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第二十二話 1941.6-1941.6 十三試艦戦試作機完成

予定通り十三試艦戦の試作機が完成しました。





昭和十六年六月



今月、海軍向けの十三試艦戦の試作機が完成した。


今回は艦載機であり初めて扱う機構が搭載されたため、初飛行の前に海軍の技官に来てもらい各種仕様の審査をしてもらった。


主翼の折り畳み機構は油圧式で引き込み脚のやや外側から折り畳まれ、折り畳まれた状態で全幅が7.5メートル。

勿論、折り畳み部分から急降下時にぽっきりいかない様に頑丈に作ってある。


減速用に主翼フラップに取り付けた細工の方も見てもらう。


それを見て技官はこれは急降下爆撃も出来るんじゃないのかと笑う。

多分可能だと思うが、これは戦闘機だからな。


着艦装置など、海軍指定の装備も全て確認してもらった。


結果、現時点で気になる問題点は無いとの事で、試験飛行となった。


試験飛行当日、海軍の技官や関係者の他、第三航空隊に配属となったという先日の赤松少尉と南郷大尉も見学にやって来た。


いずれ海軍でテストするのだからその時に見れば良いのにと思ったが、自分たちが意見を出して作った戦闘機の初飛行をぜひ見たかったらしい。


今は内地に居るから来れたのだろうが、空母に乗るのだろうからそう会う機会も無いだろうと考えると、こういう機会は貴重だな。


中島のテストパイロットが乗り込むと、折り畳み機構の動作テストをまず行い、ここでは問題なく動く。しかし戦地で油圧機構が動かなくなった場合の事も考えて手動でも折り畳み機構を動かせるようにしてある。


両海軍パイロットはしきりと頷きながら、終始上機嫌で機体を色んな方向から眺める。


これだよ、これがほしかったんだと、赤松少尉が口走ると南郷大尉も賛同する。


そんなパイロット二人を技官と二人で並んで見ていたが、ここまで喜んでもらえると航空技師冥利に尽きるというものだな。


とはいえ、飛ばして見せて意見を聞かなければ。


二人に声をかけると、試験飛行を開始する。



今や聞きなれたダブルワスプの爆音を響かせると、太田飛行場の滑走路をするすると進みだしひらりと空に舞い上がった。


作った飛行機が初めて空に舞い上がる瞬間を見るのは何度見ても感慨深い。


一度目の人生では様々な理由から失敗もあったが、二度目の人生は人の縁に恵まれエンジンに恵まれ、これ以上無いほど順調だ。

たまに、死ぬ間際に見ている長い夢なんじゃないかと疑うくらいだ。


国は違えど同じ仕事をやり直しているのだから、同じ失敗をそうは繰り返さない。

ましてこれほど恵まれていれば余計にそうだ。


順調にテスト項目をこなしていくテストパイロットの見事な飛行を見守りながらそんなことを考えていた。


速度試験の結果、水メタノール噴射装置を使わない状態で693キロ、水メタノール噴射装置を使った場合700キロを突破した。

武装も弾薬も搭載していない状態であるから、実戦ではもう少し遅いかもしれないが、それでも海軍機で700キロ突破は初めての事だと、立ち合いの海軍関係者が興奮気味に私に喋りかけて来た。


海軍の要望で追加したエアブレーキを使っての急降下試験も問題は無く、急降下爆撃機の真似事が出来るという事が判明した。

個人的には戦闘機として使ってほしいのだが…。


そして、一通りの試験を無事済ませると滑走路に滑り込むように戻って来た。


予想通り着陸速度は早かったがエアブレーキを利かせると急速に減速し無難に着陸を終えた。


テストパイロットが戻って来ると、技官を交えてまずは報告を受けるが、現時点では特に問題らしい問題は無いとの事だ。


上昇性能、加速性能共に素晴らしく速度が乗っている限りは運動性も悪くないと高評価だった。


我々への報告が終わると、待ちかねた様に海軍のパイロット二人はテストパイロットを囲んで色んな質問を浴びせかけていた。

テストパイロットも元軍人だからか快く彼らの質問に答え盛り上がっていた。


海軍の技官も上機嫌で、海軍での試験が楽しみだと言って帰っていった。




試作機は細かな手直しを終えると海軍の試験を受けるため、海軍に納品した。


後日、一先ずの試験結果が良かったのか追加で二機の試作機の発注が来て、これから空母に載せて本格的にテストをし早ければ年内に配備を始めたいと通達があった。


遠からず同じエンジンを積んだ米軍機とやりあう事になるんだろうな…。





六月二十二日



一度目の人生と同じく、ナチがソ連に侵攻したと新聞報道があった。

日本が対ソ参戦を拒否したのも前世の記憶通りだ。


もし、日本がシベリアに攻め込んでいればどうなっていたのだろうな。



実のところ新機軸は折り畳み翼とエアブレーキくらいで機体そのものはオーソドックスに作られています。

カタログスペックはF8Fに似ていますが、F8Fよりやや大きくLa-9と疾風を足して二で割ったような外観です。



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