養子縁組?
ケーキを切ってリビングに持っていく。コーヒーと共に妹と二人でケーキを頬張る。
さっきよりも嬉しそうにモリモリとケーキを食べる妹……本当に何をしても可愛いと思ってしまう。
ある程度食べた所で僕は立ち上がると部屋に隠しておいた妹へのプレゼントを引き出しから取り出す。
するとリボンに引っ掛かり1枚の封筒が僕の足元に落ちた。
市役所? その封筒には地元の市役所の名前が記載されていた。
とりあえずその封筒と一緒にプレゼントを持って妹の前に僕は座った。
「空、誕生日おめでとう」
僕はそう言って妹に綺麗に包装されたプレゼントを渡した。
「あ、ありがとう……お兄ちゃん……開けてもいい?」
「いいよ、気に入るかなあ?」
好きな人に上げるプレゼント……探す時は滅茶苦茶楽しいけど、上げる時は滅茶苦茶緊張する。
妹は丁寧に包装を剥がし、出てきた紫色の綺麗な小箱をゆっくりと開いた。
「わああ……綺麗……」
「……銀のネックレス……前に空が欲しいって言ってたから」
「うん……これ欲しかった奴……嬉しい……ありがとうお兄ちゃん」
「うん……」
欲しがっていた物だったけど、気に入って貰えるか凄く不安だった。でも、妹の笑顔が見れて、嬉しそうな姿を見れて、凄くホッとする。
「付けていい?」
「うん、いいよ」
そう言うと妹は髪をかき上げネックレスを付ける。妹のうなじがチラチラと見え、僕はドキドキしてしまう。
「どう?」
今日は首元が大胆に空いている肩出しセーターを着ていたので、凄くネックレスが栄えた……うん……綺麗だ、ネックレスを付けた妹は物凄く綺麗だ。
「……う、うん似合ってるよ、凄く綺麗……」
「えへへへへ、ありがとうお兄ちゃん」
満面な笑顔なる妹……ああ、上げて良かった……3か月小遣いを貯めた甲斐があった……。
「…………でもでも、お兄ちゃん?」
自分の胸元のネックレスをじっと見ると妹はニヤニヤとし始める。そして満面の笑みから、少し意地悪そうな、小悪魔的な表情に変わった。
「……ん?」
「ネックレスを贈る意味ってね、貴女を縛り付けたいって聞いたけどお、お兄ちゃんは……私を縛り付けたいの?」
「ば! そ、そんな……わけ」
「あはははは、冗談だよお」
そう言ってはしゃぐ妹…………でも……そうだよ……僕は妹を離したくない……妹を縛り付けたいって思って……それを買ったんだよ……そう言いたかったんだよ。
「全く……」
危ない……自分の思いがバレる所だった……誕生日祝いだからと少し羽目を外しすぎたかも……僕はそう反省をして、さらに落ち着こうとコーヒーを飲む。
そして飲みながなんとなくテーブルに目線を落とすと、さっき拾った封筒に目が行く。
僕がじっとその封筒を見ていると、僕の視線の先にある封筒に妹も気が付く。
「それって……」
「ああ、さっき落ちたんだ、なんだろうって? 何か知ってる?」
「うーーん、ああ、なんかお母さんが言ってた、高等部に行く手続きで住民票が必要だって……」
「? いやでも、手続きってもう終わってるよな?」
週明けに入学式なんだから……。僕はその封筒を手に取り中を覗く。
「なんか、お母さん間違えたって言って慌ててもう一度取りにいってたけど……」
間違えた? 何を? 僕は封筒の中身を取り出した。
「戸籍謄本?」
「ああ、よくやる奴だ~~お母さんおっちょこちょいだねえ」
「うん……」
しかし僕はもう妹の話が、言葉が頭に入って来なかった、なぜなら謄本の妹の名前の横に意味の分からない文字が書かれていたから。
妹の名前の横には……。
〖養子縁組〗
と、そう書かれていたから。