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ブルドの企み4

そんなに僕が邪魔だったのか?


「なんで、こんな事をする必要があるんだ! 僕が何をしたって言うんだ!」

「何もしてないさ。ただ邪魔なだけさ。ルダさえいなければ、シェリーが惑わされる事もないんだ。そうすれば僕の魅力に気付いて自分の過ちに気付いてくれる」


何を言ってるんだ?

シェリーはただ、ブルドの性格や行動が嫌いなんだぞ?

僕は関係ないじゃないか!?


「ブルド! 何か勘違いしていないか? シェリーは僕がどうとかじゃなくて、君のその性格や行動が嫌いなんだ。それを改めればここまで嫌われることは・・・」

「黙れ! そうやってお前がシェリーにある事無い事、話すから勘違いされるんだ!」

「僕は、ブルドの事をシェリーに告げ口とかしたことはないぞ!」

「はっ! 俺まで騙そうというのか? そうはいかないからな!」


駄目だ、何を言っても平行線だ。

こうなったらここから逃げる事を考えた方が良い。


「まあいい。どうせルダはここで魔獣に喰われて死ぬんだ。それで全てが上手くいく、それじゃあなルダ、シェリーの事は俺が幸せにするから、お前は心置きなく・・死ね!」


そう吐き捨てる様に言いきると、僕に背を向け歩き出した。


?! 馬鹿じゃないのか? いくら魔獣寄せの薬を掛けられたからといって、僕もここから逃げ出せば・・・?!


「ん? ようやく効き出したか? ルダ体が動かないだろ?」

「な? な、なひほしは?!」


なんだ? 言葉が変だ・・・き、気持ち悪い、立って・・・いられ・・な・

僕は、両膝から崩れ落ち地面に顔から倒れこんでしまった。


「ははは! いい様だな? 体がいう事を聞かないだろ? さっきお前を連れて来た男に、何か飲まされなかったか? 俺もよく知らんが、麻痺系の特殊な薬らしくてな、頭からの伝達系統を完全に麻痺させるらしいんだ。だから頭では分かっていても体を動かす事が出来ないらしいぞ?」


ブルドの勝ち誇った顔がはっきりと見える。

僕はその顔に手と掴もうと、手を伸ばしているつもりなのに、全く体が反応しない・・


くそ! 動け!


「こんなに簡単にかかってくれるとはね。聞こえているのだろ? 体は全く動かないのに頭だけはハッキリと動いているらしいからな。つまりこれがどういう事か分かるか?」


ブルドが倒れた僕の横にやってきて、顔を覗き込んできやがった。

くそ! どうしてこいつはこんな状況でそんなに嬉しそうに笑えるんだ?!


「魔獣に喰われる自分の姿を見る事が出来るそうだ。痛さはないそうだからな。ただ、その状況に発狂して正気を保てなくなるかもしれないがな? ハハ!!」


こいつ、狂っている。なんでそんな事を笑って言えるんだ!?


「ブルド様、そろそろここから離れませんと」


いつの間にかブルドの近くに二人の男性が立っていた。

一人は、僕をここまで連れて来た男だ。

そしてもう一人は肩に弓を掛けていた。こいつがさっき瓶を射抜いた男なのか?


「そうだな。別れるのは忍びないが、そろそろ魔獣が来る頃合いみたいなので、この辺りにしておこう。そうそう最後にサプライズだ。どうせ喰われるなら角兎や大牙鼠みたいな小物じゃない方がいいだろう? だからワザワザ森の深部から魔獣寄せの薬をこっちに向かう様に仕掛けておいたぜ。どんな魔獣が現れるか楽しみだな」


こいつ、僕を殺すのにそんな事までしていたのか? 下手するとこの狩り物競争に出ている他の人にも危害が及ぶかもしれないんだぞ!


僕は必死に、その事をブルドに叫ぶが、いっこうに口からは、ろれつがまわらない泥酔した大人の喋り方でしかできなかった。


「ん? 何か言ったか? 情けねぇ姿だなぁおい。地面に顔つけてよだれを垂らしやがってよ。体が麻痺して力が入らないからあちこちで漏らしているんじゃねぇのか? シェリーに見せてやりたいぜ」

「ブルド様!」

「フン! 分かっている。それじゃあな。ああ言い忘れていた。一応ルダは俺を助けて身代わりに死んだ事にしておいてやる。村の英雄だぜ? 俺って優しいだろう? それともう一つ、お前の母親だがな、物凄い美人だし独り身な上にルダが死んじまったら可哀想だからな、俺の親父が第5夫人にしてやるらしいぞ。だから安心して死んでくれ。じゃあな」


「ま、まひゃ・・・」


くそ! 

動け! 動け! 動け! 


だ、駄目だ。自分の体なのに全く反応しない。

意識はこんなにはっきりしているのに!


必死に、去って行くブルドに叫び手を伸ばすが、それが叶う事は出来なかった。


僕を置いていってしまった・・・完全に狂ってる。

こんな事をする奴だったか? 

くそ! こんな事で死んでたまるか! なんとかしてここから逃げなきゃ!


「ヴォオオォオオォオオオォオオオオオオ!!!」


ブルド達が去ってどれくらい経っただろうか?

突然、地面を揺らすほどの大きな叫び声が響き渡った。


な、なんだ?! 今のは?!

僕は今までに聞いた事のない異常な圧力を伴った獣の叫び声に意識よりも体が反応し、毛穴という毛穴から汗が一気に噴き出した。

自分の意思では動かせない状況なのに、関係無しに流れる大量の汗。

体が直接感じているんだ。


こいつはやばい奴だと。


僕が倒れてしまった顔の向き、ちょうどブルドが座っていた石が積み重なったところが見える。その先、森の奥からゆっくりと魔獣が現れたのを見る事ができた。


「ヴォオオオン!」


草を潰し、枝を折り、障害物などお構いなしに進んでくる。


ドラゴモドキ?! しかも3本角!


な、なんであんなのがこんな所に? ブルドのやつどれだけ森の深部まで行っていたんだ?

あんなの僕も魔獣種資料本でしか見たことがない、化け物クラスの魔獣だぞ?

見た目はトカゲなんだが、その大きさが問題だ。大人の2倍以上はある体に全身を覆う鱗で防御力に優れ、口から火を噴くことからドラゴンの亜種に分類されている、この辺りでは最も厄介なの魔獣だ。

5人くらいでパーティーを組んで、時間を掛ければ足は遅い方だし、炎の攻撃に注意すれば討伐はできる。

けど、一人で遭遇したら先ず逃げろ! だ!


「?!」


い、今、目が合わなかったか? 

・・・・・気のせいじゃない! こっちを完全に見ている! 

大きな口を開け僕を威嚇し始めた。


・・・・・・・・・・


襲って来ない? あいつ警戒しているのか?

それもそうか、こんな森の中で、美味そうな人間が、はい、食べて良いよ? なんてポイッと捨てられていたら罠かと思うかもしれない・・・・

この隙に・・・・って駄目だ! 結局体が動かなかったら意味がないじゃないか!


「ヴォフ」


い、今、あいつ笑わなかったか? さっきまでの警戒した目じゃない。

御馳走を目の前に期待に満ちた目になっていやがる!

そう思った瞬間、ドラゴモドキが僕に向かって走り出してきた。


「動け! 動けよ! 僕の体ぁああ!!」

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