表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/23

21話

「ここであっているよな?」


 俺はスマホの地図アプリを頼りにテレビ局にやってきた。巨大なビルはずっと見上げていると首が痛くなる。それとこのなんとも言えない謎の圧迫感に押しつぶされそうだ。


「君が南秋斗(みなみあきと)君だよね?」


 ビルの前で突っ立っていると、小太りの狸のような男がやって来た。


「はいそうです」


「ほら、そんな所にいないで早く中に入りたまえ」


 狸男に招かれテレビ局に入ってみると、中は冷房が完備されており、外の唸るような暑さから解放された。


「紹介が遅れたね。私はここのディレクターをしていてね、ちなみに君を推薦したのも私なんだよ」


 狸男は恩着せがましい言い方で俺をチラッと見てくる。イコから聞いた話だとこの人は今回の放送が初のディレクターらしい。正確にはそうなるようにイコが根回しをしたようだが……


「すみませんちょっとよろしいですか?スポンサーの方がお見えです」


 ひょろりとしたスタッフが俺たちの所にやってきた。ディレクターが狸なら、この人は狐かな?


「そうかご苦労、すぐに行く」


 太った狸男はズカズカと我が物顔で廊下を歩き奥の方に消えていった。


「君が南秋斗君だよね?すみませんね、あいつ今回初めてディレクターを任されたせいで少し天狗になってまして……」


「気にしないでください。知っていたので」


「やっぱり何でもお見通しなんですね、実を言うと以前僕もお悩み相談をしたのですが、無事交渉が成功しました。君のおかげです。ありがとうございました」


「僕は何もしていませんよ」


「そんなことありませんよ、全て南さんのおかげです」


 ひょろりとした狐のような男は俺にお礼を述べると控室まで案内してくれた。


「それでは時間になったらまたお呼びしますのでしばらくお待ちください」


 案内された楽屋はとても豪華だった。ヘヤーセット用の巨大な鏡やスタジオの様子を見る専用のテレビ、そして机の上に置かれた大量のお菓子や雑誌。俺の部屋より断然広い。


「マスター、よろしいですか?」


 カバンにしまってあるパソコンからイコの声が聞こえてきた。


「どうしたイコ?」


 俺は画面を開き、周辺に誰もいないことを確認した。


「以前マスターは私の未来を見る力を変な宗教団体と思われたくないと言ってましたよね?何かいい方法は思いつきましたか?」


「もちろん、そのためにこれを持ってきた」


 俺はポケットから1ケースのトランプを取り出した。


「それは?」


「見ての通りトランプだよ。未来を見る力があれが出演者たちが引いたカードを当てられるよね?」


「はい、可能です」


「それはよかった。マジックってさ、タネがわからないとまるで魔法のように見えるだろ?でも必ずタネがある。この未来を見る力はそれと似たような感じだと説明したら分かりやすいかなと思って……」


「なるほど、いいアイデアだと思います。調べておきますね」


 イコはそう言い残すとパソコンの画面が暗くなった。それと同時に誰かが俺の楽屋のドアをノックした。


「失礼します。ヘヤセットに来ました」


 二十代前半くらいの若い女性スタッフがやって来た。ヘヤスタイリストだけあって着ている服や履いてる靴もおしゃれだ。


「南さんですよね。実は以前私もお悩み相談でアドバイスをもらったことがあるんです。あの日はどうしても早く帰りたかったので、事前に上司の無茶振りが分かって助かりました」


 女性スタッフはご機嫌な様子で俺の髪をセットした。


「僕はただアドバイスをしただけですよ」


「またまたご謙遜を、南さんが未来を見る力は本物です」


 さっきの狐のようなスタッフもそうだったが、俺のことを何でも見通せる神か何かと間違えていないか?


「南さんそろそろスタンバイをお願いします」


 女性スタッフと入れ替わるように男性スタッフがやって来て、俺はスタジオの裏に回された。


「あそこにある赤いカーテンの裏で待っていてください。準備ができたら開きますので」


 カーテンの向こうからは笑い声や話し声が聞こえる。何だか緊張してきた。普段人前で話すことなんてないからな……


「それでは今回のゲストをお呼びしたいと思います。最近巷で有名なあの未来を見通せる神、南秋斗君です!」


 盛大な司会者の自己紹介のもと赤いカーテンが開き、賑やかなスタジオに足を踏み入れた。


「ささ、こちらにどうぞ」


 司会者の案内で俺はゲスト用の椅子に腰を下ろした。出演者は豪華なワンピースを着ている人もいれば、ド派手な衣装の人もいる。中には髪の毛を真っピンクに染めた人までいる。流石芸能人だけあって全員個性的だ。


 俺は司会者の話を聞きながら客席を見渡した。席は全て埋まっている。なんとなく一人一人の顔を確認していると……


(えっ?どうしてここに?)


 どういうわけか一番前の席には茜と利樹が俺のことををじっと見つめて座っていた。偶然?いや、そんなはずはない。こんなことが出来るのはあいつ(イコ)くらいだ。あいつは一体何を……






 ご覧いただきありがとうございました!!


 次回で最終話です。最後までお楽しみ下さい(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ