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アリス イン ザ ビースト  作者: ペン
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4話 黒き獣の雄叫びを

いつまでたってもこない痛みに天音が目を開けると

夢魔獣が壁に激突したのか壁が大きくへこみ威嚇するようにこちらを睨み付けていた。

「えっ」

天音が理解できない状況に困惑した声をだし、ふと夢魔獣の視線が自分の後ろを向いていることに気が付き振り返ると

そこには、腕を失ったはずの肩から黒く鋭い甲冑のような腕が生え白目をむいた優介が立っていた

「優……介…」

自分の幼なじみのあまりの変貌ぶりに天音が言葉を失っていると優介はニヤリと口角をつり上げ

「ガアァーーーーーー!!!!」

優介は獣の如く雄叫びをあげ夢魔獣へと歩み出した

夢魔獣は体を大きく引き弾丸のように優介に向けて飛び出してきたが、それを優介は片手で受け止め残ったもう片方の手で夢魔獣を殴り飛ばし夢魔獣は教室の外へ吹っ飛んでいった。

殴った左手から白い煙があがり再生しつつも血がポタポタと滴り優介はそれを気に止める様子もなく夢魔獣を追う。

「待って!!お願い優介、私をおいてかないで」

優介がどこか遠い場所に自分をおいていってしまうのではないかと感じた天音は優介を呼び止めるが、優介はまるで聞こえていないかのように教室の外に飛び出していった。





学校の外では駆けつけた警察が学校を包囲し野次馬達がそれを押し退け中を覗こうとしたり命からがら逃げてきた生徒達はいそいでこの場から逃げていった

「皆さんここは今非常に危険です急いでここから離れてください!」

警察が必死に呼び掛けるなか学校からまた()()爆発音のようなものが聞こえてきたそれがさらに何も知らない野次馬達の好奇心をくすぐる。

「警部!市民を押さえるのにも限界があります。それに中にはまだ生徒が残っているという証言もあります。何故助けにいかないんですか!?」

「ダメだ。特殊部隊でもない我々がいったところで無駄死にするだけだ、今は待つしかない」

「しかし!」

青年がなお食い下がろうとした時、女の声が青年の声を遮った。

「そうそう夢魔獣には通常の銃じゃまともなダメージなんて通らないんだよ、そんなちっぽけな拳銃でどうすんの?」

「なっ!部外者が何でこんな所にいるんだ。早く出ていけ!!」

正論を言われた羞恥心から顔を真っ赤にした青年が女に向けて怒鳴る。

「少し落ち着け」

警部が青年をなだめ

「待ってたよ、遅かったな御伽噺機関」

責めるような目をヘッドホンを首にかけた男と金髪のポニーテールの女に向けた。朝方カフェにいた2人である。

「だってしょうがないじゃないここに来るの初めてなんだし、

道に迷ったりなんだりこれでも大分急いだのよ」

女はやれやれとでも言いたげに首をふり

「そもそも夢魔獣が短時間に同じ地域で出現するなんて事はほとんど無い。調査後もまだここら辺に残っていたことを感謝してもらいたいぐらいだな」

男はため息をつきながら言った

「お前らなぁ!」

あまりな二人の物の言いように青年が再度声を荒げそうになると

「我々としては早く夢魔獣を駆除してくれればそれでいい」

警部が青年を手で制した。

「言われなくてもそうするよ」

そう男が言い残すと2人は学校に向けて進んでいった。

「あんなのが御伽噺機関なんすか」

二人の背中を見つめたまだ不満そうな青年が言うと

「あんなのでも我々が足元にも及ばないほどの力を持っている。

そう納得せざるをえまい」

二人をどこか異質なものでもみるかのような目で見ていた警部が答えた。



「なによあいつら感じ悪いわね〜、ん?どうしたの」

女が何も無いはずの空を見上げていた男に不思議そうに話かけると

「なんでもない」

男は視線を戻し、それだけいうとまた進みだした。






男の視線の先にはシルクハットをかぶり、スーツをきた人間の大人ほどの体格をしたウサギが、深々と椅子に座り紅茶を啜り空中にプカプカと浮いていた。

「いやはやこちらは気配も魔力マナもほぼ完全に消していたのに、こちらに気付き位置まで特定してくるとは末恐ろしい男ですな」

ウサギはどこからともなくポットをとりだし紅茶をつぎたした。

「しかしこちらもなかなか」

ウサギが見つめる視線の先には獣のように荒れ狂った優介と夢魔獣がいた。

「ヴォーーーーー‼」

夢魔獣が大きく吠えると優介に向かって突進し拳を大きく振り上げ、おとした。優介はそれをかわすと飛び上がり落ちると同時に夢魔獣に踵をめりこませた。その衝撃に身を屈ませた夢魔獣が優介をギロリと睨むとただひたすらに殴りかかり、優介もそれに応戦した。右腕は傷一つないのに対しそれ以外のところは傷だらけで血がにじんでいる。だが優介は攻撃の手を休める気はなく、

今優介の頭の中にあるのは殺るか殺られるかそれだけだった。

「素晴らしい、発現したばかりの異能アリスでレベル4程度の夢魔獣とはいえあれだけやりあえるとは。しかし、もうそろそろ終わりですかね今回は十分楽しめましたし私はそろそろ戻りますか」

そう言うとウサギは椅子に座ったままクルリと反転しそのまま飛び去っていった。



夢魔獣の一撃を優介が両手を交差しガードしたあと、優介が夢魔獣に飛びかかろうとすると

ガン!!

優介の足元にハンマーが飛んできた。

「そこら辺にしときなさい」

突如、二人の男女が現れハンマーが女の手元に戻っていった。

「夢魔獣はあたしがやるから、あんたはそいつの対処よろしく」

「ああ」

男が短く答えると女は凄まじい速度で夢魔獣にせまり、夢魔獣はそれにあわせて拳を突きだすが女はサイドステップでかわす。

「かなり人を喰ってるわね、レベル4の上位ほどの力はあるわ」

女は夢魔獣を冷静に分析すると大きく跳躍した。ハンマーは電気を纏うかのようにバチバチとひかり

「雷撃墜!」

言うと同時に女はハンマーを振り下ろし雷が夢魔獣の体を貫通し大きな穴を開けた。

「まっ、その程度じゃ全然問題じゃないんだけどね」

着地しハンマーを担いだ女は得意げに言った。



一方その頃優介は地面にうつ伏せに寝ていたいや寝かせられていた()()()()()()()()。先ほどから耳鳴りが激しく何度立ち上がろうとしても足元がふらつきまともにたっていられないのだ。

「無駄だ」

男がそう言うと優介の背中に強い衝撃を叩きつけ優介の体が地面にうえつけられ地面にはヒビがはいった。

「うガァ」

現在の優介の頭の中には殺るか殺られるかしかない。

このままだと殺されると思った優介は手足で体を押し出し男に飛びかかり右手を大きく振りかぶったがその拳は見えない障壁によって阻まれた。

「その闘争本能まるで本物の獣だな」

男がそう言うと優介は吹っ飛び壁に激突した。

それに男が手を鉄砲のようにして向けると

サウンド弾丸バレット

優介は見えない弾丸をいくつも体に受け意識を失った。

「終わった〜?」

「ああ、機関に戻るぞ」

女にそう声をかけると男は優介を担ぎ上げ二人は去っていった。

そうしてはじまりの悪夢は幕を閉じた。



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