。」

今日も僕は、アルバン先生にしごかれている。先生はこの世界の魔術学最高学府ソルセラリ-大学を、首席で卒業したと聞いた。僕の元いた世界でいうところの、東大法学部を首席で卒業したようなもんだろうか。

「 のぶは、少々雑に組むところがありますね。確かに優秀な魔法師でも、大雑把な印象を受ける者はいます。が、大雑把なようで緻密な計算しているのです。それと経験。これはのぶには足りないものです。それは仕方がない。ここに来て、まだ日が浅いのですから。その分、人より何倍も訓練をして、経験値を上げて慣れていかないと。特にのぶは魔力量が恐ろしく多い。それをコントロ-ルしなくてはならないのですから、尚更精密さが求められます。加えて、速度です。」

「 ・・・・・・・・はい。」

僕は、返す言葉がない。

なんとか人並みに使いこなせるようになったと思って安心していたのも束の間。アルバン先生は、更に上のレベルを求めてきた。針穴に糸を通すような繊細さを。


アルバン先生は僕から離れると、僕に向かって攻撃魔法を打ち出した。

炎が意気揚々と唸る。と、僕に向かって真っ直ぐ飛び出してきた。

ピシッ。一発目防御成功。ピシッ。二発目。

最初は簡単なように感じた。これなら、いけるんじゃないかと。

が、先生が放つ炎の間隔が、どんどん速くなる。そして真っ直ぐきた。

かと思うと、僕の手前でカーブを描く。横から斜め上から。

色んな角度から炎の渦が、僕に迫ってくる。

僕はその炎の動きに合わせて、防御魔法を打ち出さなくてはならなくなった。

間に合わなくなってきた。

アルバン先生の放つ炎の速さに追いつけなくなり、僕は自分を防御魔法で覆った。だがアルバン先生は、更に火力を上げて僕を狙い撃ち、とうとう僕の防御魔法は跡形もなく崩壊した。

と同時に、火は、ふわっと消えたのだった。

「 どうですか。分かったでしょう。のぶは人並み外れた魔力がある。

だから、魔力量の多さでいえば、のぶは圧倒的に有利なはずなのです。

でも、私に負けた。

それはのぶが自分の魔力量を上手く使いきれていないから。

とはいえ、いつも自分よりも魔力量が少ない者と戦うとは限りません。

戦闘が長引いて自分の魔力量が底をついたら?ひとたまりもないですからねぇ。そうならない為にも、結果、さっきの戦い方は、何が正解だと思いますか? 」

「 アルバン先生の攻撃に合わせて、ピンポイントで防ぎ続けること。また隙をついて、先生に連続で反撃をする、です。」

「 正解です。さぁ、続けましょうか。」

僕は何度もアルバン先生と戦闘訓練を行い、夕食前にはふらふらになるのが、最近の常だった。


夕食後、僕とアルバン先生がオルスの召集にあった。

何事かと思えば、アルバン先生とオルスは酒を飲むから僕にもお誘いがあったと言うわけだ。

「 のぶは、何を飲みますか?」

とオルスが僕に聞いてきたが、

「 僕はお酒は飲んだことがない、です。」

と応えるのが精一杯だった。赤玉ポ-トワインなら、飲んだことはある。だが、あれはジュ-スみたいなものらしい。オルスが握っている瓶を見ると、高そうなウイスキ-が入ってそうだ。

「 あ、私はワインがいいです。赤で。シャンパンでもいいですよ、ロゼで。甘口だと大変いい。」

とアルバン先生は 待ち遠しく言った。

「 ヴェスペリア産ならあるよ。大好物だろう、アルバン。」

「 それはいい。楽しみです。早く飲ませなさい。」

アルバン先生は、オルスの言葉にとても喜んだ。

「 僕はコ-ヒ-でお願いします。」

「 なんだ、のぶ。飲まないのか。それは残念だ。まぁ、そのうち酒を覚えるか。」

オルスはそう言いながら、慣れた手つきでワインボトルの栓を抜くとワイングラスに赤ワインを注ぐ。そして、アルバン先生へグラスを渡した。その次に僕には熱いコ-ヒ-を、カップに注いで渡してくれた。オルスは、最後に自分用に赤ワインを注いだ。


「 今日、君達の魔法訓練を見ていたら、急に懐かしくなってね。」

とオルス。続けて彼は言った。

「 ほら。アルバンとエドガ-と僕が組んでの対抗戦の時。」

その言葉を聞くと、アルバン先生はちょっと嫌な顔をして言った。

「 あの件は、卑怯な真似をしたあいつが悪い。目には、目をです。」

「 のぶ。この世界は、小さいころから魔術を習うんだが、高等学校の魔法科の授業は、最後はグル-プで模擬戦を行うんだ。で、僕ら三人は決勝戦で、汚い手を使って勝ち上がってきたグル-プと戦ったわけなんだよ。で、その時、アルバンったら怒りに任せて、炎をぶっぱなして・・・」

くっ、くっ、くっ、とオルスは笑いが堪えきれない、というような感じで話す。

「 のぶ、アルバンは炎をぶっぱなして、どうしたと思う?」

「 ・・・・・・・・・う~ん。丸焦げにした、とか?」

「 まぁ、それに近いね。あっちこっちに火球だのなんだのぶっぱなすから、試験会場が丸焦げさ。慌てた先生が止めに入ろうとしたが、こいつ、くっ、くっ、くっ。試験会場に張られていた結界の中に更に結界を張って、先生が入られないようにしてたんだ。先生が、結界を壊した時には、相手チ-ムは既にボロボロで戦意喪失。試合は終了してました、だよ。これには先生も唖然としてたな。」

こっ、わっ!アルバン先生、こわっ!

「 あれくらいでは、まだ生ぬるいくらいです。本当は、息も絶え絶え死ぬ一歩手前まで追い詰めてもいいくらいでした。しかしこちらも前途ある身です。あんなバカどもと一緒に将来を棒に振るなんて真似、できやしないですよ。えぇ、絶対にお断りです。」

「 ははは。いや~、あの時の事を思い出すと、愉快だよ。」

オルスは、本当に楽しそうだ。僕は、恐怖で震えていた。

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