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奏君の恋物語  作者: デベ
2/2

2話目~

1年以上ほったらかしておいて、今さら更新するという……

何故か残ってくださっていたマイリス1の方、長らく、長らくお待たせしました!

あんなキャラして縞パンだと!?」

意識を手放す直前の光景を思い出して跳ね起きる。そして跳ね起きると同時に周囲を見渡そうとして―――横合いから顎へと衝撃が走る。

意識を取り戻してから、ほんの数秒で再び意識は闇の中へと沈んでいった。



「んっ……」

僕が目を覚ますと、呆れたような顔で覗き込む舞の姿が目に入った。

「んー……。おはよう舞」

「おはようお兄ちゃん」

頭がうまく働いていない。どうして舞が僕の顔を覗きこんでいるのかがわからない。理解が及ばないままだが、上半身を起こして周囲を見渡す。清潔な雰囲気のある室内だった。

「……妹よ」

「なーにおにいちゃん?」

「なにゆえ僕は保健室で寝ていたんだ?」

「覚えてないの?」

「うむ。記憶の中から綺麗に消え去っているぞ」

「……記憶が飛ぶ程の衝撃だったんだね」

「舞、何か言った?」

「ううん、何も言ってないよ。それと寝る前のことについては香菜先輩に聞いてみればいいよ」

「香菜に?」

「うん。私はその場にいなかったから詳しくわからないけど、香菜先輩は当事者だから詳しく知ってるよ」

「ふむ……。なら聞いてく」

『聞いてくる』と言おうとした矢先、身体が跳ねた。

「む?」

自分の体を見下ろす。次いで身体に異変がないか動かしてみる。

「……おかしなところはないよな? まあとりあえず香菜の―――」

『ところに行ってくる』と言おうと思ったのだが、言葉を発することが出来なかった。身体が痙攣したかと思うと、主の意思に反して足が前に進まないのだ。

「む?むむ?」

上半身に勢いを付けてみるが、下半身は全く動く気配がない。

「妹よ。身体の調子がおかしいようだ。どうも身体が前に進もうとしない」

「お兄ちゃん……。身体が拒絶するほどトラウマになってるんだね……」

「何か言ったか?」

「ううん。なんでもないよ。……なんでもないよ」

「なんで二回言った? そして目を逸らした?」

「……なんでも、ないんだよ」

「目を合わせたのはいいが、なんで諭すように言うんだ?」

「大丈夫だよ! 私はお兄ちゃんのことわかってるから!」

「僕は舞がわからないよ!」


 舞がそのまま一人でトリップし始めたので、スルーすることにする。「おにいちゃんたら、下着の枚数が合わなかったら何があったか丸わかりなのに……」とか「朝はおにいちゃんのがたくましくて……(息が荒い)」なんて全然聞こえない! 聞こえないったら聞こえないんだ!!……明日から、気をつけよう。

 頬を染めてモジモジしている妹はなかったことにして、というかなかったことにしたい。切実に。顔はいいのに、なんて残念なんだ……。兄はお前の将来が心配だよ……。しかし、この状態で放置しておくのは僕にとってかなり危ない。主に学校生活を続けていくうえで、致命傷とも言える発言を垂れ流し続けている。こんな発言聞かれたら……自殺もんだぞ?


「舞」


 僕は妹を引き戻す為、真剣な表情で両肩に手を置く。


「おにいちゃん……。…………んっ」


 ……おい、この妹気味は何をしているんだ? 目を瞑り、両手を胸の前で握りしめ、顔を僕の方に突き出している。まぁ、ようするになんだ。キスを待っている状態と言えばいいのか。

 僕にどうしろと!? キスしろと言うのか!? 妹に!? それどんな鬼畜だよ!! 越えちゃならない一線だよ!! 落ち着け、落ち着くんだ僕。これをやったらバットエンドどころの騒ぎじゃないぞ。冗談抜きで社会的に死ぬぞ。そう、落ち着け、落ち着いて深呼吸するんだ。…………OK、僕はまだ戦える!


「おにいちゃん……」

 OH!! 妹よ。何故そんな悲しそうな、今にも泣きそうな顔をして、泣く直前のような声を出すんだい? 僕に死ねと? そう言いたいのかい? お兄ちゃん死んじゃうよ? 一線越えちゃうよ? 踏み越えるのなんか楽勝なんだよ? 伊達に病的なまでのシスコン呼ばわりされてないんだよ?


「……私、本気なんだよ」


 その時、僕に電撃走る! 舞の頬に一筋の涙が流れる。……ここまで慕われて行かないようじゃ、男じゃあねぇ。父さん、母さん、ごめん。僕はこれから男になるよ。そして舞を……。放課後の保健室だなんて狙ったようなシュチュエーションで、回りの喧騒がどこか別世界のように感じられて……。

 未だ目を瞑ったままの舞の腰に手を回し、少し力を込めて抱き寄せる。


「あ……」


 舞が僕の腕の中に納まる。そして――――





 その後がどうなったかは察してくれると助かる。いたのが保健室で、ベットがあったんだ。後は、わかるな? とまぁ一線どころか何本もぶち抜いたまでは良かったんだ。僕だって生半可な覚悟でやった訳じゃない。最後まで、文字通り最後まで一緒にいるつもりだったんだから。後悔も反省もしてはいないよ。だって大切な女の子と一つになれたんだよ? 感無量じゃないか。

……ごめん、脱線した。話しを戻そう。一線越えた後は、僕も覚悟を決めてね。まず両親を説得したんだ。どういう訳か、諦めたような顔で「こうなるような気はしていたんだ……」と言っていたな。結局は祝福してくれたけどね。正直なところ、認めてもらえると思ってなかったから、すごくうれしかったな……。

ついで光や委員長、あの二人もまた、どこか諦めたような、虚ろな目をして、「うん……。こうなるような気がしてた……」「そうね……。気はしてたわね……」乾いたような笑いと共に、両親と同じことを言っていたのが印象に残ったかな。概ね好意的に受け入れてもらえたよ。


そして、最後に――――香菜。


僕と舞が事情を説明しに行ったら。最初は冗談だと思っていたらしくて、中々話しが進まなかったな。最初から通して、真剣に話をしていくうちにどうやら本当だとわかってくれたようで、凄く驚いた表情をしてたな。その後すぐに泣きだしちゃったんだけどね。「どうして!? 本当の兄妹なのにっ!!」って、ここで初めて常識的な反応があったんだよ。……遅すぎるような気がしないでもない。が、気にしても仕方ないな。

香菜が駄々っ子みたいに泣くの、数年ぶりにみた気がしたな……。もしかしたら香菜と――――いや、もしもだなんて、舞にも香菜にも失礼だな。もう、僕の隣には舞がいるんだし。これについては聞かなかったことにしてくれるとうれしい。最終的に泣き続ける香菜の前でキスしたあげくそのまま……。いや、忘れよう。若気の至りだ。香菜は香菜で最後までしっかり見ていたけど。いや、本当に忘れよう。

なんだかんだで全員に認めてもらい、晴れて僕と舞が一緒にいられることになったんだけど、さすがに節度は弁えて、二人が卒業するまではってことで僕と舞が決めたんだ。……どの口がとか聞こえたような気がする。幻聴か? いや、幻聴だな。

それで、舞が卒業すると同時に、身内だけの小さな結婚式をやったんだ。舞のウエディングドレス姿、綺麗だったよ。天界から天使が降りて来たのかのかと思ったよ。式の最中に親父と舞と香菜が泣いちゃって大変だったなぁ。全部ひっくるめていい思い出だけどね。

それで、今は――――



「あーうー」

「はは。舞に向かって手を伸ばしてるよ?」

「衛ーどうしたのー?」


舞が僕たちの息子、衛の手を優しく握ってやる。僕は腕の中にいる確かな温もりを落とさないように、しっかりと抱えている。


「きゃっきゃっ」

「なんだ、衛はお父さんより、お母さんの方がいいって言うのか?」

「ふふ。こんな女誑しよりお母さんの方がいいよねー? 衛はこんな誑しになっちゃダメよー」

「…………待て、誰が女誑しだ。誰が」

「はぁ……これだから」

「待って!? その言い方は凄い傷つくから!! というか僕は誑しじゃないだろ!!」

「ふぅー……。衛ー。衛はこんな男に育っちゃダメよー」

「え? あれ? 舞さん? 酷くない? 夫への対応酷くない?」

「そういう対応させるからいけないの」

「いや、僕変なこと言ったっけ?」

「…………」


 舞が無言で衛を抱きあげ離れていく。軽蔑するような目を向けるのも忘れない。僕、心が折れそうだよ……。

 少し離れたところで座りなおした舞を見る。あれからだいぶ成長し、女の子から大人の女へと変わった僕の大切な女性。長い年月を経て、何度も喧嘩や言いあいもした。顔も合わせなかった時期だってある。それでも僕らは、二人で乗り越え、今は二人で幸せな時間を過ごしている。


「舞」

「なぁに?」

「これからもよろしくな」


 突然だったからか、舞が少し呆けたような顔をするが、すぐに笑顔へと変わる。


「うん! よろしくね。お兄ちゃん!」


――――僕の呼び方は昔から変わらないけれど


 ――――僕たちの関係は男女のそれへと変わり


  ――――僕らはこれからも少しづつ変わっていくのだろう


   ――――隣で笑ってくれている女性と共に……




F I N ―――――――――――






「FIN……じゃねぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 絶叫すると同時に腕の中にいる舞に頭突きをかます。とても嫌な、鈍い音が保健室内に響き渡る。そして額を抑えて蹲る僕と舞。


「ああああああー! 火花がっ! 火花が散った!!」

「……っ痛い。おにいちゃん! なんでそこで頭突きなの!?」

「すまん舞……。脳内で色々残念なことになって、頭突きせずにはいられなかった……」

「お兄ちゃんって、たまによくわからないことするよね……」


 ……舞にだけは、舞にだけは言われたくなかった台詞がっ! しかし、今回の件に関しては甘んじて受けるしかないだろう。混乱していたとはいえ妹に頭突きって……。


「反省してる。しかし、何故頭突きをしたのかはわからない」

「お兄ちゃんがやったのに?」

「僕がやったのに」


 額を抑えながら涙目で睨んでくる妹に、神妙な顔で頷いてやる。しかし、妹よ。そんなかわいい顔で睨まれても和むだけだよ。


「……なんで笑ってるの?」

「いやー、舞がかわいかったから。つい」

「っ! ……というかお兄ちゃん。香菜先輩のところ行かなくていいの?」

「……そうだった!! 舞、悪いけど先に帰っていてくれ!!」

「うん。わかった」

「それじゃあちょいと逝ってくる!」

「本当に逝っちゃうかもしれないけど……」

「嫌なこと言うなよ……。それじゃあ行ってくるよ」

「うん。いってらっしゃい」


 保健室を出る直前、舞の顔も見れないままドアを開ける。


「…………ごめんな」

「…………うん」


 舞に見送られて保健室を出ていく。ドアを閉める直前「……レちゃったか」舞が小声で何か呟いていたがはっきりとは聞きとれなかった。泣いているような声だったが、僕が戻ってはいけないことくらいはわかっていた。


「……僕、最低だな」


自嘲の呟きと共に香菜を探して廊下を走っていく。せめて振り返らないようにしようと、前だけを向いて――――


妹が暴走した。今回も自重はできなかった。

タグ変えないとやばそうな予感……。

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