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異世界賛歌~貧乏くじ聖女の異世界革命記~  作者: ArenLowvally
あまりにも、よくある話。
85/86

第八十四話:異世界もお天道様は気まぐれです。

ここしばらくお天気雨が続いていて、見事な虹を何度も見れたんですよね。

見事なでっかいアーチとか、二重になってたりとか、まっすぐな梯子みたいになってたり。

やっぱり、自然な虹は見ると元気出ますよね。


「おー、あれがマルソ様の微笑みかー」


 いい感じのお天気雨。もしやと窓の外を見れば、見事な虹が出ていました。作るのは簡単に作れますが、やっぱり自然に出来上がったものは感動が違います。マルソ様は四星神の一柱で、春を司るそうです。マルソ様の微笑んだ年の雨はとても良質で、作物の成長にとてもいい影響を与えるのだとか。空の状況が不安定で起きる現象なのですが、まぁ、科学が発展していないとそんなものでしょう。それで今年の夏も安泰だと安心できるのなら、宗教も悪いものではありません。


「そういうものだと思って見てましたけど、原理がわかるとなかなか不思議なものですね」


 光の性質について基礎的な部分の説明を終えて、コンチータが言います。


「普通はそうだと思うよ。世の中のものごとが具体的にどういう理屈で動いてるかなんて、わざわざ考えなくても生きていけるわけだし」

「確かにそう。でも知らなくていいっていうことにはならない。原理がわかれば、応用も聞く。光を使った魔法、早く作りたい」


 ワクワクとした様子でリリーが言いました。魔法って魔文字を組み合わせればすぐに新しく作れるわけじゃなくて、現象を再現するものであるから、ある程度の原理の理解が必要みたいです。異邦の電子機器だって、原理を理解してなきゃ作れないんですから、それが魔法に置き換わっても同じってことでしょう。スヴァンテ様が頷きます。


「天候に関しては、神の采配であるという意識もありましたから。原理があるだなんて、考えたこともありませんでした」

「いろんなものに必ず一定の法則がある、と気づける人間はごくごく一部ですよ。異邦でも、飛び抜けすぎた天才が気付いた原理で今の科学が発展しましたから」

「この世界にはそんな天才がどこにもいなかったという話でしょうかね」

「言い方ぁ。気付く人がいても、有識者がいなきゃ日の目は見れないからねぇ」


 相変わらず、ラルスは容赦ないこと言います。笑えば、メリッサがしみじみと頷きました。


「そうねぇ。画期的なレシピを思いついても、それを理解してくれる人がいないと証明ができないませんもの。発表するにも、まずはそれを理解してくれる方が周りにいて、広めてくれなければ」

「理解していただけないと、切り捨てられて終わりますからね」

「成果も、なかったことに、なっちゃいますもんね……」


 エドガーとカタリナが同意します。そうやっていくつも成果を捨てられてきたんでしょうね。有識者もいなければ、立場の弱い平民と下級貴族の言葉に耳を傾けてくれる環境でもなかった。そういうのを切り捨てるから、大きなチャンスも見逃すんですけれどね。長期的な利益より、短期的な利益の方が、成果としてはわかりやすいから仕方ないんでしょうけれど。


「そういう意味では、私はすごく運がよかったと思う。こうしてちゃんと私の話を聞いてくれる人が、こんなにいるわけだし」

「アレン様のお話はもっとたくさんの方が聞くべきだと思います。ぼくは正直、ついていくだけで精一杯ですが、この世界の発展に重要な事項であるくらいはわかります」

「テリー様の言う通りですよ。今の世界をもっとよくするために、異邦の方をお呼びするのですから」


 シルヴィアがテリーの発言に乗って明るく言います。それにブラッドが異議を申しました。


「それに頼りすぎるのもどうかとも思いますが」


 確かに自力で世界を発展させることができるならそれに越したことはないとは思います。でもこの世界はそうやって発展することを選んできて、外側から補填してもらうことで発展を続けます。その分、発展が遅くて緩やかで、なかなか変化しないっていう弊害もありますが。現状維持バイアスは人間である限り、どの世界も変わらないものです。


「ただ与えてもらうばかりではなく、与えてもらったものをどう活用するか、だろう?」


 エルネストがフォローしましたその通りだとみんな頷きます。そうやって自分の力にしようって思ってくれる人っていうのも、稀有なんですけれどね。簡単な四則計算や文字の読み書きはともかく、学校で教わることをちゃんと活かして生活してる人はそうそういないですから。かく言う私だって、義務教育で習ったことなんてほとんど忘れているわけで。普段、それを意識して生活しているわけでもありません。ちゃんと活用しようって思ってるだけ、みんなの方が偉いと思います。


「じゃあ、天気もカガクでどうにかんのか?」

「流石にどうにもできないなぁ。お天道様次第だから。でも、ある程度の予測は立てられるよ。異邦では天気予報で1週間先の天気まで予測するって当たり前にあったから」

「カガクって未来予知までできちゃうんですか?!」

「予知はできないよ。今の状況と、統計から次の天気はこう移るだろうって予測を立てるの」

「とーけーって、なに?」

「今回こうだったねっていうのを、たくさん集めるの。そしたら、その中に法則があるってわかるようになるんだよ」

「よくわかんない」


 ノアにはまだちょっと難しい話だったみたいです。カイもよくわかってない顔をしてます。まぁ、統計って簡単なようで難しくて面倒な話ですからね。もう少し物事の理解度が上がってから、改めて話をしてみるくらいでいいでしょう。


「統計か……、面白そうですね」

「数学の分野なので、今スヴァンテ様のやってることと相性いいですね。概要をまとめてお渡ししますね」

「ありがとうございます。楽しみにしますね」


 成美にも手伝ってもらいましょう。数字はあの子が一番強いので。


「よし、それじゃあ、休憩もこの辺りにして、話の続きをしようか」


 音頭を取れば、そろった返事がされます。気付けば窓の外から結構な勢いの雨音が響いてきます。そのまま晴れると思ったんですけれど、雲の隙間に入ってただけみたいですね。まだ雨は続きそうです。どれくらいで晴れるかっていうのも、異邦では気軽に知れたんですよね。異世界でも、魔法と統計を組み合わせれば、簡単な天気予報くらいできそうです。それは確実に人命保護にもつながると思うので、天気予報の技術はやっぱりほしいですね。一応、天気読みも科学の分野で、基礎的なところは義務教育でやってるんですよね。頑張って思い出しますか……。

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