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ボルクス村 6

僕は言われる通りに家を出てゴージャス邸に向かった。

それ程大きくない村の中を十数人の人間が列をなして向かう様は、普段目にしない光景だったので、村人達の注目の的になっていた。

ただ、その注目になっている最大の原因は、列の最後尾についてくる馬車の姿だった。

その馬車、荷台は鉄の格子で組まれた檻が乗っていて重罪を犯した罪人を近隣の街にある騎士隊詰め所へ護送する時などに使うもので滅多に見れるものじゃないかったからだ。

どうも、僕をゴージャス邸に送る時にこの檻に入れるつもりだったみたい。

あのまま口止め料を受け取っていれば使わなかっただろう。

だけど、それを拒否した僕を今度は悪魔付きと言い、檻に入れて村人に僕が悪魔付きだと印象操作するつもりだったのかも。

それを最初に察知したのが、


「あの檻はなんですか?」


フィネーナ姫様が檻のある場所を指差しながら、ゴージャスさんに詰め寄っていた。


「い、いえ、あれは悪魔付きを捕らえる為に・・」

「何処に悪魔付きが居るのですか?」

「え、そ、その・・ルダが・・」

「ルダ君は可能性があるというだけで今はその兆候すら見れないのですよ? それを罪人みたいに扱うと言うのですか?!」

「そ、そんな事は、ただ護送中に限界になり人を襲う可能性もあると思いまして・・」

「その時は私とファルナが一命に代えてルダ君を切り捨てます」

「しかしですな・・」

「これ以上は言いませんよ・・・・」

「わ、わかりました・・・・・・・・・・・・・・チ・・」

「何か?」

「い、いえ!」


フィネーナ姫様のおかげで檻に入れられることなくゴージャス邸に着いたのだけど・・・


「これはどう言う事ですか?!」


今の僕の居る状況にフィネーナ姫様がゴージャスさんに食って掛かっている。


「これは万が一の事を考慮して悪魔付き判定の監視環境として推奨されている条件なのです。公爵令嬢であればご存じでありましょう?」

「それは知っています。でもそれは強固な壁で作られている、というだけで牢獄という訳ではありませんよ!」

「分かっております。ですのでこの地下牢と言っても扉には鍵を掛けません。唯一の出入り口に番人を二人置き随時確認するというだけです。ベッドも用意してありますのでどうかご容赦ください」


確かに、壁と床はかなり固そうな岩をそのまま組んで作り上げていて地上に抜ける通路以外は抜け出せる様な所は一つも見当たらない。

それに家の食堂よりも2倍くらい広くて圧迫感もない。

まあ、これなら寝泊まりには問題なさそうだ。


「フィネーナ姫様、僕は大丈夫です。ご心配して下さってありがとうございます」

「そ、そう? ルダ君が良いって言うなら・・・」

「大丈夫ですよ姫様。私も交代で確認しに来ますし、何も問題ないですから」


フィネーナ姫様に同行しているファルナ様もそう言ってくれるので僕としては何も不安はない。


「分かりました。では私とファルナはこの上の詰め所に居ますので、何かあるようでしたら直ぐに報告してください」

「はい。何かありましたらその門番さんに伝えます」

「納得していただきホッとしました。それではフィネーナ様とファルナ様はこちらにお越し下さい」


ゴージャスさんの誘導で地上に向かう通路を歩き出したお二人。

僕はその後ろ姿が消えるまで目でお二人を追っていた。


「ガチャン!」


扉が閉まる音がした。


「さて、ルダよ。お前も難儀なことだな」


皆が出て行って、残った僕に一緒にこの場に残る門番のおじさんが話しかけて来てくれた。


「まあ、色々あったからね」


門番のおじさん。

僕も小さい時から知る人だ。

ま、このボルクス村の人とは全員が顔見知りで、話す事も多いから皆が家族の様に親しいんだ。


「ちょっと耳をかせ」

「なあに?」

「ゴージャスの旦那、何か企んでいるみたいだがルダは何かしたのか?」

「僕自身は特に何もしてないんだけどね」

「そうなのか?」

「うん」

「まあ良い。3日間わしも気をつけるが、ルダも気をつける様にな」

「うん、ありがとう」


良し、門番のおじさんはゴージャス側じゃなさそうだな。

僕は確信しながら、牢屋の中に置いてあるベッドの上にドサッと身を投げ寝っ転がった。

天井を見る。

木の天井、何枚かの板を重ねて貼ってある。

でも木とは言っても一枚一枚がかなりの厚みで簡単には壊れそうにない。


「逃げ出すのは難しいか・・・まあ、逆に誰かが密かに忍び込む事も容易ではなさそうだという事だ」


うん、周囲の状況は確認したぞ。

あとは本当に動き出すか・・・・・


「寝て待とう・・・・・・」

読んでいただきありがとうございます。

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