【フリーシナリオ】有名配信者な義姉の耳かき練習台。
(ノック音。数秒後にドアを開く音)
ただいま、義弟く〜ん。
あはっ、いい反応するね。びっくりした?
うん。お盆に帰るって言ってたけど実はあれ嘘なんだ。驚かせようと思ったんだけど、想像以上の反応であたしも満足だよ。
って言うより、毎年盆前に帰省してお盆には家に帰って配信してるから、お父さんは盆前に帰ってくるって知ってたんだけどね。
今までのアーカイブは全部見たけど盆前の配信はなかったって? あれ? なかったっけ? もしかしてアーカイブ消しちゃったかな? まぁ、いいや。
ところで、義弟君は何やってたの?
ふーん、耳かき音声のフリーシナリオを書いてるんだ。それってネットにアップしたりするの?
そっか、ペンネームもツイッターの名前と一緒なんだ。分かった。じゃあ、完成したら読ませてね。もしよかったら動画で使ってあげるから。
それはそうとね義弟君。実は今日お願いがあって来たんだ。聞いてくれる?
あたしのためならどんなことでも断りはしない? ありがとう。
じゃあ、耳かきさせてもらえないかな?
いいの? よかった〜。
いや。まぁ、君なら喜んでくれるかもとは考えたけど、最近の配信を見ている君がリアルで耳かきさせてくれるのか不安だったんだよね。
ほら、最近はさぁバイノーラルマイクに耳かき棒を指したまま道具を取りに行ったり、たまに強く引っ掻いてガリッって音させたりしてるでしょ?
そうそう、「yo チェケ!」とか言いながら耳かき棒をゴソゴソさせるのも本当の人間の耳だったらできないよね。
うん、だからね。たまには人の、本物の耳を使って耳かきの練習をしたいんだ。
だめ……かな?
本当にいいの?
分かった。じゃあ、ここ。あたしの膝に頭を乗っけてね。って、躊躇いなさ過ぎでしょ? どんだけあたしに耳かきして欲しいのさ。
耳かき棒は……じゃあ、ここに置いてある綿棒を使わせてもらうね。
(綿棒。耳かき音)
と言うか、ベッド脇の棚の上に綿棒が置いてあるって用意周到すぎ。
もしかして、あたしの配信や動画を見ながら耳かきするのかな?
長時間イヤホンをつけてると湿気や振動で耳が痒くなる? へ〜そうなんだ。でも、それってつまり長い時間配信や動画を見てくれてるって事なんだよね?
…………
「ねぇ、それって私の動画なんだよね? 他のVTuberの動画じゃないよね?」(ヤンデレ声)
ふふっ、今びくってした〜。やっぱり君はヤンデレキャラが好きだよね。あたしのことを好きになったのもヤンデレ妹がきっかけだって言ってたもんね。
君がファンになって今何ヶ月ぐらいだっけ? 十ヶ月……? そっか、もうそんなに経つんだね。
君はいつも動画にコメントして、配信にも来てくれて、ツイッターにもリプ送ってくれて、商業系のツイートは必ずリツイートしてくれる。
そうやって好きを伝えてくれるのって私たちみたいなクリエイターにとってはすごく嬉しいんだよ。
まぁ、確かに色々な反応してくれたら、それかきっかけで仕事が増えるって理由もあるけど、でもそれ以上に自分の作ったものを好きだって言ってもらえるとやっててよかったなってモチベーションに繋がるの。
だから、あたしがここまでやってこれた半分は君たちの力なんだよ。
うん。じゃあ、こっちの耳は綺麗になったし反対の耳かきしちゃおっか。
あっ、その前に……
(耳に息を吹きかける)
はい、じゃあ。反対向いて。
(反対の耳。耳かき音)
それにしても本当に驚いたよ。まさか、お父さんが再婚して、義弟が出来るだけでも驚きなのにそれが、あたしのファンだって知ったときは言葉が出なかったよ〜。
あたしのファンは多いから関わる人にファンがいても不思議はないって? えへへ〜、そ〜かな〜。まぁ、あたしはそうは思わないけど、君がそう言うならそうなんだろうね〜。うへへ〜。
でも君、最初顔合わせ食事会したときあたしに気づいてなかったよね? なんだかよそよそしかったし。だから、てっきり知らないのかと思ったよ。
声が一緒だから最初から気づいてた?
でも、確信がなかったし、間違ってたら恥ずかしかったから自分からは聞けなかったの。
そうだったんだ。あぁ、だから最初の頃はよそよそしかったんだね。
それで耳かきの方はどうかな?
気持ちいい? 本当に? そっか、よかった。
まぁ、バイノーラルマイクにだけど今までたくさん耳かきしてきたから下手って事はないと思ってたけどね。
えっ、「yo チェケ!」してほしい?
本気で言ってる? 耳の中傷だらけになると思うけど。それでもいいの?
分かった、してあげる。
けど、危ないからゆっくりとやるからね。痛くなったらすぐに言うんだよ。
じゃあ、行くよ。
(少し激しめの高速耳かき)
チェケyoチェケyoyo! yoyoチェケyoチェケ!
yoチェケyoyo! yoyo!
チェケチェケチェケyoチェケ! チェケyoチェケyoyo!
(耳に息を吹きかける)
はい、おしまい。……もう、おしまいなの。いや、これ以上続けたら本当に鼓膜破けちゃうから。
そんなにあたしの耳かきが好きなの?
分かった。じゃあ、またしてあげるから今日はもうおしまい。
ねぇ、義弟君。これこらもあたしのこと応援し続けてくれるよね?