三話 蘇るゴーレン
「………なんだここは……。」
幻の国、ゴーレンはもう、俺が想像していた国ではなかった。畑は荒れに荒れ、建物は倒壊し、辺りには壊れたゴーレムの残骸だらけだった。
「そうか………。もう、とっくに滅びていたのか………」
俺はゴーレンの都市を歩いて回った。
そして、一際大きな建物があり、その中へと入った。
「………研究所か?」
辺りには埃を被った本が大量に散らばっている。
そして、ここにはまだきれいなゴーレムが沢山置いてある。
俺はその本の山から一冊の本を手に取った。
「土魔法の魔道書………!?」
かなり古い魔道書だ。
俺の居た国では、土魔法の魔道書なんてなかった。なぜなら土魔法は役立たずだからだ。
俺はパラパラと魔道書を見た。
「………なんだ…この魔方陣は………!?」
俺が知ってる土魔法の魔方陣じゃない。
俺の国の魔方陣に近い部分もあるが、そもそもの形が異なっている。
「えーと……ストーンウォール、ストーンランス、アースブレイク……………どれも聞いたことのない魔法だ………ん?ゴーレムクラフト?」
ゴーレムクラフト…………クラフト、ということならゴーレムを作る魔法なのだろうか?
ゴーレムは魔法では作れないはず………
「………試してみるか?」
俺は研究所から、動かないゴーレムを一つ外へ出した。肩に「01」と書いてある。この数字が何なのかはまだわからない。
「え~と………『土魔法の基本、まず床に片手を置いて魔方陣をイメージする………魔方陣が出たら魔力を込めながら土を形成する』………か。」
俺は床に手を置き、魔方陣をイメージした。
手前を見ると、魔方陣が出た。俺が知っていたものではなく、ゴーレンの魔方陣が。
「これで……魔力を込めながらゴーレムの破損部位を直すんだったな……」
俺は魔力を込めながら、ゴーレムの破損部位を直した。パーティーに居た頃も土の形成しかしてなかったから、これに関しては得意分野だ。
……ゴーレムはすっかり元に戻った。
しかし、なぜか動かない。まだなにか足りないのだろうか?
俺はゴーレムのページを開いた。
「『ゴーレムを起動させるにはゴーレムの心臓部に魔石をはめこみ、一度魔力を魔石に送る必要がある』………?」
魔石。魔石とはこの世界の生物にとっては臓器のようなものだ。魔石は体内の魔力を循環させ、魔法を使うことができる。当然、俺にも魔石は入っている。
俺は研究所の中を探し、ようやくゴーレム用の魔石を見つけた。
魔石をはめこみ、魔力を流した。
「ギギギギギ………」
「や、やぁ……」
「わ、私は壊れたはず……?」
「お、俺が直したんだ。動きづらいところはないか……?」
「……いえ、正常に稼働できています。貴方は何者ですか?」
「俺はカイル。ゴーレンを見たくてここに来たんだ。」
「カイル様………貴方が新しいマスターですか?」
「マ、マスター?」
「はい。私を直した技術力や土魔法の知識があるお方と見ます。マスターではないのですか?」
マスター?何のことだろう?
「その、マスターって何?」
「マスターとはゴーレンの最高位の権力を持つもの。
国王のことです。」
なるほど。マスター、国王のことなのか。
「いや、俺はこの国に来ただけで、マスターではないよ。」
「………そうですか………」
ゴーレムは下を向いた。
表情は無いものの、悲しんでいることはわかる。
「やはりゴーレンは『厄災』に滅ぼされたのですね………」
「厄災?」
厄災?ゴーレンが滅ぼされた?一体何の話だ?
「厄災って何?」