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小さな灯り

作者: 薄雪草


昔々、あるところに

ちいさな灯りがありました


それは世間一般からしたら

暖かくも明るくもなかったでしょう


それでも

暗闇に生きるいきものにとっては

夜を照らす

ともしびでした



不思議な灯りでした


あるときもぐらが一匹

土の穴から顔を出して

人知れず(あるいはもぐら知れず)

ため息ひとつ、つきました


お月さま、お月さま

ぼくにはなんにもありません

何がいけなかったのでしょう

それすらわからないんです


月はこたえてくれないので

もぐらはなおさら悲しくなりました


ぼくはどうして

みんなのように

楽しくいられないんだろう


もぐらはいつもなら大丈夫でしたが

クリスマスのような特別な夜には

りすからもことりからも

誰からも誘われないことにはさすがに

ほろりと涙がこぼれそうになりました


嫌われてはいないのですよ

でもこういうときには

声がかかることはないのです


そのときでした

もぐらの小さな目から見える

ちいさな視界の端っこに

ちいさな灯りが灯っているのが見えました

ちらちらと


ロウソクより頼りない灯りでしたが

そよかぜにさえ消えそうなりながら

それでも消えないで頑張っていました


あんな弱々しいあかりでは

何も照らせないだろうに


もぐらはそう思いましたが

なぜかその灯りの灯りにならないところに

ほっとしたのでした



普段の心には

何とも思えないのです

日向にいる人にとっては

何も照らしていないように

見えるかもしれません


ただ

このもぐらののように

希望をなくしそうな目には

このくらいのあかりが身近に思えて

灯っていることに

気づくのでしょう



灯り、頑張っているね

もぐらがそう言うと

灯りはこたえて言いました


ぼくは

こんな灯りだけど

だから

同じようなぼくに

寄り添いたくて

灯っているんだよ

大丈夫だよって

言いたくて



何も言わないで

隣にいてくれる


それはやさしいともしびでした



かわいそうな人なんて

いないのです


今はもう見えなくて

探す資格も持たないですが


ともしびが消えていこうとしている

この世界のどこかに

やさしい灯りがあったことを

覚えておいてほしいのです









朝向きじゃないでしたね

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