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第7話 話し合いは、力量を見せつけたところから、ようやく始まる

 


 ロブオ(ローブの男)の方を見てみると、向こうも自分の周りの状況に気がついたみたいで、すっげー焦ってた。分かりやすいくらい焦ってた。


 ——あ、これ、勝ったわ。


 あーしは右手の剣を肩にトントンっと当てながらロブオにメンチを切る。

 ロブオは面白いくらい狼狽(うろた)えながら、


「ま、待て、まあ待て。話をしようではないか」


 とか()れ言をほざいた。

 いやいや、今まで人の話をムシしてたのは誰だっつーの。いまさら話し合いですか〜? おせーよ。

 そうは言いつつも、律儀(りちぎ)に会話をしてあげるあーしは天使の血族かもしれない。


「話ぃ〜? なんのぉ〜?」


 ガラが悪いのはカンベンね。もうこっちもかなりイライラ来てるから。

 緊張とイライラの繰り返しでもう余裕がなくなってるのだ。剣で肩をトントンすることで、逆に平静を保ってるくらいだから。


「そ、そもそもお前は何が目的だ? (なん)のためにこんな騒ぎを起こしたのだ?」


 フツーそれ真っ先に聞くべきやつだろ。なんで今ごろ聞いてくんだよ。

 そもそもあーしにだって、なんでこんなことになったのか分かんねーっつの。完全になりゆきだし。

 つーか、大騒ぎになったの半分以上はお前のせいだろ。


「騒ぎになってるのはアンタのせいだと思うけどー?」

「それは、私もこんなつもりではなかったのだ」

「何ソレ? それならあーしだって、こんなつもりじゃなかったし」

「……では、どういうつもりだったのだ?」

「つもりも何も、あーしはただここに、通訳のアレのために来ただけだし」

「……? なんだ? 通訳のアレとは」

「いやそれは、あーしも名前忘れたっつーか……」


 何だったっけアレ。いやーマジで思い出せないんだけど、これアレを思い出せないとヤバいカンジかなー?

 つか、手紙に書いてあるだろーから、覚えんでいーやろって思ってた。だってまさかこんなことになるなんて思わんしさ。


 あーしがうんうん(うな)って思い出そうとしてたら、ロブオがなんか言い出した。


「通訳ということは、(こと)()の神の、アレか……?」

「ん? あ、それっ、そうそれ! なんかそんな感じのやつだった!」


 そーそー、なんとかの神の何たらって言ってたわ。そーだったわ。


「なるほど。お前はそれを求めてやってきたのか」

「そゆこと」


 つーかだから、その辺はゼンブ手紙に書いてあるんすけど。手紙はどこ行ったんだよ。


「ならば今から用意しよう。こちらはそれを渡すから、そちらは代わりに人質を解放したまえ」


 あ、人質?

 あーいたな、そーいやそんなおっさんが。すっかり忘れてたわ。

 んでも、あっちにはやっぱ重要な感じなのかな。(いま)だに人質がどうとか言ってくるんだからね。

 そういうことなら、人質(おっさん)もしっかりキープしとこ。


 そういうわけで、ロブオはなんだか周りの人らに話し始めた。

 そういやあーしの言葉は、ロブオ以外には伝わってないわけか、タブン。今もロブオ以外の言葉は分かんないし。



 というわけで、なんか誰かが来るまでの待ちみたいになったわけなんだけど。

 さて、これってあーしの人生の中でもトップレベルに気まずい待ち時間なんだけど。人質交渉の待ち時間とか、気まずさ半端(ハンパ)ないわ。

 でもここで油断したらダメだからね。ここが一番、人質交渉で大事なところだから、気を引き締め直さないと。

 いや、だから別に人質交渉に詳しいワケじゃないから。一般論、一般論だよコレ。あーしは犯罪とは無縁のフツーの高校生。


 しょーじき黙って突っ立ってても気まずいだけなので、話しかけることにした。

 フツーはこんな状況でおしゃべりとかしないと思うけど、そんな常識はこの際どーでもいい。

 とはいえ、話相手なんて現状一人しかいないわけで。自然、あーしはロブオに話しかけることになる。


「さっきのアレ何?」

「……? アレ、とは?」


 あーしは、とりあえず聞きたいことあったら、ズバッと聞いちゃうとこあるタイプの人間なとこあるので、いま聞くことじゃないかもだけど聞いちゃう。


「いやアレだよ。なんか眠くなったり動けなくなったりするやつ。(なん)なんアレ?」

「アレは、普通に魔術だが?」


 普通に、じゃねーだろ。

 何が普通なんだよ。ナニその——なんでこんな当たり前のこと聞いてんだコイツ? って感じの顔は。

 魔術? なにソレ。初めて聞いたんですケド?


「いや魔術って……、なんでアンタそんなこと出来るワケ?」

「魔術士なんだから、魔術が使えるのは当たり前だが?」


 魔術士……。こいつ今、自分のこと魔術士って言ったの?

 ヤバい。真面目な顔してそんなこと言われたら、あーしどんな反応していいか分かんねーわ。


「まさか、魔術を見るのは初めてだったのか? ふん、よっぽど田舎の出身のようだな」


 ほーらコイツすぐ上から目線なるんすケド。隙あらば人のこと見下さないと気が済まないのかよ。

 さっきまであんなにビビってたくせに、この一瞬でそこまでチョーシ乗れんの逆にスゲーわ。


 あーしがなんとも言えない目で(にら)んでいるのに気がついたロブオは、慌ててフォローし始めた。


「い、いや、私の魔術を防いだお前も十分に凄いと思うぞ」


 なんだそのフォロー。いらんわ別に。


「まさか私の“雷条網(らいじょうもう)”をあんな風に防ぐとは……。聞きたいのだが、『マンゲツダイコンギリ』とはどういう技なのだ?」


 そこにツッコむのもヤメロ。テキトー言っただけだからスルーしなさいっつーの。どこにキョーミ持ってんだよ。



 けっきょくなんの話をしていたのかよく分からない内に、待ち人が来たみたいだった。

 黒い布で顔を隠した黒子(くろこ)みたいな人が、トレイみたいなのに乗せた何かを運んで来た。


「さあ、コレがお前の望むものだろう? 人質と交換だ」


 ん、いや、コレ何?

 あーしてっきりなんかやってもらうんだと思ってたんだけど、これ現物じゃん。なんか違うくね? あの手紙書いたおっさんも物では無いっぽい言い方してたじゃんね。

 つーか物は高いからこそ、安上がりなやつをしてもらうみたいな話だったと思うんだケド……。


 ま、いっか。いまさらこの状況からなんかやってもらうってのも、もうムリだし。

 なんかくれるってんならコレもらって、サッサとこっから出よう。

 それはそうとして……


「ちょっとアンタ。そこで止まって。ソレそこに置いて下がって」


 運んで来た黒子がアウトだった。まあ黒子の時点ですでに怪しいけどさ、剣くんがこいつアウトって言ってるからアウトだわ。

 お前それ以上近づくなよってことで、あーしは黒子の方に剣を突き出して牽制(ケンセイ)する。

 言われた黒子はと言うと、太々しくも——僕言葉分かりません〜(๑>◡<๑)——みたいな態度でしれっと近づくのを止めない。って、


「いやオマエ! それ以上(いじょー)コッチ来んなって! ——オイ、ロブオ! お前からも言え!」

「はっ? ロブオ?? え、私?」

「いいから!」

「ロブオ、ってなんなのだ……?」


 ぶつくさ言いながらも、ロブオは黒子に止まるように言う。

 つーかロブオって心の中で呼んでただけで、ロブオの本名知らないわ。聞いてないし。キョーミもないケド。


 ロブオに言われてようやく黒子は止まって、その場にトレイを置いて下がった。

 コイツもコイツで、ホントに図々しいヤツなんだケド。フツー剣突き出されたらどういう意味かワカンだろーが、アホかっつーの。


 黒子が下がったのを確認して、あーしは黒子が置いたブツに近寄っていく。

 上に乗ってるのはなんかちっちゃいやつで、遠くからだとよく分からなかったけど、これはイヤリング? みたいな形してる。

 トーゼン、拾う前に剣くんに確認を取る。よし、とりあえず触っても大丈夫っぽい。

 タブン、身につける系のやつだと思うんだけど、こんなん付けて大丈夫なんかー? つーかケッキョクこれ(なん)なんだろ。


 あーしが拾ったイヤリングに気を取られてる隙に、事態は急展開していた。

 いつの間にか目の前から居なくなってた黒子が、気がついたらあーしの後ろの人質のおっさんを回収して離脱していた。

 あっという間の早業だった。あーしが気がついた時には、すでに終わっていた。


「あ、ヤベ」

「人質が回収された! 兵士ども、突撃しろ!」


 ここぞとばかりに、ロブオが号令を放つ。

 すると生き残りの(他も死んで無いケド)兵士たちが集まってきて、あーしを囲みにかかる。


「ヤベヤベっ!」


 あーしはすぐさま壁まで後退する。追ってくる兵士たち。

 そのままあーしを攻撃範囲に(とら)えて、後ろを除く全方位から槍を突いてくる。

 もはや(かわ)せる場所もない——こともない。


「——ッッ!」


 気合いと共にあーしは上に飛び上がり、槍を回避する。

 そのまま空中で後ろの壁を蹴って前に跳躍、前方の兵士の頭を踏み台にしてさらに跳び、囲いを突破した。


 ()しくもその場所は、ロブオのすぐ近くだった。

 一瞬、コイツの頭に剣を叩きつけるか迷ったケド、バリアっぽい膜のことを思い出したので、無視して出口まで走っていく。


 出口まであと少し、というところで後ろから何かが襲いかかってきた。

 とっさに振り向いて剣で防いだソレは、光るヒモのようなモノだった。ソイツがまるで生き物のようにあーしに絡みつこうとする。

 ヒモの根元を見ると、ロブオの手の中にあった。


 ——こ、コイツ……、こんなことまで出来るんかい! 何でもアリかオマエ! やっぱぶん殴っときゃよかった!


 ロブオが操っているそれは、まるで光の(ムチ)だった。

 あーしはなんとか迫り来る光のムチに対処する。しかしふにゃふにゃと捉え所のない動きに、捕まらないように防ぐので精一杯だった。

 気を抜いたら剣に絡みつかれて奪われそうになる。そんなことになったら正真正銘の絶体絶命だ。絶対に死守しなければと思うと焦りが生まれる。

 モタモタしていたら兵士たちがやってくる。時間をかけてはいられない。


 後ろからいきなり襲われたせいで最初は劣勢だった——ケド、すぐさま持ち直していく。

 慣れてきたら、不規則に動く光のムチの軌道も捉えられるようになってくる。

 慣れてきたのはあーしというより剣くんだケド。この短時間で慣れるとは、さすがあーしの剣くんだわ。


 もはや剣くんにすべてを(ゆだ)ねる。あーしはそれに両手と体を添えるだけ……。つまりほぼ全部ね。


 あーしは迫り来るムチを(かわ)しざま、あえて前方に踏み込み、体をひねりながら剣を突き出して振り抜いた。

 すると、光の鞭が途中でバッサリと断ち切られ、宙に溶けるように消滅していった。


 せまる兵士たち。しかしあーしの後ろには出入り口。

 あーしは——光のヒモが斬られたことを、あんぐりと口を開けて驚いている——ロブオの顔を束の間、視界に収めると、すぐさま(きびす)を返して出入り口を飛び出した。


 そしてそのまま街中を疾走。

 それは、完全に追手がいなくなったと確信するまで続いた。



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