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アリス イン ザ ビースト  作者: ペン
6/7

6話 訓練

優介が御伽噺機関にはいってから1週間が経過した。

優介は今コンクリートで囲まれた部屋で藤堂による訓練を受け、投げ飛ばされている。

「痛っ!」

投げ飛ばされた優介の眉間に藤堂は追い打ちでゴム弾をうちこんだ。


「アハハハ駄目だよ、優介君の攻撃は直線的で正直すぎる」


優介は立ち上がり藤堂に突っ込み顔を蹴りあげようとするが


「だから動きが読みやすい」


藤堂は顔を横にずらし、かわすと優介の残った片方の足をはらう。

「ぶへっ」

優介はまた無様に倒れる。

この1週間、優介は藤堂に一方的にやられているが、優介は異能アリスを使用した状態(今では両腕を獣化するまでに至った)に対し藤堂は異能アリスそして異能アリス発現により魔力マナを扱えるようになった異能所有者なら誰でも使える身体強化を使わず、唯一の武器は右手に持った銃(ゴム弾)という。

かなり優介に有利であるはずなのだ。だがそれでも優介は藤堂にまともな攻撃を一発もあてられないでいる。


「そろそろ帰るといい。もう夜の9時を過ぎてるよ」


そういって藤堂は腕時計を優介に見せる


「あっやべ!今日もありがとうございました。さよなら〜」


優介ははしって部屋を出ていき「明日は勝ちますからね〜」といいながら手をふる。

それを微笑ましく見ながら藤堂は手をふりかえすのだった。






藤堂は事務所(前回優介を勧誘した部屋)に戻りイスに着ていた灰色がかった白いトレンチコートをかけると、腰をおろし1日の疲れを癒すようにコーヒーをゆったりとした動作で一気にあおる。

すると扉が開く音が聞こえ、顔を向けると司音が真剣な表情をして藤堂の座るデスクへと歩いてきた。


「いつまでこんなことを続ける気ですか?」


「こんなこと?」


「最近入った新人のことです」


「あ〜優介君かい、彼の素直な所は嫌いじゃないけど、彼の動きが素直過ぎるのは考えものだね」


「はぐらかさないでください!今日少し様子を見にいきましたが、あれはなんですか!!あれじゃレベル3の夢魔獣とまともに戦えるかどうか」


「まあまあ落ち着きたまえ、これでも私は一等級の隊士だよ。彼と私では実力に天と地ほどの差があるのは君も分かっているだろう」

御伽噺機関にはランクがあり一等級というのは最高ランクであり全体の1割ほどにも満たない人数しかいない。それに対し司音と京花は三等級、優介は一番下の八等級である。

また夢魔獣にも強さのランクであり主に所有する魔力マナの量や濃さによってわけられ、レベル1から9まである。


「それに一週間であそこまで異能を扱えるようになったんだ。私は大したもんだと思うよ」


「異能はともかくあいつの動きはひどすぎます。

ましてあいつの異能は変身トランス型ですよ」

異能アリスには3つのタイプがあり

一つ目は能力アビリティ型、炎や氷を出したり風を巻き起こしたりして操ったりする

二つ目は召喚サモン型、武器やモンスターなどを呼び出したりする

3つ目は変身トランス型、文字通り体を変身させる

優介が所有するのは変身型の異能であり、特に変身型は戦闘時のスキルが要求されるのだ。


「とにかく今のままでは夢魔獣と戦うのに少なくともあと3年以上かかる。明日からは俺が相手をします。いいですね」


「えっ!ちょっと待ち」

司音は藤堂の返事を待たず部屋を出ていった。

部屋に残された藤堂は困ったようにため息をつき


「まったく、彼にも困ったものだね。そもそも優介君の成長の速度に問題はないのに。それどころか普通より少し早く成長してきてる。

でもまぁ…、司音君は心配なんだね」

そういって悲しそうな表情を浮かべる藤堂は今は亡き仲間を思い出していた。






土曜日である今日は学校は休みのため、朝から優介は機関の事務所に顔をだし、そこで今日から優介の訓練の相手が司音になった事を藤堂に伝えられる。


「えっ?司音さんですか」


「そ、いつもの部屋でもう待ってると思うから早くいくといい」

そう言われた優介は、いままで藤堂と訓練していた部屋に移動し扉を開けると、部屋の中央に目を閉じた司音が静かに立っていた。

「やっと来たか」

目を開いた司音は優介を睨むようにみると口を開いた


「藤堂さんからきいてると思うが、今日からは俺がお前の相手をする。あの人のやり方だといつまでたっても、お前が成長しなさそうだったんでな。ちなみに異能アリスは使用しないが軽い身体強化は使わせてもらう。分かったな?分かったら始めるぞ」


「はい、ってウオ!?」

言い終わると同時に司音は優介との距離を一気に縮め、蹴りをうちこむが、優介はとっさに体ごと一歩下がることで回避する


(ほぉ、今の蹴りをかわすのか。だけど…)

司音は蹴りの勢いをそのまま回転し片方の足で優介の足をはらい体勢を崩したところで胸に掌打を打ち込む。

打ち込まれた優介は、そのまま吹っ飛び壁に激突する。


「立て、今のは挨拶みたいなもんだろ」


異能アリス

優介は胸をおさえながら立ち上がり、両腕に異能アリスを発動する。

その後も司音は手を休めることなく優介をボコボコにしていき、優介も反撃するもかわされカウンターをいれられる。そうやって司音との訓練の1日目は終了した。


「始めるぞ」

日曜日、朝から優介は司音との訓練を行った。

最初の数発は司音と打ち合えるようになったが、それでも…


「ふん」

司音は優介の拳を体をひねってかわし、そのまま回転蹴りを優介の脇腹に入れた。

一瞬動きが止まった優介だが、その隙を逃すばずもなく司音は優介の腹にアッパーをいれ、優介の体はくの字におれまがり地面から数ミリ体が浮いた。やはりその後も司音にまともな一撃が入ることもなく、藤堂と訓練していた時よりボロボロに優介はされていった。




3日目の月曜日、学校が終わると


「優介、今日一緒に帰ろう」

はにかんだ笑顔をした天音に誘われるが


「ごめん天音、用事あるから」

優介は走って教室を出ていき、天音は寂しそうな表情をうかべていた。



御伽噺機関につくと、すぐに例の部屋に行き司音と対峙する。


「今日もお願いします!」


「おう」


そういって始まるが、やはり優介は司音にボコボコにされていった。

そこで司音が痺れを切らしたように喋り始める


「お前さあ、やる気あんのか、力はないけど覚悟だけはありますってか、ふざけんなよ餓鬼が!

戦場で最終的に求められるのは力だ。それがなければ死ぬぞてめえ」

そう言う司音の目はいつになく険しく、そして司音から放たれる圧に優介の頬を冷や汗がつたう。


「どうせ死ぬなら、今ここで殺してやるよ」

司音から放たれる殺気からそれが冗談でも何でもないことを、優介は察し背筋がゾクリと震える。


瞬きをすれば優介の目は司音の拳でおおわれ、それを必死の思いでよけ、勢いがころせずにころがる。

顔をあげるとそこにはコンクリートの壁が司音の拳によって大きくえぐれていた。


(殺される)

そう確信した時、優介の異能アリスは本当の意味で発動した。

目の前の光景がひどく遅く感じ司音の動きがよくみえる

優介は司音が殴りかかってくるのを左手で軌道を反らし、右手で的が小さい顔ではなく体を殴ろうするが、司音は体を横にずらしかわす。そして前のめりになった優介の顔に、膝蹴りをいれようとするが両腕を交差しガード、そして飛び上がることで威力を殺しほぼノーダメージで防いだ。

さっきまでとは別人のようなものでね、動きに司音は驚愕しながらも、すぐに空中に飛び上がり身動きが取れない優介を蹴りあげるが、これを体をひねってかわした優介は司音を殴り付けた。

お互いが地面に着地し睨み合う。

ふと司音が優介に背を向け扉に向かって歩いて行く

「御伽噺機関では基本二人一組で行動する。お前は明日からオレと組んで見回りだ。午後5時にここに来い。遅れんなよ」

一瞬呆けた顔をした優介だが、そう言う司音の頬に微かなかすり傷があるのを見た優介は、両腕を強く上に掲げた。






廊下をかつかつと音をたてながら歩く司音はあることを思い出していた。


〜「司音君どうだい優介君は」

「藤堂さん、どうもこうもダメダメですね。まるで動きがなってない。あれで夢魔獣のもとにいかせるのは死ににいかせるようなものです」

「そうかい、なら殺気かなんかで煽ってみるといい」

「殺気?」

「そう、ちょっと私もやってみたけど危うく殴られるとこだったよ」

司音は藤堂を疑うように見たあと

「わかりました明日やってみますけど、あまり期待しないほうがいいですよ」〜


司音はそっと治りかけのかすり傷のついた頬を触れるとニヤリと笑い廊下を進んで行く



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