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プロローグ

俺、塚原幸人(つかはらさきと)は至って普通の男子高校生。黒髪にマッシュ寄りの髪型で容姿は普通、誇れる点があるとすれば近所のお婆さんに整った顔をしている、と言われる事くらい。他には実家が旧家と言うだけでそれ以外は何も思い当たらない程の平凡な人間。


幼馴染や彼女と呼べる人間もいなければ、友達と呼べる人間だって数人しかいない、世間一般が言う所のぼっちだ。


「ちょっと、そこの君。」


だから、こう誰かに呼び止められるのは、俺の想像を超えている事態な訳で。


「えっと...何でしょうか?」


何やら胸騒ぎがしているが、取り敢えず応対しなければ何を言われるか分からない。俺はゆっくりと後ろへ振り返り、声の主を視界に捉える。


そこには、見慣れない真っ赤な色の制服を着て長い黒髪を腰辺りで風に靡かせている凛とした顔付きの女子高校生らしき人物が腕組みして俺を見据えていた。それも、道端に捨てられたゴミでも見るかのような冷たい眼差しで。


「この辺りに、成瀬真矢(なるせしんや)と言う方の家があるはずなのだけれど...君、知らない?」


「成瀬真矢...ああ、確か俺と同じクラスにいる人...彼の家なら。」


「ご存知のようね、案内しなさい。」


初対面の人に向かって失礼では、と真っ先に思った自分がいる。だがそれは正常な証拠だろう、道を尋ねて自らその場所へ向かうなら分かる。だが会って数分ともしない他人の俺に目的地へ案内しなさいと、命令口調で彼女はそう言った。絶対に関わっちゃいけない類の人間だ、俺の本能がそう警鐘を鳴らす。


「すみません、この後用事があって...道を教えるだけで案内は出来ません。」


俺がそう言うと彼女は俺の顔を食い入るように見詰めた後、口調に怒気を混じらせて再び口を開いた。


「君、それは私が誰か理解しての発言?明日からの学校、奴隷生活に変わるわよ。」


「...は?」


「何、まさかとは思うけど、あなた...私の事知らないの...?」


数分前に初めて顔を合わせた相手の身の上など、俺がエスパーでもない限りは知れる訳が無い。何なんだこの人は。


「ごめんなさい、知りません。」


俺は素直にそう答える、すると彼女は目を細めて俺を睨み付けてきた。一体何だと言うんだ、彼女の気に触る発言をしてしまったのかと苦悩している内に、彼女は俺のそばへ近付いて来ていた。そして、俺の胸倉を掴んだ彼女は、お互いの吐息が感じられる程の至近距離まで俺を引き寄せる。


「私は柳グループ社長の娘、柳結奏(やなぎゆかな)。今後は忘れないようメモにでも書き留めておきなさい。まぁ...今更覚えた所で明日からのあなたの運命は変えられないけれど。」


そう、俺は一般常識の通じないとんでもない女性と出会ってしまった。至近距離で見る紫色の目を持った美しい彼女からは俺に対する情など、一切感じない。明日からの俺の人生はどうなるのだろう、不思議とこんな突拍子の無い状況でも冷静にそう考えられている自分がいる事に驚いた。

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