第2話:月の裏側へ
月の裏側へ行く。それは、気が遠くなるほどの困難な道のりだった。
朔也はまず、月の裏側へ向かうための探査機を設計することから始めた。月の重力、宇宙空間の放射線、そして未知なる月の裏側の環境。考慮すべき要素は山ほどあった。
「朔也、本気なのか?月の裏側へ行くなんて、前人未到の試みだぞ」
教授は心配そうに言った。
「はい、教授。僕はどうしても、あの光の正体を確かめたいんです」
「しかし、リスクが大きすぎる。失敗すれば、君の命に関わる」
「覚悟はできています。教授、どうか僕に協力してください」
朔也の強い意志に、教授はついに折れた。教授は長年の研究で培った知識と経験を活かし、探査機の設計を手伝ってくれた。
探査機の開発には、多くの困難が伴った。予算の壁、技術的な問題、そして何よりも、月の裏側に関する情報が少なすぎた。朔也は昼夜を問わず研究に没頭し、一つ一つ問題を解決していった。
そして、ついに探査機が完成した。それは、朔也の夢と希望を乗せた、小さな宇宙船だった。
打ち上げの日、朔也は緊張と期待で胸がいっぱいだった。カウントダウンが始まり、探査機は轟音とともに夜空へと飛び立った。
探査機は順調に飛行を続け、数日後、ついに月の周回軌道に乗った。朔也は探査機から送られてくる映像に釘付けになった。月の裏側の映像は、想像以上に神秘的だった。
月の表面は、クレーターと岩石で覆われていた。しかし、朔也が探していた光は、どこにも見当たらない。
「まさか、あの光は気のせいだったのか…?」
朔也は不安になった。しかし、諦めるわけにはいかなかった。彼は探査機を月の裏側へと降下させ、詳細な調査を開始した。
探査機はゆっくりと降下し、月の裏側の表面に着陸した。朔也は探査機に搭載されたカメラを操作し、周囲の映像を確認した。
その時、彼は再びあの光を見た。それは、月の裏側の奥深くから発せられていた。
「やはり、光は実在したんだ!」
朔也は興奮して叫んだ。彼は探査機を光の方向へと進めた。光は次第に強くなり、やがて、洞窟の入り口のような場所にたどり着いた。
朔也は探査機を洞窟の中へと進めた。洞窟の中は、ひんやりとした空気に満ちていた。そして、奥へと進むにつれて、光はさらに強くなっていった。
やがて、探査機は広い空間に出た。そこは、まるで地下都市のような場所だった。そして、その中心には、輝く光を放つ巨大な結晶があった。
朔也は目の前の光景に息をのんだ。月の裏側に、こんな場所があったなんて。そして、この光は一体…?
その時、朔也は探査機のスピーカーから、微かな声が聞こえてきたことに気づいた。
「あなたは…誰?」
声は、女性のものだった。朔也は驚いて周囲を見回したが、誰もいない。
「聞こえますか?僕は地球から来た、朔也と言います」
朔也が答えると、声は再び響いた。
「地球…?あなたは、月の裏側に何をしに来たの?」
「僕は、この光の正体を確かめに…」
朔也がそう言いかけた時、声は遮られた。
「月の秘密を、あなたたち人間に教えるわけにはいかない」
声は冷たく言い放った。そして、空間全体が眩い光に包まれた。
朔也は目を閉じた。次に目を開けた時、探査機は月の裏側の表面に戻っていた。そして、あの光も、声も、消え去っていた。
(あれは、一体何だったんだ…?)
朔也は混乱していた。しかし、月の裏側に、何か秘密が隠されていることは確かだった。
朔也は地球への帰還を決意した。月の裏側で出会った謎の声、そして光。それらの謎を解き明かすために、彼は再び研究を始めることを決意した。