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第三十話 1942.9-1942.10 皇国艦隊出撃す

主人公たちはジェット機の実戦配備を目指し頑張ります。

そしていよいよ日本海軍が渇望してやまぬ本格的な艦隊決戦が。





昭和十七年九月



仏印の我が陸軍と仏軍は制空制海権を失い、内陸部へと追いやられ孤立状態に陥っているそうだ。

そこで陸軍は現時点で早急に解決しなければならない大陸からの爆撃拠点の制圧と、陸軍第五師団など仏印の進駐軍を救出するため、一大作戦を計画しているそうだ。


いずれにせよ、急がなければ仏印進駐軍は降伏を余儀なくされるのは間違いなく、恐らく近い時期の作戦なのだろう。



今月、量産開始に向けて調整していた二式陸上戦闘機の追加試作機が完成した。


大きな変更は、私が設計した陸軍向けのジェット戦闘機のデザインの影響も受け、主翼の位置を前輪式に合わせるために下げて、機体中心に持ってきたことだろう。


エンジンの設置位置も、ジェットエンジンが大型化した事もあり、以前のようなレシプロ機特有の主翼前部に取り付ける方式から、主翼が円筒型のエンジンを貫く様な形となっている。

勿論、ジェットエンジンは構造上主翼を中心に通すことは出来ないので、エンジンをはめ込むリングを主翼構造に持つ様改められている。


基本的な設計思想は変わらないようだが、順調にレシプロ機がジェット機へと進化を遂げている。良くここまで仕上げたものだ。


早速、社内で試験飛行したところ、ジェットエンジン自体の性能もあれからさらに向上したという事もあり、なんと700キロを軽く突破し800キロに迫るほどの最高速を達成した。

しかし、燃費と熱の問題はいまだ課題として残っており、フランツのアイディアでジェットエンジンにレシプロ機に搭載しているような強制冷却ファンを取り付けるという設計を今行っているそうだ。


ジェットエンジンの側面構造図は見せてもらったことがあるが、強制冷却ファンを取り付けると果たしてどんな構造になるのやら、想像もつかないな。



二式陸上戦闘機は早速海軍でも試験され、その結果直ちに生産が開始される事となった。

海軍で試験したところ、これまでの想像を覆す最高速度を叩き出し、機首に集中配置された二十ミリ機関砲四門は集弾性も良く要撃任務での戦果が期待されているとの事。


海軍は二式陸上戦闘機を当面の国内での要撃任務の要と考えている様で、国内での運用のみを考えている為、滞空時間の短さに関しては問題としないそうだ。


この事は、私が今開発しているジェット戦闘機にも言える事だな。





昭和十七年十月



本土への空襲は規模を増して続く。

以前は百五十機程度だったのが、今や三百機もの編隊が当たり前となり、小笠原諸島と中国から複数のルートで飛来する。


皇国軍の防空能力も高まり敵の損害も相当なものなのだが、流石に三百機ものB-17が編隊を組んで飛来すると最早皇国軍の迎撃能力を超えている。


敵の物量はまるで無尽蔵の如く、既に三百機近くは撃墜しているはずであるが、寧ろ空襲に飛来する機数が増え続ける有様なのだ。


しかも、ここ最近は米機動部隊が前進してきたのか、米海軍の戦闘機が護衛につくことも増えてきた。


米海軍のF4Fなど我が皇国軍の戦闘機の敵では無いが、打たれ強くタフであり、何より二百機から三百機もの数で飛来する為侮るわけにはいかない。


海軍は潜水艦による警戒網をつくり、敵艦隊の位置の把握に努めている様であるが、敵の対潜能力が海軍の想像以上であり、既に何隻も未帰還になっているとも聞いた。


そんな有様ではあったが、遂に海軍が待ち望んでいた艦隊決戦の好機が訪れ、先月末に戦艦長門を旗艦とした皇国海軍の艦隊が小笠原沖で米海軍に対し艦隊決戦を挑んだ。


その海戦の戦果が今月になって発表され新聞に掲載されたのであるが、勿論皇国海軍の大勝利であり二つの敵艦隊に対し、敵戦艦六隻撃沈を含む大戦果を挙げたが我が方の被害は軽微だと報じられた。



だが実際は大きく異なり、海軍は敵艦隊の位置を潜水艦で捕捉していたにも関わらず、米側も既に皇国海軍の位置を把握していた様で、まるで釣り出されたかの様に待ち構えていた敵潜水艦の攻撃を受け、それに対応するために足止めされている所に更に敵の海軍機の攻撃を受けた。幸い、本土からやって来た艦隊防空の為の戦闘機が居たため何とか撃退することが出来たが、日本海軍の対空能力はあまり高いとは言えず、艦隊に少なくない損害を被った。


その後、念願の艦隊決戦、しかも海軍が得意とする夜戦と相成ったようだが、待ち受けていた敵太平洋艦隊はアリゾナ、オクラホマなど八隻もの主力戦艦を含む大艦隊だった。


更に米海軍は増援の為に近くに居たらしいもう一つの艦隊を呼び寄せており、そちらの艦隊には新型戦艦のノースカロライナやサウスダコダが含まれており、日本の主力である長門と互角の性能を持つ戦艦が複数居たそうだ。


日本側も実質的に主力級総出撃とも言える十隻の戦艦を含む大艦隊で敵の撃滅に出撃しており、想像を絶する激しい戦いになった。


結果として、敵戦艦六隻を撃沈、或いは大破に追い込んだものの、日本側は扶桑、山城など四隻もの戦艦を失い、残りの戦艦も中破相当の損害を受け、また果敢に雷撃戦闘を挑んだ水雷戦隊もかなりの割合が戻らなかった。


しかも、本来艦砲射撃で粉砕するはずの硫黄島飛行場への攻撃は果たせず、また既に小笠原海域から避難していたのか敵機動部隊の捕捉もままならず損傷を与える事も出来なかった。



皇国海軍は当分行動不能との事だ…。

親しい海軍の上席技官がこっそり教えてくれたが、勿論この情報は軍機であり箝口令が敷かれている。



幸いと言えるのか、希望が持てるのは皇国海軍は今回も艦載機が未だ充足しておらず、艦隊防空も本土から防空戦闘機を飛ばせる距離だったこともあり、空母は一隻も出撃しなかったため無傷である事か…。


しかし、念願の艦隊決戦で無視できない損害を受けて、この立て直しは簡単ではないだろうな。





レーダーを駆使する新型戦艦迄含むフルスペック太平洋艦隊と、神がかった命中精度と夜戦能力を誇る皇国海軍のガチ海戦は痛み分けで終わりました。

夜戦じゃなかったらどうなっていたかは…。


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