↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界賛歌~貧乏くじ聖女の異世界革命記~  作者: ArenLowvally
あまりにも、よくある話。
PR
68/86

第六十七話:異世界でのんびりとした休日を堪能します。

農業系のTV番組とか見てると、本当に企業努力ってすげぇなって思います。

農家の人たちがどれだけ創意工夫して野菜や家畜を育ててるか。

毎日の食卓に当たり前に乗ってることに感謝してもし切れないもんです。

……もうちょっと安くなってもよくない? とは思いますが。


あと、リアクションなんてものが実装されたんですね。

早速いろんなリアクションをしていただけててとても嬉しいです。

まだまだ続きますので、お付き合いいただければ幸いです。

がんばります。

方針と対応策が決まれば、順応は流石の早さです。

数日、様子を見ればカイとノアは問題なく勉強してくれるようになりました。

カイが反抗心で、ノアは好奇心でって違いはありますけれど。

やる気が出てくれたのでOKとします。

あとはこれが長く続いてくれたら文句はないんですけれど。

まぁ、その時にまた考えましょう。

朝食を食べ終えて、のんびりとしていればカイが首を傾げました。


「今日はおふぃす? 行かないのか?」

「お休みだから行かない。5日行って、2日休み。そんな毎日働いてたら人間、壊れちゃうよ」

「……そうなのか」


よくわかってない顔ですけれど、まぁ、これも習慣の違いでしょう。

何事もなく、でも何もないわけではない毎日だったわけですし。

労働日も休息日もなにもありゃしなかったわけですから。

さて、そうなると今日は何をしようかって話なんですけれど。

午後は予定があるんですよね。

神殿でラーシュ様たちからもらった千羽鶴のお焚き上げ。

午前中は何もないので、ヒマと言えばヒマです。


「いい天気だし、散歩しようか」


3つ目の鐘が聞こえて来たタイミングで提案します。

お出かけの準備をして、カイとノア、それからエルネストだけ連れて出ます。

侍女と執事ってハウスキーパー的なお仕事もあるんですよね。

なのでシルヴィアとブラッドはお仕事を優先してもらいます。

中庭まで出れば、春の日差し。

暖かい陽気です。

庭師の丁寧な仕事が反映されていて、庭には色とりどりの花が咲いています。


「みずでてる」

「噴水って言うの。そう言えば、城下町にはなかったね」

「貴族街の広場には置いてありますが、平民街にはありませんね。設置しても管理できませんから」

「なるほど、委託業者とかないのか。あと水通すための工事とか面倒って話かな。井戸代わりにされても困るって事情もあるか」


それこそ、スラム街の人間に風呂代わりにされたくもないでしょうし。

貴族街みたいに治安維持がちゃんとされているわけではない、自衛が基本の平民街では設置できないってことですね。

考えてる間にノアは噴水に近づいて、中を覗き込みました。

特に何かあるわけではありませんけれど。

金魚とかいたら面白いんですけれどね。


「つめたい」

「そりゃ、冷たい水が流れてるからね」

「これになんの意味があるんだよ」

「見目に楽しい」

「楽し……いのか? これ」


いまいちピンと来ないみたいです。

カイは首を傾げて噴水を眺めます。

意味もなく水が噴き出てるだけ、とも言えますからね。

でもここに何もなく広場だけあっても寂しいだけだと思います。

その辺の美的センスは生きてきた世界の違いですかね。

ノアは水遊びに夢中になりはじめました。

水面を叩いたり、ミヅキにかけようとしたりしてます。

ミヅキは付き合ってあげるみたいで、水に濡れてもそんなに気にしません。

今日のごはんはちょっといいもの用意してあげよう。


「あとは、富の象徴かな。こういうのを設置できるだけのお金があったり、管理する人間を雇えるって言う」

「……結局、貴族サマの道楽かよ」

「そうだね。まぁ、ここに設置してある噴水に関しては道楽っていうよりは、私達異邦人に対する詫びみたいなものかな」

「なんだそれ」

「誘拐されて来てるから、今回の異邦人」


そこまでは知らなかったみたいです。

カイは見事に返す言葉を失いました。

どう返すが迷ったように視線を泳がせて、どうにか言葉を絞り出します。


「だ、から、家名なしなんて、混ざってるのかよ」

「そうだよ。軽率なことしたよね」

「……あんたは、それでいいのかよ。異邦には、戻れないんだろ」

「未練がないとは言わないけれどね。この世界で生きるための力があるから」

「心から、好きだと思うものに、出会ったってことか?」

「そう」


ちゃんと覚えててくれてるみたいで、すごく嬉しくなります。

それだけ印象的な言葉になってくれてて、知りたいと思ってくれてる。

これがずっと続けばもっと嬉しいなって思います。


「ミヅキがいじわるする!」


不意にすっ飛んできたノアがカイに飛びつきました。

すっかりびしょ濡れになったミヅキが呆れた顔です。

やられた分をやり返したみたいですね。


「ノアだってミヅキにいじわるしてたじゃん」

「してないもん」

「遊んでただけだもんな」

「水かけ返されていじわるって言うんだから、いじわるのつもりだったんでしょ?」


ノアはほっぺを膨らませてカイの向こうに隠れちゃいました。

子どもの仕草だなぁって可笑しくなります。

ブルブルと身体を振るわせて水を弾き飛ばしたミヅキがこっちに来ました。

しゃがんで頭を撫でてあげれば、もっとってせがむみたいに押し付けてきます。


「ミヅキにごめんなさいってして」

「…………なんで」

「自分が嫌だって思うことなのに、ミヅキにしたでしょ。そしたらごめんなさいってするものだよ」

「む~…………」

「いいだろ、別に。ミヅキだってそこまで嫌がってねぇじゃん」


甘やかすなぁ……。

まぁ、そんなことをすれば奪われるばかりだったから、なんでしょうけれど。

嫌だと思うことをされても謝られたこともない。

完全な弱肉強食の世界なら、そんな良心持ち合わせる余裕なんであるわけもない。

でもそれを仕方ないで済ませるばかりでは何も変わりません。


「嫌なことしたのに、ごめんなさいしない子の方がお姉ちゃんは嫌だよ」


真っ直ぐに見つめ返して言います。

こういう言い方って良くないのかもしれないですけれど。

ちょっとだけ目が丸くなって、それからノアはミヅキを見下しました。


「…………ごめんなさい」

「みゃあ」


恐る恐る出て来た言葉に、ミヅキはいつもの呑気な声で返します。

機嫌も直ったみたいです。


「よくできました」


にこりと笑ってノアの頭を撫でてあげれば、それはそれで驚かれました。

謝って褒められるなんて想像もしなかったんでしょう。


「嫌だって思うことしたら、嫌だって思うこと返って来るでしょ?」

「…………うん」

「だから、今度から嫌だって思うことしちゃったら、ごめんなさいってしてね。ごめんなさいってしたら、嫌なこと返す人、フラーディアには居ないから」

「……うん」

「いい子だ」


カイとノアは不思議そうに顔を見合わせて、でもとりあえず受け入れるみたいです。

改めて歩き出して、ノアに機嫌を直してもらおうと歌い出します。

春の陽気のようなポップスです。

遊びみたいな音がたくさん散りばめられたバックサウンドが楽しい曲なんですけれど、その分、歌うのが難しいヤツです。

カラオケで真似して歌うだけならまぁ、素人でも歌えなくはないって感じですね。

ゆっくりと歌いながら歩いて、中庭を抜けて、厩舎の方へ足を向けます。

建物と馬の姿が見えるくらいのところまで来た頃にはノアも機嫌を直してくれました。

柵の向こうにいたウォーリアが私達が来たのに気付いて走って来ます。


「今日も元気そうだね」

「テリーもよく面倒をかけてくれていますから」

「そっか。だったら安心だね」


嬉しそうに頷いて、エルネストもウォーリアを撫でました。

ウォーリアは始めて見る顔の方に興味があるみたいです。

首を下げてカイとノアを見てます。

カイはいつも通りに警戒して、ノアは始めて見る大きな生き物がちょっと怖いみたいで、カイに張り付いてます。


「お馬さん、初めて見る?」

「うん」

「町中走ってるのは見るけど……、こんなでけーんだな」

「人を背中に乗せるからね」


連れて帰って来た時には夜でしたし、こんな間近に見ることもありませんでしたしね。

柵に飛び乗ったミヅキがウォーリアに声を掛けます。

それに反応してウォーリアはミヅキに鼻を近付けました。

仲良しアピールで、怖くないって教えてるみたいです。


「ひょっとしてこいつも魔獣なのか?」

「うん。シーキャットと同じ。グラニーって言う種類の馬だよ」

「これがグラニー、なのか」

「テリー、こわくないっていってたね」

「言ってたけど」


カイは基本的に動物は好きじゃないんですね。

ノアは興味が出たのか、ウォーリアを見上げます。

ミヅキが仲良くしてるのもあって、触ってみようと思ったみたいです。

もう一度鼻を近付けられて、恐る恐る手を伸ばしました。

ウォーリアは大人しくその手を受け入れます。


「こわくない!」


噛みつかれたりしたらどうしようとか思ってたみたいですね。

何もしてこないってわかるとすぐに飛びつきました。

単純でいいな、ノアは。

とりあえず何もされなかったから、カイもいいとするみたいです。

戯れてるのを眺めていれば、テリーがやって来ました。


「おはよう、お邪魔してるね」

「おはようございます。おもてなしも出来ませんが、ゆっくりしていってください」


にこやかに挨拶をして、テリーはノアの隣に膝をつきました。


「グラニー、怖くないだろう?」

「うん!」


聞いたテリーにノアは元気よく答えます。

テリーはこれでもかって嬉しそうです。

元魔獣って言うだけで嫌がった家族に囲まれてたから、余計に嬉しいんでしょう。

好きなことができるようになって本当に良かったと思います。

テリーは思い出したよう「ああ、そうだ」と声を零してから私に向き直ります。


「一つご相談があって。仕事でもないのにこんな話もどうかと思うのですが……」

「大丈夫だよ。どうしたの」

「ヤタクロウという魔獣がいて、これも改良種なんですが、シーキャットの補佐として使われるんです」

「烏?」

「はい。……ご存じ、というわけではないですよね」

「八咫烏って妖怪……魔獣みたいなものね、が異邦にいて、クロウって異邦の言葉でも烏のことだから」

「異邦にも魔獣がいるんですか?」

「物語の中でね」

「そうですか……」


ちょっと落胆したみたいです。

異邦にどんな生き物がいるかも興味あるみたいですね。

妖怪とか、モンスター的なものとか、教えてあげたら喜ぶかもしれません。

まぁ、それはまた今度の話として。


「ミヅキの補佐役として、そのヤタクロウを飼いたいってこと?」

「そうです。現時点でこんなに活躍してくれてますから、相棒が必要だろうとアーベルさんに相談していたんです。それで国立魔獣管理所がヤタクロウを卸してくれるという話になりまして。明日、引き取ることになりました」

「それって私も立ち会った方がいい感じ?」

「ミヅキの主人がアレン様なので、立ち会っていただけると助かります」

「わかった。じゃあ、明日またここに来ればいい?」

「はい。9の鐘が鳴る頃に連れて来てくれるそうです。すみません、こんな急に……。ぼくも昨日、戻って来てから話を聞いたものですから……」

「気にしないで。ミヅキのこと考えてくれてのことでしょ? だったら楽しみにしてる」

「ありがとうございます。では、明日の9の鐘が鳴る頃に、よろしくお願いします」


ホッとした様子でテリーは頷きました。

ミヅキの相棒。

八咫烏とはまた、日本的なものが出てきましたね。

三本の脚を持ってて、神の使いで、天皇を道案内したとか、そんな伝説があるんでしたっけ。

詳しいことは明日また、引き取る時にテリーに聞きましょうか。

楽しみなことが増えてちょっと嬉しいです。


「楽しみだね」


ミヅキに言えば、楽しみだって答えるように鳴きました。

どんな子が来るのかわからないですけれど、名前は考えておかないといけませんね。


「そんなに魔獣増やしてどうするんだよ」

「魔獣だから増やしてるわけじゃないけどね。いや、ヤタクロウに関しては魔獣だから増えることになったのか。まぁ、ともかく、増えたらまた楽しいよ、きっと」

「楽しけりゃ全部いいってもんじゃねぇだろ」

「いいものは全部楽しいの」

「わけわかんねぇ……」


お決まりになってきた台詞です。

それに笑って、ウォーリアとの触れ合いに満足した顔のノアに「楽しかった?」って聞きます。

これまた元気いっぱいに返事してくれて、テリーが嬉しそうにノアの頭を撫でました。

ウォーリアもノアと戯れるのに満足したみたいですね。

鼻を鳴らして私の方に首を伸ばしてきました。

ピコピコと耳が動いてます。


「アレン様の歌を聞きたいようですね」

「みたいだねぇ」


それなら、と頭の中で検索をかけて引っ張り出した曲を歌い出します。

今度は爽やかなサウンドの青春ソングです。

歌うと自然と身体を揺らしたくなっちゃう、楽しい曲なんですよね。

他にも数曲歌ってあげたら、ウォーリアも満足してくれたみたいです。

ブルブルと鼻を鳴らして、喜んでくれました。かわいい。

撫でてあげてたら、4つ目の鐘が聞こえます。

結構長い間、ここにいましたね。

そろそろお暇しましょう。

テリーとウォーリアに挨拶をして、厩舎を出ます。

少し歩いた先にある畑までやってきました。


「なんだここ」

「私たちが食べてるお野菜を作ってるところだよ」

「……あれも作ってるのか」


意外そう。

まぁ、そんなの知りようもない世界でしたからね。

ノアもよくわからないみたいで首を傾げています。


「触っちゃダメだよ。あっちは倉庫かな」

「作業場ですね。納屋は屋敷の方にあります。丁度逆側です」

「キッチンの近くってこと?」

「はい」


当然と言えば当然の話ですね。

ここで作ってるのは、異邦人のための野菜ですから。

プラスで屋敷で働く人たちの食料になるくらいで、他に降ろす理由はありません。

だったら、ここである程度の処理をしてそのまま納屋に運ぶものでしょう。

向こうで大勢が作業しています。

魔法を使って収穫するんですね。

それも当然っちゃ、当然か。


「なんの収穫だろう」

「この時期なら、キャーベラではないかと。旬ですから」

「キャベツかな。そういえば、今まで食卓になかったね。納屋に運ばれて来たら、いくらかブラッドにもらってきてもらおうか」

「たべるの?」

「うん。旬のお野菜って甘くて美味しいんだよ」

「ふうん?」


やっぱりよくわからないみたいです。

カイもノアもピンと来てない顔をしてます。

まぁ、食育もこれからですから。

ちょっとずつ教えてあげましょう。

近くまでやってくれば、作業員の方が不思議そうにこっちを見ました。

それに会釈すれば、戸惑った様子で返してきます。

いくらか話して、一人がこちらに来ました。

責任者の方ですかね。

初老のファーマーさんです。

それこそ、ファーマーって言われて思い描くような、あごひげを蓄えた優しそうな雰囲気のおじいさん。


「こんにちは。突然、来てしまってすみません」

「い、いえ……、ここは異邦の方がいらっしゃるような場所ではありませんが……」

「この子たちに見せてあげたくて。作業のお邪魔はしませんから、少し見学させていただけませんか?」

「は、はぁ……、ええ、もちろん」

「ありがとうございます。近くまで行ってもいいですか?」

「えっ。そんな、土で汚れてしまいますから……」

「それもまた一興でしょう。農園なんて、見る機会なくて、私も見て見たいんです」

「…………わかりました、どうぞ」


困った様子で頷いてくれました。

困らせるつもりはなかったんですけれど、ごり押ししないと追い返されちゃうのはそうなんですよね。

お礼を言いながら、おじいさんに連れられて農道に入ります。


「……本当にいいのかよ。おれたちは汚れんの慣れてるけど」

「私だってカイやノアくらいのころは土遊びも泥遊びもやってたよ」

「そういう、話なのか……?」


わけわかんねぇって、カイはいつもの台詞を言います。

それに笑いながら、作業員さんたちのところまでやってきました。

木箱の中には立派なキャベツが詰められていて、この時点でもう美味しそうです。


「わぁ! すごい! 美味しそうですね!」

「つちだらけ」

「そりゃ収穫したばかりだからね。ほら、上から見てごらん」


どうにか覗き込んだノアに言えば、エルネストが抱えてくれました。


「太陽の光でピカピカしてるでしょ」

「ほんとだ」

「光ってたら美味そうなのか?」

「それだけ新鮮ってことだからね。キャーベラは葉っぱが何重にも重なってる野菜で、それが詰まっていれば詰まってるほどしっかり締まってて美味しいんだよ」

「そんなの見てわかるのかよ」

「これだけハリがあるってことは、中身がしっかりしてるってことだから。触って大丈夫ですか?」

「あ、はい、どうぞ」


ファーマーさんは戸惑いながら頷いてくれます。

丹精込めて育てた野菜を褒められてちょっとは気をよくしてくれたみたいです。

お礼を言いながら、一番上にあった一つを手に取ります。

おっも……。


「ほら、カイ。持ってごらん」

「なんで……おっも?!」


手渡せば、ほぼ予想通りの反応をしました。

思ってた以上に重たくて、取り落としそうになったのを支えます。

目を丸くするカイは笑った私を見上げて困惑した顔をしました。


「……葉っぱが重なってるだけなんだろ?」

「何重にも、ぎっちりね」

「えぇ……?」


想像できないみたいです。

カイは不思議そうにキャベツの大玉を見下します。

ノアも気になるのか、エルネストに降ろしてもらって表面を叩いてます。


「切ったら断面見せてあげるよ。これ、このままもらっていっていいですか?」

「整えて差し上げます。おーい、先にこれを異邦の方に渡せるようにしてきてくれ」


子どもたちの反応に気をよくしたのか、ファーマーさんはあっさりとOKしてくれます。

少し離れたところで作業をしていた若い男の人が返事をして、作業場の方へ持って行きました。

今日はキャベツで色々作りますか。

お味噌汁に入れてもいいし、コールスローもいいですね。

あ、でもコーンがないか。

ロールキャベツとか好きだったんだよなぁ。

コンソメスープにするには、コンソメの作り方がわからないんですよね。

牛乳でミルクスープ風にして、チーズで味を付ければ食べられるかな。


「ミンチ肉ってあるかな」

「使う時に都度、作っているようです。ミヅキに伝言をお願いしましょうか」

「じゃあ、お願いしようかな。モミジとボタンだったら、2人はどっちの方が好き?」

「ぼたん!」

「……モミジ」

「じゃあ、両方で作ろうか」

「かしこまりました」


ちょっと呆れてエルネストは頷きました。

あんまり甘やかしても仕方ないとは私も思いますけれどね。

今はある程度のわがままは許容するべきだと思うんですよ。

無条件で許してもらえるって、本当に大事だと思います。特にカイは。


「よければ、他の野菜もご覧になりますか? どれもこれも収穫時期なので、すぐにお持ちになれますよ」

「本当ですか? じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうか」


嬉しいお誘いです。

案内されるままに、春野菜を見ていきます。

アスパラガスやカブやかぼちゃ、なんとごぼうまでありました。

何世代も昔の英雄様が山間部で見つけて持ち帰って来たそうです。

国のあらゆるところから食べられそうな野菜を見付けてきては、栽培できるように研究してた方だったとか。

日本人すげぇ。

食べ物に対する執念は流石です。

それがなんで今、この見た目だけが真面っていう図になってしまったのか……。

どっかでなんか、可笑しなものでも入り込んだんでしょうかね。

いくらか見て回らせてもらって、採れたて野菜をいくつか分けてもらっちゃいました。

普通に嬉しいです。


「おー、すごい、しっかりしてる」

「美味いのか?」

「ちょっと苦味はあるけれどね」


手に取ったアスパラガスを一本、そのまま曲げれば、パキッと音がして簡単に折れました。

おお、流石、収穫したてのアスパラガス。

そのままかぶり付けば、特有の苦みと甘味を感じました。

こんなに美味しいアスパラ初めて食べた……!

感動してる横で、めちゃくちゃぎょっとされてますね。


「やってみたかったんだよね、採りたてをそのまま食べるの」

「先に仰ってください……」

「えへへっ、ごめんごめん。エルネストも食べる?」

「いえ、遠慮します」


苦手なのかな、アスパラ。

いやそうな顔をされました。

代わりにノアが手を伸ばしてきたので、ちょっと折って渡してあげます。

残りをカイに渡してみれば、恐る恐る受け取りました。


「……にがい」

「美味い、か……?」

「まだわかんないかぁ」


わかりやすく苦い顔です。

まぁ、私も小学生くらいのころはアスパラとかピーマンとか苦手でしたからね。

強要するものではない。


「その内、美味しいって思えるようになるよ」


食べ残した分を取り上げて、こっちで食べます。

カイはちょっと悔しそうな顔をして、ノアも納得しない顔です。

馬鹿にされたって思ったんですかね。

こういうところ、子どもだなぁって思います。


「じゃあ、帰ってお昼ご飯作ろうか。採れたての春野菜でパスタかな」


カブを使って、和風にしましょう。

アスパラやごぼうよりは食べやすいはずですから。

って言っても、カブの扱いとかよくわかんないんですよね。

大根みたいな感じだと思えばいいんですかね。

上手くいかなかったら今度、図書室に行きましょうか。

あれだけの野菜があるなら、歴代の英雄や聖女が残したレシピ本の一つや二つ、あるでしょうから。

それがなんで継承されてないかはちょっと不思議ですが……。

3階の結界内に納められてたんですかね。

だから、権限のない下級貴族以下のシェフに上手く伝わらなかったとか。

ありそうだなぁ~。

この世界、よくわからないところで厳しいですし。

本当に料理教室とか、開いた方がいいんじゃないですかね。

あんまり塩辛いと生活習慣病とかになりますし。

屋敷のシェフの中に、いい感じに協力してくれそうな人、いてくれたりしませんかね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。