表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/51

第二十九話 1942.8-1942.8 赤外線誘導弾

去年から開発していた誘導弾の試験です。





昭和十七年八月



ジェット機の試作機の製作は急ぐ事もあり急ピッチに進んでいるが完成は十月位になりそうである。

しかも、早くも現在の九八襲撃機の後継機種をジェット機で作ってほしいとの要望が来ている。

いずれにせよ、一機作ってみて様子を見なければどのような形が好ましいか見えてこない。



五月に依頼された十七試艦攻のデザインを先月海軍に提出していたのだが、問題ないとの事で基本設計に入ることになった。


仕様は全長11.8m、全幅14.8m(折り畳み時7.4m)、全高4.8m、翼面積35m2、自重が約4500kg、総重量7000kgを想定。

エンジンは誉21型2100馬力を搭載し、プロペラは四枚タイプ。

最高速度は600km/h以上、航続距離が増槽無しで2200km、実用最高高度が10000m、上昇速度は18m/sを想定。

武装は12.7mm機銃x4、重量強化点を胴体下1000kg、翼に500kgをそれぞれ1、他ロケット弾用にそれぞれ4、最大搭載量は1800kg。

九八襲撃程ではないが、エンジンまわり胴体下部、コックピット周りに5mm-8mmの防弾鋼板。


単座の攻撃機であり、一式戦爆の爆撃機型というデザインに仕上がった。

エンジンパワーがさらに上がれば搭載量ももっと増やせるだろう。


今月一杯で基本設計を終え、松村技師に引き継ぐ予定だ。



今月、開発中であった陸軍のケ号兵器の発射試験が浜名湖で行われた。


当日は警備に陸軍部隊が出動して試験場周辺を封鎖し、厳重警戒の元という念の入れようだ。

それはそうだ、ケ号のケは検知器のケらしいが決戦兵器のケでもあるのだ。

赤外線誘導弾には弱点もあり、今の時点で敵に知られるわけにはいかない。

可能なら対策される前に戦争を終結させたいのだ。最初から対策されていては意味がないからな。


この試験には私も見学に参加するのだが、なんと今回の試験には海軍の関係者も参加している。

先日の会合で私が提案したことが上に伝わったからという訳ではないだろうが、皇国存亡の危機に陸軍も海軍もないだろう。


今回試験されるケ号兵器は二種類ある。


一つは自由落下型の赤外線誘導弾であるケ号爆弾。

これは爆撃機が通常の水平爆撃のやり方でケ号爆弾を落とせば後は勝手に熱源に向けて吸い寄せられるように動翼制御され落下していく。


もう一つはロケット推進式の赤外線誘導噴進弾であるケ号噴進弾。

これは人が乗れないサイズではあるが小型のロケット機であり、爆撃機から投下されると後はロケットモーターに点火されて熱源に向けて高速で飛行しそのまま突入する。


どちらもドイツから来たワーグナーらドイツ人技師たちと日本の糸川ら中島の誇る技師たち、更には陸軍の航空技術研究所の技官たちが加わり完成させた今の最高の技術の粋とも言える代物だ。


今回のテストは軍の高官や政治家も視察に来ており、それだけ期待が高いのかもしれないな。


事前に浜名湖の中央にフロートが浮かべられ、その上にドラム缶が置かれていたが、試験が始まり作業員がそこに火をつけると退避していった。

それの燃えるドラム缶を熱源として今回の標的とするようだ。


勿論、今回使われるのは模擬弾であるが、ケ号噴進弾が突入すると標的を木っ端微塵にする可能性があるため、先にケ号爆弾の試験から行われる。


皆が見守る中、ケ号爆弾を吊り下げた百式重爆が高高度で飛来し投下する。

そして吸い寄せられるように落ちてくると、大きな音を立てて見事にフロートに命中したのだった。


それを見て見学席からどよめきが起きる。

しばらくして拍手が聞こえてきて、皆総立ちで試験の成功を喜んでいた。


誘導装置も操縦装置も問題なく動作したようだ。



更に、次はケ号噴進弾の準備が始まる。


実はこのケ号噴進弾は重さが千キロもあり、今の日本の正式採用されている爆撃機の爆弾搭載量の限界ギリギリであり、実戦運用するには米軍の重爆撃機とまではいかなくとも爆弾搭載量二千キロクラスの新型爆撃機が必要な事がわかっている。

その為、陸軍は先日鹵獲したB-17を参考にした新型爆撃機を作れないかという打診を各メーカーにしている。



湖に沈んだ試験弾をダイバーが回収した後、作業船がフロートに接舷し新たなドラム缶が設置される。


準備が完了したところで再び点火された。


防諜上の理由で場内アナウンスこそされないが、見学席では係の陸軍の士官が直接観客に進行状況をアナウンスしてくれる。


無線で試験開始が伝わると、士官が今投下されました、などと知らせてくれるのだ。


ややするとゴーっという音と共に高速で小型機がフロートめがけて突っ込み、そのままフロートを掠めると湖に派手な水しぶきを上げて突っ込んだ。


観客席は暫く無言であったが、やがてみな総立ちになり万雷の拍手となった。


どちらも見事成功したと言えるだろう。


これで体当たり専用の特別攻撃機を作れ、などと下らぬことを言い出すものは居なくなるのではないか。



今回の試験の成功でケ号兵器は正式に決戦兵器として国からの予算が付き、また陸海民の科学技術の一体化を図るため、新たに陸海技術運用委員会が設置された。


陸海技術運用委員会には、新たに赤外線方式とは別に陸軍の研究所で開発された衝撃感応誘導装置が提供され、合わせて開発されることになった。


赤外線誘導の欠点は熱源に誘導される性質上、一つの目標が火災を起こすと多くの誘導弾がそれに向かって行ってしまうため、複数の目標を攻撃することが困難であることが挙げられる。

その点、衝撃感応であれば敵の対空砲火の発する衝撃波に対し突入していくため、複数の目標を狙うことが容易になる。


また、海軍からも新たに技官や海軍の技術協力者でテレビを開発している高柳氏など電気関係の優れた技術者らが陸海技術運用委員会に加わった。


それにより、途中まで画像誘導し最後は衝撃感応や赤外線誘導方式に切り替えるなど、色々な案が出てきているそうだ。



皇国は今後本格的に誘導弾の開発を推進していく事になる。



人が揃いそれなりの期間があった結果、順調に進んでいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ