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第十二話 1938-1938 ユモモルテンワークス

年が変わり1938年、主人公の戦闘機が本格稼働します。





昭和十三年一月



新たな年を迎え気持ちも新たであるが、日本は戦時色が強まる一方である。

正月は身重の妻を連れ恒例の里帰りに行ってきた。

両親は今も未だ元気で健在であり、孫を楽しみにしていると言っていた。


実家から戻るとまた仕事だ。


ユモ211Fはテストでも特に問題なく、若干の手直しを経てユモ211F-1として量産に入る事になった。

私は思ったのだが、このエンジンはもしかすると最初の人生より早い時期に完成しているのではないだろうか?

理由は解らないが、レンチェラー日本の技師達との公私に渡る付き合いも影響しているのであろうか。そこには技術交流等もあったのかも知れない。


レンチェラーは現在ダブルワスプという新しい空冷18気筒エンジンの仕上げを去年からやっていて今年にもリリースするそうであるが、その量産試作品がこの春にも登場し日本でも生産を始めるとのことだ。

とはいえ、米国政府との関係は悪化の一途であり、レンチェラーとのこの良好な関係もいつまで続くかは正直わからないのであった。

日本生産のエンジンは米国やカナダにも輸出されており、その品質に於いても特に問題はないとの評価であるが、二度目の人生では日本で作ったエンジンを載せた米軍機とやり合うという皮肉なことになる可能性がある。


一仕事終えたフランツは今度は道後温泉に家族で旅立ったそうだ。

リヒトに一人で図面を書いているのかと聞いた所、そんなバカなと笑われた。

話を聞くとどうやら彼の家族だけで行くこともあるが、例えば先の熱田はチームが家族連れで宿を借り切り最後の作業をやったらしい。

そんな金が何処から出てるんだろうと思ったが、多分ウチの会社なんだろう。

熱田にも道後にも懇意にしている温泉宿があるから実はそこまで金は掛かってないのかも知れない。


日本は冶金のレベルも低いと思うのだが、金属関係が分かる技師を連れてこの前神戸の製鉄所に行ったとも言っていたがそんなに簡単に解決するのだろうか。


ユンカースの連中の開発成果は当然ながらドイツの本社にフィードバックされており、それで成果を上げているからこそ今の所の彼らの行動の自由が担保されているのかもしれない。

しかし、RLMことドイツ航空省はいつまでもこの状態を黙っているのだろうか。

彼らは恐らく本来ならばRLMの指導下で開発をやっているのではないのか?

私はドイツの内情にそこまで詳しいわけではないが、統制国家であるドイツもソビエトと同じ事をやっているなら本来なら政府の技官が入り込んで仕事をしているはずだ。

フランツが云う邪魔されないと言うのはRLMの技官に邪魔されないということなのかも知れないな。


何にせよ、どうなるかは彼らが決めることだ。





昭和十三年二月



華北でソ連機相手に苦戦している陸軍が96式戦闘機の試作機を華北に持ち込み実戦投入したと聞いた。

例の若松軍曹率いる試験飛行隊を派遣し、彼が提唱する一撃離脱戦法を実戦で試した所、これまで撃墜が困難だったI-14を鎧袖一触とばかりにあっさりと撃墜し、その時のデータを持って既に帰国したとのことだ。


若松軍曹はそのまま本格的に指揮官となるため陸軍航空士官学校へと入校。

戦闘データは陸軍の航空技研より齎された。


陸軍からの要望があり、機体面では更なるエンジンパワーの向上、そして一撃離脱戦法をするには発射速度の遅いM2重機二門では瞬間火力が足りず、さらなる火力の増強を求められた。


そして、華北土産として撃墜機の中で程度の良いI-14と、強制着陸させたSB爆撃機の鹵獲機が航空技研に運び込まれた為、今後の参考の為にと見学を許された。



数日後、航空技研に出向くと破損はしているが状態の良いI-14が格納庫の片隅に置かれていた。SB爆撃機は別の部署で調査しているらしい。


I-14は私が見た物より更に改良されていた。


全金属製の機体はそのままにエンジンは640馬力のM-22から750馬力のM-25へ。武器も空戦では使い物にならないAPK-11無反動砲から発射速度の速い7.62ミリShKAS機関銃を4挺に変更されていた。

この機銃はこの時代にしては破格の毎分1800発の発射速度を誇り、完全にプロペラに同期することが出来るのだ。

しかも、この機銃は軽量であり4挺のShKASを搭載してもベルト給弾の弾丸をそれぞれ650発含めても160キロに過ぎないのだ。


これを打ち込まれても落ちない日本の戦闘機も悪くないのではないかと思ったのだが…、あまり落ちてないという91式を作ったのは私か…。

頑丈に作ったお陰で、華北では好評らしい。

離着陸距離が極めて短く不整地でも問題なく使えるという点が評価されているらしいが…。


ShKASをコピー出来ないか航空技研の技官に聞いた所、微妙な表情をしていた。


技研から戦闘データを持ち帰り、早速修正にはいる。

武装のM2重機を機首二門に更に主翼内に二門を追加、エンジンをユモ211F-1に変更。

それに伴う設計変更を行い、来月には試験機を作ってテストをし、直ちに量産に入ることになった。




ソ連機と対面しました。案外性能がいいのです。

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