双子の姉は、うっとり最強のリサイクルシスター! 謎のスキルで溺愛する妹を追いつめて無双します! 生きる! 暮らす! 拾う! 収納! 嬉しい! だけど可愛い妹にとっては悲劇でしかない!
これは できあいされる かわいい いもうと と
できあいする あね との ものがたり。
……どうしても、はさまっちゃうのです。ああああ。
歩いていた小学生らしき少女のミニスカートが、背負っていた鞄に挟まっている。そのため、少女の後ろからでは、白いパンツが盛大に見えてしまう。
女子高生のあなたは、ちょうどその少女の後ろ姿を目撃した。
夕方、駅近くの高架下にいたあなたは、生活感あふれるパンツを思わず目に入れてしまったのである。
少女にスカートがめくれていることを伝えようか迷ったものの、気恥ずかしく思い、あなたはそのままやり過ごした。
あの時の光景が印象に残ったのだろうか。
あるいは、下着が見えていることを伝えられなかった罪悪感があったのか。
あなたが帰宅してから、リビングにいた双子の姉にそのことを話した。
あなた達はダークブラウンのロングソファに並んで座っている。
「……ごめんなさい」
「なんでお姉ちゃんが謝るの?」
「私、あなたが小学生の時、ランドセルにスカートが挟まって同じふうになってたのに、学校に着くまで教えてあげないで、ずっとうっとりしてた」
「――そんなの聞きたくなかった!」
リビングであなたの大声が響き渡る。
双子のあなたと姉は、容姿がほとんどそっくりだ。違いはと言えば、黒髪の髪形で、あなたはストレート、姉は左右で三つ編みにしている。
三つ編みの姉は、まだ済まなげな顔をあなたに向けていた。
「……それともう一つ、ごめんなさい」
「今度は何っ?」
「黙っていたのは、一度や二度じゃなかったの。五、六回は、黙ってた。うっとりしてた」
「さらに聞きたくなかった!」
小学生の時とは違って、今はそれぞれ別の高校に通っている。だからと言って、仲が悪いわけじゃない。むしろ、非常に良好だ。けれども、あなたは昔から双子の姉を、変な姉だと思っていた。
本日、予想以上に姉が変態だったと、あなたは思い知る。
「しかしながらまだごめんなさい」
「えー! まだ続きあるのッ?」
「当時のあなたの白いパンツ、処分する前に拾い上げて、今でも私のお宝にしているの」
「わーッ!」
あなたは顔が真っ赤になった。
「……あなたには悪いし、あまりにも多かったらバレるかもしれないと思ったから、あの頃は二枚だけにしておいた」
「二枚も! というか、バレるかもって思ってたならなんで今、自分からバラしたのっ!」
「今なら、ついでみたいに済むかなぁって……」
「ついでじゃないよ! むしろ話のメインになっちゃってるよっ!」
「ついでに、今穿いているのも、もらえる? お小遣いあげる」
「買収してまで欲しいのかッ! 私達双子なんだし、自分ので我慢すればいいじゃない!」
「自分ので興奮していたら、私が変態みたいじゃないの」
「もう変態だよ、気づいてお姉ちゃん!」
「私の大切なお宝、見る?」
「見ないよ自分の小学生の頃のパンツなんて!」
「……私の大切なお宝は、かわいい自慢の妹だよ」
あなたは姉に抱きつかれた。
双子の姉がいつもあなたを大事にしてくれているのは、妹だからこそ分かる。
愛情のある抱き具合が、今はすごく心地良い。
「……私も大好きだよ、お姉ちゃん」
姉のせいでひどい目に遭っても、あなたは大抵、この気ままな姉を許してしまうのだった。
「じゃあ、その大好きなお姉ちゃんに、今穿いている白いパンツをちょうだい?」
「断固拒否っ! お姉ちゃんなんで白だって知ってるのッ?」
あなたは姉を突き飛ばす。彼女の三つ編みが揺れた。
姉は突き飛ばされても怒ったりはせず、優しい顔をあなたに向けている。
「双子なら、見ていれば分かるよ」
一瞬、ちょっといい言葉だと思ってしまった。
「着替えがッ、覗かれてたッ!」
「そんなこと、してるけどしてなくても分かるよ」
「してるんだっ!」
「だって、あなたのパンツは八割ぐらいが白だもの。……残りの二割には、黒もあったよね?」
あなたは大胆な黒があることも知られていてゾッとする。そもそも、八割が白という正確なデータもあなたは言われなければ意識しなかった。
「なんでそんなに詳しく把握してるのよ! もうすでに私の部屋から盗んでるんじゃないでしょーねっ?」
「私は妹の嫌がることはしないよ」
「今日の話の流れだけでも嫌がらせしてばかりだよっ!」
「盗んでいたら、ちょうだいだなんてお願いしないでしょ。……でもいいや、また捨てられた時に拾えばいいんだし。定期的に嬉しい、うっとり」
姉は笑顔になる。
「お姉ちゃん! 私のお古をいったい何枚持ってるの!」
「女の子は、たくさんの秘密を持っているのよ。あなたのパンツは、いつも私に夢と希望を与えてくれる。これぞ究極のリサイクル。うっとり」
あなたはこの再利用する姉に呆れ返る。
「……まさか、私のパンツ、……穿いてないよね?」
世にも恐ろしいことをあなたは聞いた。
「え? お宝を自分で穿くなんて思うの? 穢れちゃうじゃないの。そんなことを聞くなんて、愚かな妹ね」
「自慢の妹って言ってたじゃん!」
同じ顔をした姉になぜか睨まれる。そんな理不尽な状況下のあなただった。
(THE END)
仲の良い双子……というよりも、姉の愛情がやたら強いお話でした。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
もし良かったら、作者の別作品、『サキュリバーズ!』や『ホラチョコ! ~チョコミント好きな女子高生の恐怖体験談~』も読んで頂けたら、ありがたいです。あと、『サキュリバーズ・エクストラ!』も双子姉妹のお話です。こちらも、ぜひどうぞ。