異世界になろう
「お前は死んだ」
まず初めにこう言われた。
そしてその後何が起こり、何があったのか。説明せずともこの一言から全て予想がつくだろう。
俺こと、斉藤世界は最強の転生特典を神を名乗る者から受け取り、その力を使い異世界で自由に過ごしているのだ。
今日も暇潰しに俺が統治する国の中を散歩している。
すると誰もが俺に笑顔で手をふってくる。人間も亜人も魔物も皆幸せそう! これも俺が統治してるおかげだぜ。
おっ! 女性の悲鳴!
転生特典で貰った超魔力を放出し、俺は高速で街を駆け抜ける。
駆けつけた先には、化け物がいた。
醜く腹がでっぷりと出た緑色の化け物。オークってやつだ。
顔もグチャグチャで醜く歪んでいる。つーかキモっ!
オークは女性に対し気味の悪い笑顔でいる。間違いなく女性を襲うつもりだ。許せん! 俺が成敗してくれる!
「邪竜風月斬!」
抜いた刀に風に変換させた魔力を纏わせる。
そしてその刀でオークの腹をかっさばいた。
「ブヒィィィィ!!!」
オークの腹から緑色の汚い血が飛び散る。
断末魔があまりにもうるさいので首を斬った。
ようやく静かになると思ったら、助けた女性や周りの人達から黄色い声が上がった。
俺は統治者である以上、あまり目立つことは控えたいのだが。
助けた女性がありがとうございますと顔を赤らめてくる。まいったな。こんな光景をエリィたちに見られたら殺される。あ、エリィってのは俺の嫁。他にもいるけど、ここは異世界だし、一夫多妻もオーケーだよな。
と、そんなことを思っている内に新手だ。
地面にヒビが入ったかと思うと、中からミミズの化物が出てきた。
「お主が世界か…」
「きもっ!」
流石にキモい。キモいので取り敢えず斬った。斬ったら死んだ。
どういう目的かもわからんかったが、別にいいか。
「ギシャアアア!!」
今度は、空からワイバーンに乗った骸骨の鎧軍団が槍を片手に襲ってきた。
国民が慌てて逃げる中でも俺は悠然と立ち、右手をかざす。
「消えろ…… 邪竜消炎破っ!」
ゴォォォォ!!
右手から放たれた魔力のこもった炎がワイバーンたちを消し炭にした。
やべぇ、俺強すぎ。
俺の勝利を祝って国中の人達が集まってきた。
誰もが喜び笑顔でいる。誰もが幸福でいる。誰もが満足している。
俺は最強だ。そこに何の不満があるだろうか。
いや、ない。何故なら俺がいるだけで、この国は、世界は永遠に平和だからだ。
苦しみのない、究極の物語。全ての人々が夢描き続けきた悲願。
俺という存在が、物語を完成させた。
努力とか馬鹿馬鹿しいにも程がある。誰かが死ぬことに何の意味がある?
心を抉るような鬱展開とか誰得だよ。
そうだ。そうです。強くて格好いい。皆に好かれる。それだけでいいんです!
だって誰も損しないし!
斉藤世界の戦いは続いていくぜ!