第3話:月の住人
地球に帰還した朔也は、月の裏側で体験した出来事を教授に報告した。しかし、教授は半信半疑だった。
「月の裏側に、地下都市のような場所がある?そして、謎の声…?朔也、君は疲れているんだ」
「でも、教授。僕は確かに見たんです。聞いたんです」
朔也は必死に訴えたが、教授は首を横に振るばかりだった。
「月の裏側に生命が存在するなんて、ありえない。科学的な根拠がない」
「根拠なら、僕が見つけた光です。そして、あの声です」
「光も声も、君の錯覚かもしれない。月の裏側は、未知なる空間だ。そこで、君の脳が何かを錯覚したとしても不思議ではない」
教授の言葉に、朔也は何も言い返せなかった。しかし、朔也は諦めなかった。彼は独自に調査を進め、月の裏側に関する情報を集め始めた。
そして、ついに彼はある手がかりを見つけた。それは、古代の文献に記された月の住人に関する記述だった。
「月の裏側には、高度な文明を持つ月の住人が存在する。彼らは、月の秘密を守り続けている…」
文献には、そう記されていた。朔也は月の住人の存在を確信した。そして、彼らに再び会うことを決意した。
しかし、月の裏側へ行くには、再び探査機を開発する必要があった。前回の探査機は、月の裏側での出来事により、大きく損傷していた。
朔也は再び研究に没頭した。そして、以前よりも高性能な探査機を完成させた。
再び月の裏側へ向かった朔也は、前回と同じ場所へと探査機を降下させた。そして、洞窟の中へと進んでいった。
洞窟の中は、ひっそりと静まり返っていた。しかし、朔也は奥へと進むにつれて、微かな気配を感じた。
やがて、探査機は広い空間に出た。そこは、前回と同じ地下都市だった。しかし、今回は誰もいない。
「誰か、いませんか?」
朔也は呼びかけた。すると、どこからか声が聞こえてきた。
「あなたは…また来たのね」
声は、前回と同じ女性のものだった。朔也は声のする方へと探査機を進めた。
声の主は、月の住人だった。彼女はルナと名乗り、月の秘密を守る一族の末裔だという。
「あなたは、なぜ月の秘密を知りたいの?」
ルナは問いかけた。
「僕は、月の裏側で見た光と、あなたの声の正体を知りたいんです」
「それは、月のエネルギーよ。私たちは、そのエネルギーを使って生きてきた」
ルナは、月の住人の歴史を語り始めた。彼らは、地球よりもはるかに高度な文明を持っていたが、ある日、月のエネルギーが暴走し、故郷を失った。
彼らは、月の裏側へと逃れ、そこで生き延びてきた。そして、月のエネルギーを制御し、再び故郷を築こうとしている。
「しかし、月のエネルギーは危険な力でもある。使い方を誤れば、再び悲劇を繰り返してしまう」
ルナは悲しげに言った。朔也はルナの言葉に心を打たれた。彼は、月の住人の苦悩を知り、彼らに協力することを決意した。
「僕に、何かできることはありますか?」
「あなたに…できること?そうね…」
ルナは少し考えてから、言った。
「月の記憶を見てほしい」
「月の記憶…?」
「ええ。月のエネルギーには、記憶が記録されている。それを見れば、月の過去、そして未来を知ることができる」
ルナは、朔也を月の記憶が記録された場所へと案内した。そこは、地下都市の中心にある巨大な結晶の前だった。
「この結晶に触れてみて。そうすれば、月の記憶を見ることができる」
朔也は、言われた通りに結晶に触れた。すると、彼の意識は遠くへと飛ばされた。