独白
連合国軍の軍艦を先頭3隻だけを残して全ての戦艦を沈めた後、月華は自分の宮に戻り、静かに荷物を整理していた。6年の間に集めた資料の山。自分の荷物はほとんどなかった。
資料は全て庭に積み重ね、火を放った。己の背丈を優に超す山は裾野からゆっくり朝焼け色の炎に包まれていった。
時折放たれる炎のはぜる音と、風に飛んでいく火の粉が、ざわついていた心を静めていくのを感じた。
最後は彼らの遺品の整理。この腕で彼らの冷たくなった躰を抱きしめ、運んだはずなのに、いつかいつもの笑顔と共にひょっこり帰ってきはしないかという思いが捨てられず、どうしても手を付けられなかった。部屋を整理してなくしてしまったら、彼らが記憶からもいなくなってしまいそうなことが怖くて、そのままに残しておいた部屋だった。
「もう、自由にしてやらないとな。私の過去にいつまでも縛ってしまっては悪い。」
もう、何百年と時が経った部屋だというのに、4人の部屋、どこに足を踏み入れても彼らの懐かしい香りが、気配が残っている気がした。どの部屋も物が少なくて、片付けは遭難時間もかからずに終わってしまった。
「あっけないなぁ。あれほどに大切だった時間がこれっぽっちで片付いてしまった。」ぽつりとこぼれ落ちた声に答えは返ってこない。広く冷たい薄暗い部屋にむなしく響くだけだった。処分せずに残したのはほんの僅かばかりの遺品。
もうこの眼が捕らえることのない彼らの面影を遺品に重ね、優しく撫でていたところに無機質に呼び出しの声が響く。
「天皇陛下がお呼びです。直ちに正殿松の間に来るとようにと。」