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異世界賛歌~貧乏くじ聖女の異世界革命記~  作者: ArenLowvally
あまりにも、よくある話。
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40/86

第三十九話:異世界でオフィスに名前を付けます。

名付けって本当に重要だと思うんです。

ただのバケモノが、名前が付いた瞬間に神さまになったりもするんですよ。

色んな物語を読んでいると、名付けや名前に重要な意味があるものもありますけれど、現実でもそうなんだなぁって思います。


 午前は部署の本格活動に向けた準備、午後はマナー講座とそれなりに忙しく動いて、金曜日です。オフィスには所属してるメリッサ、リリー、カタリナだけじゃなく、シルヴィア、エルネスト、ブラッドもいます。驚きの女性率。いや、ある意味当然の比率なのかもしれませんけれど。オタク気質で凝り性があって、どんどん新しいものを生み出す熱量は女性の方が高かったりしますからね。でも職人って言われる人は男性の方が多いのがなんとも不思議な話だと思います。結局は社会に認められるには男性の方が強いってことなんでしょう。まぁ、そんなことはさておいて。


「このオフィスではここにいる全員に発言権があることを先に明言しておくから、思ったことはどんどん言ってっていいからね」


 まずは最初に宣誓しておきます。じゃなかったらシルヴィアたちも呼んだ意味がないですしね。それに首を傾げつつ頷いた皆に、私は笑いかけます。


「それじゃあ本題に入ろうか。今日はね、ここに居る全員で話し合いたい議題があるの」

「議題、ですか?」

「そう。話し合いっていうか、私の考えに対してみんながどう思うか聞きたいって感じなんだけどね。一つは部署全体の活動方針。もう一つはこの部署の名前。『アレンの部署』って言い方じゃなんか味気ないっていうか、素っ気ないなぁって思ってたから、通称みたいなものが欲しいんだ。まぁ、書類用の名称はあると思うけれど」

「正式名称は『シャングリラ王国総務省異邦管理局特別機関聖女部門第一対策室』」

「そんなに長い名称あったんだ……」


 対策室って、なんの対策なんでしょうね……。新しく立ち上げる際に何をするかわからないから、適当な名前にしただけなんでしょうけれど。


「うん。やっぱり通称作ろう。知らない人が聞いただけで、何をしているかイメージできるような、単純な通称」

「あの、アレン様、よろしいですか?」

「発言権はあるって最初に言った通りだからもちろんいいよ。なに、エルネスト」

「この部署の通称を決めるというのは素晴らしいアイディアだとは思いますが、私とシルヴィア、それからブラッドは部署の所属ではありません。なのでこの会議に参加していいものなのでしょうか?」

「いいから呼んでるし、今朝、清一郎さんに3人の名前もこの部署に入れてもらうよう頼んだ」

「えっ、どうしてですか?」

「シルヴィアとエルネスト、それからブラッドは最初の私の味方だから」


 見事に目を丸くされました。まぁ、シルヴィアたちにとっては突然の話ですしね。先に意思確認しておくべきだったんでしょうけれど、味方になってくれるっていうのは最初に約束してくれましたから。


「そこも含めて説明するね」


 仕切り直せば、一葉に姿勢を正しました。そんなに緊張しなくていいんですけれど。まぁ、ちゃんと聞いてるって態度でも示してくれてるってことでしょう。小さく深呼吸してから話し始めます。


「私はこの場所を、私の味方になってくれる人の為の場所にしたいなぁって思ったの。好きなことを好きなだけ突き詰めていくための研究だったり、勉強だったり、共有ができる場所。そして、それぞれが決めた最終目標……夢を叶える為の場所。シルヴィアたちも私の味方なんだから、ここでしたいことをする権利があるって思ったの。メリッサたちが自分の興味があって、好きだって思うことを研究したり勉強するみたいに、シルヴィアたちも日々の仕事のアップデートをするための勉強だったり、仕事の為に諦めたことに改めて挑戦したり、新しく見つけたりできたら、いいなって思うんだ。私は、私が面白い、楽しいって思ったことを共有できるのが好きだから。家族とそうやって毎日笑ってて、一緒に異邦から来た仲間たちもそうやって集まったから。この世界で集まってくれた味方の人たちにも、同じように楽しいことを共有したいんだ」


 一つ、区切ります。上手く伝わってるかな。伝わってたらいいな。


「だからね、最初に味方になってくれた3人も、この部署のメンバーとして名前を入れたくなったの。勝手に決めちゃってごめんね」

「いえ! アレン様が謝るようなことはないです! むしろ、わたしは嬉しいです!」

「私も、アレン様にそんなに考えていただけていたなんて感無量の思いです」

「まぁ、そうですね……。アレン様がいいって言ったのは僕なので、それくらいのことはとやかく言うほどのことではありません」

「あはは、ありがとう。そういうわけで、メリッサたちも、仲良くしてくれる?」

「もちろんですわ。侍女や執事、護衛騎士なんかと一緒に仕事する機会なんてありませんもの」

「この3人は前に資料集めも手伝ってくれた。すごく優秀なのは知ってる。それに誠実。信頼できるから、わたしも歓迎する」

「アレン様が選んだ方なら、私も、安心して一緒に仕事ができると思います。それにシルヴィアさんはドレスの仕立て直しで、一緒に仕事してくれた方ですから。とても嬉しいです」

「よかった。カタリナには3人分の制服もお願いすることになるけどいい?」

「はい、もちろんです! それぞれのお仕事に合わせて、デザインを一部変更したりしてもいいですか?」

「もちろん。むしろそういうところまでこだわってくれたら嬉しいよ。よろしくね」

「任せてください!」

「ありがとう。それじゃあ、まずはこの7人でやって行こうか」

「「「「はい!!!!」」」」


 いい返事です。大丈夫っていう確信はありましたけれど、ちゃんと頷いてくれるのを見るとやっぱり安心ですね。


「そういうわけで、まずは改めて活動方針について話しておくね」


 メリッサとリリーには話しましたけれど、他のみんなはいませんでしたからね。姿勢を正した6人はいい表情です。期待がその目に宿ってるのがわかります。そんなに期待されても仕方ないんですけれどね、私は基本的に出資するだけで、どこまで突き詰められるのかは各々次第って感じですから。


「基本は各々がやりたいことをやる。メリッサは薬草研究、リリーは歌による魔法操作の研究、カタリナは衣装デザインと作成。シルヴィアたちも、ここでやりたいって思うことがあれば教えてね。全面的に協力するから。もし、今のところないよって言うなら、新しく探すのもありだから。何気ない会話からやりたいことが見つかるかもしれないしね。だからって無理に探すこともないからね、みんなが心から好きだって思うことを、私は応援したいから」


 やってみなさい、って言うことがプレッシャーになることもありますからね。慌てて言葉を重ねれば、わかってるとばかりに頷かれました。よかった、私の言うことをネガティブに捉える人がいなくて。ホッとしながら次の話に進みます。


「で、そのやりたいことに対して、最終目標を決めてほしいって思う。将来的にそのやりたいことをどこまで突き詰めるか、どういうものにしたいのか、どう使いたいのか。まぁ、有り体に言えば将来の夢、かな。それはきっと、自分がどう在りたいかにいも通じるものだと思うから、紙か何かに書いて、額にでも入れて飾っておこう。初心忘れるべからず、ってことで」


 額に入れる必要はないかもしれませんけれど。でも、みんなが大切にしたいと思う夢なら、それくらいしたいです。


「それから、このオフィスではみんなが対等。身分の差とか、職種の違いの上下はあれど、心から好きなことに全力で取り組んでることには違いない。それはお互いに尊重してほしいな。そのためにも、挨拶と感謝の言葉は忘れないようにしたい。他にも、考えに詰まった時やスランプに陥ったにはすぐに声を上げてほしい。分野が違うから、専門的なアドバイスはできなくても、息抜きくらいは付き合えるはずでしょ? ひょっとしたら、なんてことない会話が突破口になるかもしれないし。あと、私は楽しいこととか、面白いこととかあったらもう他の邪魔とか考えないで話しかけちゃうから、みんなも同じように遠慮せず話題振って。よっぽど集中しなきゃいけない作業の時は流石に空気読むから、そこは安心して。でもそういうことがない限り、楽しいこととか、面白いことはどんどん共有していこう」


 どうしようもなく超えられない段差はあれど、それが障害にはなって欲しくない。そう思うのはたぶん、この身分制度の世界ではワガママでしょう。ここに居る誰よりも高い身分を持つからこそ言える、平等性だとは思います。でも、折角なら楽しいことは共有したい。どんな肩書を持とうが、どんな人間にも心というものがあるんですから。


「私が考えてることは以上だけれど、何か意見はある?」

「特にありませんわ」


 真っ先に応えたのはメリッサです。どうやら、総意みたいです。全面肯定されても困るんですけれど……。


「本当に、何もないの? なんか、もうちょっとこう、上下関係に厳しい方がいいとか、もっと自由にしたいとか」

「ない。むしろわたしたちが考えてた以上に、アレン様はわたしたちのこと考えてくれてた」

「使用人でしかないわたしたちにまでこんなに気遣っていただいたのに、要望を出すなんて畏れ多いです!」

「変に身分に関係なく平等に、といわれるよりはずっといいです。ちゃんと公平である。それだけで僕たちは十分です」


 割と当たり前のことしか言わなかったと思うんですけれど。でも厳格な身分制度の中で生きてると、思ってる以上に縛りがキツんでしょうかね。平等と公平は違う。身分制度だと公平とは言い難い。その中でどうやったら公平にできるかって考えた甲斐は、あったってこと、かな。あんまり信用され過ぎてるとちょっと、責任感で死にそうになるんですけれど……。でもこの公平が保たれるかはみんなの協力にかかってますし。ここに居るみんなはそれをちゃんとわかってる。なら、私が心配することはない、って思っていいですかね。


「ありがとう、みんな」


 笑いかければ、いい返事。照れ臭いけれど嬉しいですね。方針というかルールというか、なんかそういうのはこれで決定みたいです。


「じゃあ次は、このオフィスの名前というか、部署の通称を決めようか」

「オフィス、というのは通称ではないのですか?」


 恐る恐るカタリナが聞いてきます。部屋っていうのも味気ないなって思ったから勝手にオフィスって呼んでましたけれど。この世界だとオフィスに該当する言葉ってないんですね。確かにオフィスって現代的な事務所というか、そんなイメージが強いし。


「異邦で『事務所』って意味の言葉なんだ。ちょっとカッコよくない?」

「普通に事務所と言えばいいと思います」

「特別感がある。わたしは好き」


 ブラッドの呆れた言い方に、リリーが食い気味に反論しました。ブラッドは一瞬、言い返そうとしますが、年下には強く出られないのか、立場的な問題を気にしたのか結局口を噤みました。勝ったと言わんばかりにリリーは「オフィス、いい」と繰り返します。


「そうね、ここは事務所であると同時に研究室でもあり、勉強部屋でもあり、作業部屋でもあるのだから、呼び方は統一されていた方がいいと思いますわ」

「確かに、皆さんこの部屋の使用目的は違いますね。人が増えた時にまた違う使い方が増えるかもしれませんし」

「じゃあ、この場所そのものは『オフィス』って呼ぼうか」


 メリッサとエルネストがリリーの肩を持ちます。もっともらしい理由が付けば納得できるのか、反論は上がりません。みんなが頷いたのを確認して、本題に戻ります。


「じゃあ、好きにアイディアを出して。このオフィスはみんなの場所だから、これに関しては考えてこなかったんだ」

「アタシたち全員で考えることに意味がある、ということですわね。これは気合を入れて考えないとなりませんね」


 ワクワクしたようにメリッサが言います。他のみんなも表情は明るいですが、すぐに思案顔になりました。少し考えるように沈黙がやってきて、でもすぐに会話は始まります。


「ここにいる全員に相応しい名前を考える……。とても難しいですね」

「ここでやること、みんな違う。統一してるのは、みんな好きなことをしてることだけ」

「アレン様について行きたいと思ったのも共通しているのでは?」

「最初はアレン様の歌を研究するための部署になる予定だったのよね。なら、そこは外せないのではなくて?」

「それに関係なくカタリナがいる」

「わ、私のことはお気になさらずっ! ドレスを気に入ってくださったアレン様のお役に立ちたいだけですから!」

「そんなわけにいきませんよ、カタリナ様。アレン様が言ったでしょう、ここはみんなの場所だと」

「そうですよ! 誰か一人でも弾いちゃったらそれこそアレン様が悲しみます」

「そ、そう、ですね……」

「トマス嬢は何か意見はありますか?」

「私ですかっ? あ、あの、えっと……」

「ゆっくりで大丈夫よ、カタリナさん」

「あ、ありがとうございます……。私、アレン様には、星空が似合うと思ってて……」

「だからお披露目用のドレス、夜空みたいだった?」

「は、はい。ブティックの方では、夜遅くまで仕事することもあったので……。でも窓の外の星空を見たら、頑張ろうって力を貰えたので、アレン様は、そういう人だなって……」

「日が落ちてからの労働は法律でも禁止されているはず……。騎士団でもあるまいに」

「ご、ごめんなさい」

「いえ、カタリナ嬢に言ってるわけではなく」

「下級貴族や平民を使い叩く貴族は少なくないわ。見回っていても、建物の中までは覗かないでしょうから、法があっても見つからないようにやるものなのよ。……っと、話が逸れてしまったわね。カタリナさんの意見、とても素敵だと思うわ」

「わたしもそう思います」

「きょ、恐縮です……」

「わたしもいいと思う。でも『星』を名前に入れると、うるさく言われそう。特に教会」

「異邦言語ならバレない……わけもないですよね」

「あの……、そこまで私に寄ってなくていいんだよ……?」

「「「「「「アレン様の部署ですから」」」」」」


 見事に全員がハモりました。そ、そうかぁ……。なんて言うか、そこまで尊敬というか敬愛というか……、自分で言ってて恥ずかしいですけれど……、慕ってくれてるんだなぁって実感します。めちゃめちゃに恥ずかしいけれど……。みんな、真剣に通称を考えてくれてるのは確かですしね……。これだけはみんなにお任せしたいと思ってたのでいいと言えばいいんですが。話はどんどん進んでいきますけれど、どう頑張っても私を象徴として名前を決めたい見たいです。ド直球な感じに称えてくる名前だけはやめてほしい。恥ずかしすぎる。


「アレン様は、最終目標ある?」


 不意にリリーに聞かれて我に返ります。色んな候補が書き散らされた紙が、いつの間にやら机中に広がっています。現実逃避している間にも、みんなはちゃんと考えてくれたみたいです。ここは誠実に答えるべき、ですよね。適当に応えたらそれこそ部署名が後悔の塊になりそうです。


「最終目標は実はなくて、でも、夢ならある」

「夢ですか?」

「うん。空を飛んでみたいの」


 見事に目を丸くされました。天体が神の象徴とされている世界で、それはご法度でしょう。空は神の領域で、人間が侵してはならない場所なのは、スヴァンテ様と初めてお話しした時に知ってます。それでも、魔法が使えるなら憧れるじゃないですか。箒に乗って空を飛ぶ魔法少女。


「異邦には魔法はない。でも、魔法は物語にあふれてる。そんな溢れんばかりのいくつもの世界では、魔法で空を飛ぶなんて珍しくない。異邦には空を飛ぶ乗り物があって、それで世界中どこでも行ける。でもやっぱり、魔法が実際にあるなら、小さい頃の自分の憧れを、叶えてみたいなって」


 魔法少女がその魔法の力を使って、たくさんの人を幸せにする。たくさんの人を助けて、救って回る。もちろん、私だって好きでしたよ。日曜の朝と平日のゴールデンタイムは楽しみだったんですから。魔法アイテムのおもちゃを買ってもらったりもしました。その憧れの気持ちは、今でも忘れてません。だからずっとサブカルが好きなわけですし。それを実際に為せる力があるのなら、やらなきゃ損でしょう。


「素敵なお話ですわ」

「実際にできるかどうかはともかくとして、悪くない話だと思います」

「どうしてそう一言余計なんだ……。とても素晴らしい夢だと思います」

「私も、すごく素敵なことだと思います」

「空を飛ぶなんて、現実では難しい。でも、できたら面白そう」

「きっとアレン様なら、スーノ様もルーノ様も、四星神様も許してくれますよ!」

「あはは、ありがとう」


 話す人を間違えたらきっと批難囂々なんでしょうけれど。みんなはお世辞でもなく、頷いてくれます。褒めすぎだとは思いますけれど……。常識を常識と認識しつつ、そこから外れたものを常識じゃないと一方的に切り捨てない。だからといって新しいものだと飛びつかず、冷静にそれの良し悪しを見極めることもできる。いい人が揃ったものだと自分で感心します。家名なしのフィルター、めちゃめちゃ目が細かいみたいですね。

 私の話がまた何かヒントになったのか、みんなあーでもない、こーでもないと話し合いを始めます。貴族と平民という大きな隔たりがあって、成人と未成年という大きな差があって、人を使う側と使われる側という大きな違いがあって。でもみんなが対等に、互いを尊重することを忘れずにそれぞれの目線から意見を言い合ってる。その人がその人らしく在れば、身分の差も互いの立場も関係なく対等でいても問題ない。この1週間で思い描いていた理想が、既にそこにあります。それが本当に、心から嬉しいって思いますね。

 これが当たり前にできたはずの異邦では、なんでできなかったんだろうって今更思います。こういうことがしたくて集まったはずだったのに。


「アレン様、どうかされましたか?」


 話し合いに夢中になってたはずなのに、シルヴィアが心配そうに聞いてきました。そんなこと聞かれるような顔してたかな。一人気付けば、他のみんなも同様に私の様子を伺って来ます。笑顔で首を振りました。


「どうもしないよ。みんなが楽しそうで嬉しいなって思ってたの」

「……そう、ですか。わたしたちも、こうして対等に意見を言い合えるの、とても楽しいです」

「だったらよかった。部署の名前、決まりそう?」

「ある程度までは候補を絞りましたわ。最後はやはり、アレン様に決めて頂くのがよいと決まりましたの」

「ここの責任者は私だしね。最終決定権は私にあるか」


 何だか心配させてしまったみたいですが、何事もなく流してくれそうなので甘えます。差し出された紙を受け取って見れば、3つの名前が並んでいます。造語なのか、自動翻訳が利いてません。読み方は教えてくれるみたいです。


「それぞれ、説明お願いできる? まずはこの一番上の『シャンタール』は?」

「アレン様といえば歌ですから。それと、カタリナさんが言ったように太陽や月ではなく星空のような方、というイメージから『歌と星』の意味で作った言葉ですわ。アタシたちの一番オススメですの」


 ……わー、すっごいいい笑顔だー。いや、無理無理。却下。これを私は恥ずかし気もなく使える気はしない。っていうか、私だけの部署じゃないって最初に言ったよね?! 直接褒め称える形じゃなかったら許すと思われたか……。


「……次の『ロンギニィ』は?」

「『始まり』と『憧れ』を組み合わせた言葉。ここはわたしたちにとって、新しい始まりの場所だから。あと、アレン様が言った、小さい頃の憧れを叶えたいって言葉が、よかった。だから、組み合わせた」


 直訳すると「憧れの始まり」みたいな感じですかね。いいかもって思ったんですけれど字面がちょっと、好きじゃないなぁ……。意味合いはすごく好きなんですけれど、これも却下かな。やっぱり字面ってすごく大事だと思うんですよ。扉に看板を掲げるなら、一番最初に目に入るじゃないですか。この字面が並んでたらちょっと、何て言うか、強すぎる感じがするんですよ。あと音がロンギヌスみたいで嫌です。ファンタジー系のゲームとかでよく出てきますけれど、大元の伝承調べておぉ……、ってなったんですよね。血生臭いのは旧い文献の方が多いですよねぇ……。


「最後の『フラーディ』は?」

「『空を飛ぶのが夢』と仰っていたので、そのまま、組み合わせてみました。空を飛ぶなんて、考えるだけで教会から罰が下されそうなんですけれど……。でも、できたら、すごく素敵だなって、思ったんです。アレン様は星空みたいな人で、私達も、そこに飛んでいけたら、星の一つにくらい、手が届くかなって」


 可能性は星の数ほどある、とはよく言いますけれど。こっちにも似たような言い回しがあるんでしょうか。『空』って単語は入っていないようなので、『飛ぶ』と『夢』の造語ですね。『夢に飛ぶ』。3つの中ではこれが一番いい感じです。でもちょっと物足りないな。


「よし」


 私は新しい紙に決定した名前を書き込みます。ワクワクとオノマトペが聞こえそうな表情の6人に、私は笑います。


「この部署の名前は『夢に飛ぶ人』を意味する造語、『フラーディア』にしようと思う。どうかな」

「もちろん、異存はありませんわ」


 本当に最終決定権は全部委ねてくれたみたいですね。メリッサが答えて、他のみんなも頷きます。


「ここは夢に飛ぶ人が集まる場所。フラーディアのオフィス。みんなが夢を叶えられるよう、私も出来る限りの支援をするね」


 笑顔で言えば、みんなも満面の笑みです。フラーディア。私と、私の味方になってくれる人達の居場所。特別な場所であることには違いありませんでしたけれど、名前が付くともっと大切にしたいって思えますね。名付けって大事だなぁ。すごく嬉しくなって、名前が書かれただけの紙を眺めるだけでも顔が緩んじゃいます。たくさん、楽しいことをして、面白いことを見付けたいです。

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