表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イミグラントソング  作者: 空一
イサキ1
21/23

イサキ1 エピソード8

挿絵(By みてみん)


署に着くと、早速私は署長に呼び出された。扉はいつも開いている。中に入ると扉を閉めるよう言われた。

「よ」

振り返ると新井さんも一緒だった。

「率直に言うとだな。お前をスカウトにきた」

「公安にですか」

「ちょいちょいちょい、新井くん私が話すからさ」

「あ、署長すみません。せっかちなもんで」

「全く」

意味が分からない。

「まあイサキくん、座って座って」

「はい。失礼します」

機嫌が良い。

「あの、私が追っている捜査のことですが」

「聞いているよ。イサキくん。君は才能があるね」

「え」

「いやあ、上から何というか圧力、みたいな感じでね。人事がうるさいんだよね。でもね、大丈夫。この新井くんがね、見事な腕なんだよ、交通整理がさ」

「どういう意味ですか」

「お前が応酬したノートだがな、解析結果が出たぞ」

「え。無限のパスワードじゃ」

「そんなもんハードディスクごと引っ張ればいいんだよ」

「そう、なんだ。え、で、どうだったんですか」

「イサキくん、それはもう他に任せよう。ね。今日から捜査本部が立つからさ」

「わかっています。で、どうだったの」

「飛びつくねーイサキちゃんは」

「ちゃんって」

「お前の読み通り、立花博の研究成果が入っていたんだよ。あれはもう完全に立花のノートだよ」

「でも大学のパソコンだって堀が言っていたわ」

「それは嘘だ」

「わかるんですか」

「当たり前だろ。いいかパソコンってのはシリアル番号ってのがあるんだよ。それ調べりゃ、どこで誰が購入したかなんてものは簡単にわかる」

「じゃあ犯人は」

新井さんは人差し指を私に向けて話を続ける。

「あと3Dプリンターも出どころが大学だってことがわかった。でだ。大学の3Dプリンターを調べたらだ。その中の一つが堀の私物だったのさ」

「じゃあ犯人は、堀教授」

「違う」

「え」

「あいつは単なるパソコン泥棒だ」

「え。え」

「おそらく立花が死んでいるのを発見したが、堀は通報せず、ノートパソコンを持って立ち去ったんだろう」

「待ってください。あいつは車で突進して奈良を殺そうとしたんですよ」

「そうかもしれんが違う」

「違わないわ。やっぱり誰かが手を回しているのね」

「まあまあ落ち着いて、イサキくん」

「あいつは先輩を、鴨島先輩の仇です」

「話を聞けイサキ!」


 Pan


両手を思いっきり叩く音が響いた。

「教授の狙いは立花の研究だ。立花は介護ベッドや施設内の自動ドアやらのAI導入の研究をしていたんだ。おそらく教授は自分より優秀でコントロールできない立花を追放した。だが教授ができなかったことを立花はやり遂げてしまった。教授は焦っていたんだろう。立花と教授が口論していた目撃情報も取れた。お前の捜査のおかげだ。お前の初動捜査は間違っていなかったんだよ」

教授は犯人じゃない。じゃあ誰が立花を。

「イサキくん。落ち着いて」

「元木事件はまだ解決してないわ」

「わかっている。そのための捜査本部だ」

「元木事件の捜査本部ですか」

「ああ、お前が俺たちを動かしたんだろ」

「我々は鴨島くんの仇は取る」

「お願いです。この事件が終わるまで、私の異動は待ってください。私も捜査に協力させてください」

「だめだ」

「どうしてですか。教授のせいですか」

「教授だと。かはは」

「教授が上に手を回しているんじゃないんですか」

「そんな奴に圧力かけられるほど俺たちはヤワじゃないぞ」

「じゃあ、どうしてですか」

「お前は公安に行け。イサキ」

「それは先ほど聞きました」

「イサキくん。君は思った以上に優秀だった。公安なら君はもっと輝く。日本のために公安に行ってくれないかな」

「優秀? そう言えば喜ぶとでも思っているんですか」

「元木に撃たれた瞬間の違和感に気づいた着眼力、奈良を助けた瞬発力。瞬時の機転。まだまだ粗削りだがお前には備わったものがある。十分優秀だ」

「元木事件は私の事件です」

「思い上がるな!」

「君の事件なんてないんだよイサキくん。元木事件は後任に任せよう。ね」

「奈良は。奈良はどうするんですか」

署長と新井は顔を見合わせて一瞬沈黙した。私は署長室を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ