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異世界賛歌~貧乏くじ聖女の異世界革命記~  作者: ArenLowvally
あまりにも、よくある話。
5/79

第四話:異世界のお城を探検してみました。

文字数がブレブレでもうちょっと平均的に書けるようになりたいと思う今日この頃。

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

実際のお城ってどういう構造になってるんでしょうね。

全くわからないので想像10割でお届けします。


 さて、廊下に出ました。特にする事もありませんし、やはり探検に行くべきでしょうか。


「あの、お城の案内をお願いできますか?」


 そういえばずっと付いてきてくれていたメイドさんが一人いらっしゃいました。護衛の為なのでしょう、騎士様もいます。騎士様は流石に厨房には入って来ませんでしたが、メイドさんはずっと後ろで眺めていました。彼女にも何かしてあげればよかったです。


「畏まりました。お任せ下さい」

「お願いします。お二人のお名前は?」

「リア・フォン・オーヴェレームと申します」

「エルネスト・ローランです」


 どちらも北欧とかの方の名前でしょうかね。英語っぽくないですし。第一王子がアルフレッドで国王陛下がフィヨードルだから、この国の名づけにアメリカもロシアもドイツも関係ないのかもしれません。

 メイドさんは桃色の髪にモスグリーンの瞳。騎士様はブルーの髪にパープルの瞳。この世界の人はカラフルだから、特徴が覚えやすくていいな……。


「つかぬことをお伺いしますが、オーヴェレームさんは、貴族の方ですか?」

「はい、その通りでございます。オーヴェレーム侯爵家の次女です」

「そうなんですね。ローランさんは平民出身でいらっしゃるんですか?」

「はい、その通りです」

「なるほど。お答えいただきありがとうございます。一つ謎が解けました」


 ミドルネームのフォンは貴族ネームですね。王族がサー。平民は付かない。ファミリーネームが貴族と平民の違いではない世界観だから、ミドルネームが付くのでしょう。そう言えばラングハインさんもボンを名乗ってましたね。下級貴族か、特別な爵位なのか、どっちなんでしょう。図書館とかで調べたらわかるかな。


「アレン様、わたくしのことはリアとお呼びください」

「私もエルネストで十分です」

「あ、わかりました。では、リアさん、エルネストさん、今更ですが今日1日よろしくお願いします」


 お辞儀すれば、リアさんはカーテシーを、エルネストさんは折り目正しい礼を返してくれます。もっと早くにちゃんと挨拶をすれば良かったですね。料理のことで頭がいっぱいでした。明日から付いて下さる方々はもっとちゃんとしましょう。

 リアさんの案内で歩き出します。城の中はもちろん広く、沢山の方々が働いていました。メイドさんが掃除をしていたり、書類を持った方が何事か相談しながら廊下を歩いていたり、騎士様が警戒を走らせながら歩いていたり。聞くと本城では5000人以上の方が働いているのだとか。離宮まで含めるときっと、1万人を超えるのでしょう。そんなすごい場所を自由に歩けるなんて、凄く楽しいです。


「こちらは図書室となっております。城内にいる人間は基本出入り自由です。魔導書や聖典が収められていて、立ち入りが制限されている区画もあります」

「へぇ、明日にでも来てみようかな。本、好きなんです。読むのもなんですけれど、図書館でただ背表紙を眺めて回るのも好きなんですよ」

「では、明日の担当の侍女に伝えておきます」

「あ、はい。お願いします」


 淡々と言ったリアさん。メイドさんはあまりお喋りするものじゃないから、ですかね。それに今の仕事は、私を案内する事であってお喋りに付き合うことじゃありませんし。少し寂しいですが、仕方ないでしょう。


「こちらは執務室が並んでおります」

「皆さんお忙しそうですね」

「アルフレッド元第一王子が行った儀式の後始末に追われているのです」

「ああ、なるほど……」


 そう聞くとなんだか申し訳なく思ってしまいます。強制召喚されたのだから、私達に非はありませんが、遠回しに私達が来たから忙しいのだと言われているようです。そう感じるのは、自意識過剰でしょうか。ピリピリとした空気でも、私達が通りがかると皆さん、出来る限り笑顔で会釈してくれます。異邦からの招待客という建前はかなり効力が強いようです。


「英雄や、聖女となった方はどのようなお仕事をされるのですか?」

「男性は戦場に赴き、魔物の討伐を行う方が殆どです。女性は国に魔物が入らないよう結界を張ったり、教会にて怪我人や病人を癒すことが多いですね」

「なるほど、私達も英雄や聖女になったら、そういった仕事を任せられるのですね」

「はい。現在、シャングリラ王国には二人の英雄様と一人の聖女様がいらっしゃいます。どなたも妙齢で、世代交代が必要なお年です」

「そうですか。……一度お会いしてみたいです」


 そうすれば、私の心も決まるかもしれません。戦場に赴くのは男の仕事、となっているのは今だけかもしれませんし。癒し手として、多くの人が思い描く聖女像には私は程遠いでしょう。異邦から来たというだけの特別扱いがいつまで続くかもわかりません。それになると口にするのは簡単ですが、やるとなると話は別。先達の言葉があれば……、いえ、これは甘えですね。誰かの影響で決めた、という言い訳を探しているに過ぎません。


「機会はあるでしょう」

「ええ、そう願います」


 相変わらず淡々と言うリアさんに、私は頷きました。執務室が並んだ区画から少し行くと、また雰囲気が変わります。


「ここから先は、魔法士団の区画です。魔物や魔法、魔石、薬草などの研究も行っています。窓の外に見えるあの建物は実演場として使われており、魔法士が訓練を行っております」

「魔法かぁ。魔法の勉強をするときにお世話になるんですか?」

「魔法士団から人員の派遣は行われますが、研究機関に関われるわけではありません。魔法の訓練で実演場を使う程度です」

「なるほど」


 その日が楽しみ、と言うと聖女になる事を決めていると思われますかね。なると決めた訳でも無いのに魔法の訓練なんてさせて貰えないでしょう。生活に困らない知恵、程度には教えて貰えるかもしれませんが。

 魔法士団の使っている区画から、中庭に出ました。薬草の研究も行っているので、専用に畑を持っているそうです。その為、中庭に出る戸が近くにあるのだとか。庭には色とりどりの花が植えられ、見るも鮮やかに咲き誇っていました。


「わぁ! すごい、奇麗ですね!」

「第一庭園から第四庭園まであり、ここは第三庭園です。殆どは魔法士団が使う薬草です」

「薬草? へぇ~、ハーブみたいなものかな」


 ラベンダーやガーベラみたいな形の花や、スズランやホオズキみたいな花まで、形も種類も様々です。見ているだけで楽しい光景。こんな場所が後三か所もあるなんてすごいです。流石お城。


「第一庭園は王妃様の趣味で作られたものであり、そちらはローズで統一されています。第二庭園は王子や王女の遊び場として作られた場所で、生け垣の迷路となっております。第四庭園は農業を目的に作られたものです」

「それぞれの庭園で趣が違うんですね。他の庭園も見てみたいなぁ」

「残念ながら、異邦の方と言えど侵入が許されているのはこの第三庭園のみです」

「そうなんですね。お互いの安全の為かな、仕方ないですね」


 王妃様の趣味の薔薇園が見れないのは残念ですが、それも仕方ないことなのでしょう。内政の衝突などを防ぐための措置と考えるなら当然。王家の方との接点が増えれば、英雄や聖女が王子や王女と婚姻を結ぶ可能性が出てきます。ですがぽっと出の異世界人との結婚なんて公爵や侯爵などの上級貴族が黙っていないでしょう。政治的な事を考える上で結婚は大きなカードですから。それを横から取られれば無駄な争いを生みます。王家と異邦人はあくまでビジネスパートナーとすることで、そういった争いごとを減らしているのでしょうね。異邦人は特別でも、しっかりとした線引きをしていらっしゃる。


「でも、この庭園も十分素敵ですから、ここを眺めるので私には十分です」

「そう仰っていただけると幸いです」


 うん、仕事熱心。私自身に関心を寄せてくれないのは仕方ないことです。それとも嫌なのかな、異邦人の世話係は。……嫌だろうな、異邦人の世話係は。常識が通じないし、マナーも酷いし、お客様扱いに胡坐を掻いてよくわからない我儘は言うし、面倒極まりないに決まっている。


「暫く庭園を眺めていてもいいですか?」

「はい、構いません。何かございましたら何なりとお申し付けください」

「ありがとうございます」


 リアさんは少し離れて行きます。それに伴ってエルネストさんも離れました。どうやら、私の好きなように歩き回っていいということらしいです。気遣いが有難いですが、やっぱり少し寂しいですね。気さくにお話がしたいなぁ。この世界について、この国について、この場所について、沢山話がしたい。そう考えるのは我儘ですかね。私は社交的な方ではありませんし、仕方ありませんね。

 とりあえず今は、この素敵なお庭を眺めて回りましょう。天気もいい事ですし、リアさんとエルネストさん以外は誰もいませんし。鼻歌でも歌いながら見て回っても、怒られないですかね。これでも私、歌うのは大好きなんです。技術についてはとやかく言わないでください。カラオケの精密採点では平均80点台です。



—————————————




(Side:E.Laurant)



 楽しそうな顔をしながら歩く彼女は、気分が上がっているのか歌を歌い始めた。耳に馴染まない音の羅列は、それでも聞いていて心地が良い。技術はともかくとして、歌う事が好きなのだろう。隣に控える侍女はそんな彼女を冷めた目で見ている。


「君は彼女のこと、どう思う?」

「わたくしに異邦の方の能力を察する力はありません」

「能力じゃなくて、彼女自身について」

「特に評価することはありません」

「他の異邦の方が良かった?」

「そうは言いません。彼女も異邦からいらした方で在る事には違いありませんから」


 だとしたら、そんなに毛嫌いした目をしなくていいと思うのだけれど。まぁ、押し付けられるようにして回って来た役目だ。今日一日過ぎれば他の人と交代すると言っても、その事実は変わらない。


 異邦の方に仕える事は、この世界では他に類を見ない程に名誉あることだ。


 それでも、人の好き嫌いはある。特に、上流貴族のお嬢様やお坊ちゃんは、できるだけ有能な方に仕え、その伝でより高位の家との繋がり、果ては周辺諸国の有力貴族との繋がりを持とうと画策している。この侍女も似たようなものなのだろう。アルフレッド元第一王子の強行によって行われた儀式によって、短い時間で急遽集められた専属侍女・騎士の候補が俺達。事前情報もなく、今後仕える事になるかもしれない相手なら、一番の有力株に媚びを売っておこうという思考は必然だろう。

 今回の場合は、ミウ・ハヤマ様とソウジ・モトマチ様。

 ミウ様は見目麗しく、明るく快活な印象だ。魔力については異邦人なのだから問題ない。性格に難がありそうだ、というのは俺個人の意見で、侍女の多くはお洒落な彼女に仕えたいと思っているらしい。人目を引く容姿は確かに外交で大きな切り札になる事もある。目に留まれば、それだけ多くのチャンスを引き寄せるものだ。

 ソウジ様は騎士達がこぞって目を付けている。あの恵まれた体格は、英雄となれば間違いなく立派な御旗になる。そんな方の隣で、後ろで戦うとなれば間違いなくお零れに預かれる。騎士団の中でもそれなりな地位を確保できるし、国からも一目置かれる。一代限りの騎士爵も次の代までは引き継げるだろう。


「最初に謁見の間で彼女達を見た時、誰に仕えたいと思った?」

「それを貴方に話して何になるというのですか?」

「今後の参考にしようと思って」

「一体どんな参考になるかは知りませんが……。アカリ・ヨシダ様です」

「えぇっと、あの気弱そうな子か」


 庇護欲か、それとも、操り易そうだからか。彼女は二番人気って言ったところかな。騎士の方でも彼女に仕えたいという声は幾つか聞いた覚えがある。

 いまいち人気が振るわなかったけれど、妥協点として皆了承したのがハヤト・トヨサキ様とナルミ・カドワキ様。特筆するべき点は無かったけれど、賢そうということで執事達の意見は一致していた。ハヤト様は彼等の中心人物のようだったし、国王陛下とのやり取りを率先して行っていた。ナルミ様は特に此れといった特徴はなかったけれど、異邦人であることに変わりはない。他の人に指名が貰えなさそうなら狙う、といった感じだったかな。本人には失礼だろうけれど。

 今、薬草畑を駆けまわっている彼女だけ、誰も目に留めなかった。腰を過ぎるくらいの長い黒髪はこの国に珍しいけれど、手入れを怠っているのが一目でわかる傷んだ毛先をしている。平凡な容姿。地味な服装。化粧もしていない。見目に気を遣っているわけではない。そこに努力を割かない。貴族女性やそれに仕える侍女から見たら、それだけで失望もの。

 そしてなによりこの世界に耳馴染みのいい平凡な名前。アレンと呼んでくれと、彼女は言った。家名は名乗らなかった。それがまた印象を悪い物にしているのだろう。家名がない、即ち、浮浪児。今頃、他の異邦人には2,3人ずつ侍女と騎士が付いているだろうに。彼女には俺とこの侍女だけだ。

 きっと、この侍女も直ぐに彼女の元から去るのだろう。そうじゃなきゃ、もっと彼女に好かれようとするはずだ。だって、異邦の方が誰であろうと、仕えるのは最高の名誉なのだから。それでも彼女に仕えようという気がないのは、悪印象が強い証拠だろう。

 可愛そうに、と思う。礼儀正しく、誰にでもすぐに笑顔で礼を言って、あんなに明るい顔で笑うのに。他の異邦人は、もっといい人なのだろうか。まだ、半日だ。評価するには早い。今はそう思う事にしよう。彼女の歌声は、随分と澄んでいた。




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