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異世界賛歌~貧乏くじ聖女の異世界革命記~  作者: ArenLowvally
あまりにも、よくある話。
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第八十五話:異世界にも夏の気配が近づいてきました。

 あと数日で6月……春分も終わります。そしたら夏が始まります。季節の移ろいが穏やかにやってくるのではなく、朔日になると夏に切り替わるそうです。結界によるものだそうです。魔法ってすごいね……。


「この世界に日焼け止めってないんだよねぇ」


 今はお昼休憩中です。窓の外を見ながら明香里が言います。夏と言えば、女の子が気になるのは確かにその辺りでしょう。どれくらい日が強いのかはわかりませんが、平均気温は大きく上がります。今週は夏に向けての準備がいろいろと進めている最中です。本日の午後はその準備の一環として、夏用品の買い付けをする予定です。先に聞いたラインナップの中には日傘があったので、対策が必要なくらいには日が強いのかもしれません。


「侍女のみんなにも聞いたんだけれど、そんなものがあったら欲しい、って言われちゃった」

「まぁ、そうだよね。侍女とはいえ、貴族令嬢なわけだし」

「流石に日焼けはイヤよね。日傘だけで対応できるなら、構わないけれど」

「実際に夏が来てみないとね。スキンケア系は全く興味なかったからなぁ……。日焼け止めってどういう風に作られてるとかは知らないんだよなぁ」

「成分表とか、見とけばよかったって思うね」

「そうね。こうなるだなんてわかるわけもなかったけれど、知らないって損だって思うわね」

「こういうとき、帰りたいなぁって思う」


 後の祭りなことを言って、明香里も成美も少し気落ちしたようです。故郷が恋しくなる理由がこういう便利道具がないっていうのも、なんだかなぁって思います。まぁ、そんなものなのかもしれませんが。思わず笑えば、2人ともそれで切り替えたみたいです。


「フラーディアに薬草研究家がいるから、薬草の調合次第で日焼け止めは作れるかもね」

「みんな欲しいって言うくらいだし、作ってもらいたいなぁ」

「正式な依頼として、研究費の請求がいくことになるけれど」

「……友だち特典っていうのは、流石にないかぁ」

「残念ながら。仕事だしね」


 そうなると、2人とも考えるみたいです。研究費ってバカ高いくらいは想像できるでしょうし。既に存在してるものをお手軽に買えた現代日本で、研究から始めるっていうのは敷居も高くなるものだと思います。今のフラーディアは国庫から予算が出てて、月の概算が出たところです。今やってること以上のことをするなら、有志から研究費を募るしかありません。いくら友だち同士だからといって、仕事に関わることをなあなあにするつもりもないです。そこをなあなあにしたから、美雨とは関係が崩れたわけですし。


「まぁ、考えといてよ。貴族令嬢には需要すごく高そうだしさ」

「う~~~~ん…………考えるくらいはしとく」

「自作できるなら、また話も変わるし。あたしは自力で薬草のこと調べてみるわ」

「そっか」


 それぞれに方針が決まったみたいです。こちらがとやかく言う理由はないので、改めて話が上がったときにはメリッサに話してみましょう。


「あ、でも友だち特典なら、日除けのベール、みたいな魔法を週1でかけてあげるくらいはしていいよ」

「マジ? めちゃくちゃ嬉しい。そんなことしてくれるならこの後の買い付けの代金全部わたしが持つ」


 一息で言われて驚きました。スキンケアとかそういうの、美雨が頑張ってるのは知ってましたけれど。明香里も結構ガチ勢だったのか……。


「いや、あー……、えっと、うん。じゃあ、今までいろいろお願いもされてたし、日除けのベールの魔法? 週1でかけるのもやってあげる。その代わり今日の代金、全部を明香里が持ってね」

「……今までのもチャラにしてくれるの?」

「うん。だからどれだけの請求が来ても怒らないでね」

「うわー! アレンありがとう!!」


 これでもかって嬉しそうに明香里が声を上げました。大げさなくらいですけれど、それくらい悩んでたんでしょう。代わりにこっちは大いに買い物ができるので、win-winです。


「成美はどうする?」

「自分でやってみて、ダメだったらお願いする。アレンほどじゃなくても、あたしも魔法の扱いは褒められてるんだから」

「おお、流石二次元の民」

「それ褒めてる?」

「もちろん」


 笑って言えば、成美も可笑しそうに笑います。談笑にも終わりが見えた頃に鐘が鳴りました。今まで鐘が鳴る前に移動してたんですけれど、この音に合わせて行動が貴族の嗜みだと先日怒られました。日本人の5分前行動が身に沁みついてる弊害が、こんなところで出るとは、と3人で笑ったのもいい思い出です。行こうか、と誰ともなく言って、席を立ちました。

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