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6 異世界へ出勤

 いよいよ今日は異世界へってことで、ずいぶんワクワクしている。

「田島さん、ずいぶん張り切ってるようですね」

 どうやら顔に出ちゃってるようだな。

「いよいよ今日から現地入りってことで緊張してます」

「さっそく行きましょうか。これが田島さん用の次元転移装置になります」

 これもイヤリングタイプのようだ。先日使った装置と比べてずいぶん小さい感じだ。

「行き先がカスターニョ王国の店舗に固定されてますし、田島さん一人だけしか転移できない専用ですからコンパクトなんです」

 俺の疑問もお見通しのようだな。アイリーンさんの使用している装置はいろいろな場所へ行けるし、同伴者もOKってわけか。

 いろいろ機能がつくと装置もある程度大きくする必要があるんだろうな。

「翻訳イヤリングと逆の耳につけるといいと思います。これも他の人に見えませんからね。

 先端のつまみをねじると店舗へ転移して、戻すと転移元の位置へ転移します」

 それは操作も簡単そうだし、なくすこともなさそうだな。でも他の人の見てる前で間違って転移しないように気をつけないといけないな。


「では、さっそく参りましょうか」

「はい」

 俺は次元転移装置のつまみをカチリと回した。小さな魔法陣に包まれ景色が揺らめくと、俺は異世界の店舗に転移していた。すぐにアイリーンさんも現れた。

「アイリーンさん、タジマさん、おはようございます」

 ケモミミのココさんが俺たちにお辞儀している。お辞儀の文化もあるようだ。

「おはよう、ココさん。今日からよろしくお願いします」


「おはようって言うことですが、ここと向こうでは時間の流れってどうなってるんですか?

 どちらも朝ってことでいいんですか?」

 疑問に思ったことはすぐ聞いておいたほうがよさそうだからな。

「さっそくいい質問ね。地球の一日二十四時間と比べると、こちらの一日は二十三時間四十分くらいね。

 だからあまり時間の流れは気にする必要はないわ。

 でも、こちらに一日以上いると、持ち込んでるスマホの時計とかとずれてくるから注意してね。

 正確な時間を知りたい時は、総合取引機器を見るようにしてね」

「わかりました」

 なるほど、あまり時差ボケみたいなことは気にしなくてもよさそうだな。


「それではさっそく現地でのオリエンテーションから始めましょうか。

 ココさん、通貨を一通り機器から出してきて」

「はーい」

 ココさんが器用に機器を操作している。

「機器はココさんも操作できるのですか?」

「ココさんの権限は現地通貨の出し入れだけになってます。当然ログは残りますのでご心配なく」

 いや、別にネコババとかそういう心配してるわけじゃないんだけど。

「通貨を機器から出すって言ったけど……」

「あっと、まだ説明してませんでしたね。機器には金庫がわりにこちらの通貨を転送させて保管しておくことも可能です。

 やり方はココさんが知ってますからあとで聞いてみてくださいね」

「そういえば、こちらでの食費とかの私用での商品の引き出しはどうしたらいいんですか?」

「んー、常識の範囲内でなら機器使って店舗費用で処理しちゃっていいですよ。

 あまりにも金額が多い時は本部に連絡入れてくださいね。時々、監査が入りますから」

 どのあたりまでいいのかがよくわからないけど、また曖昧なときは聞けばいいか。


「はいどうぞ」

 ココさんが7種類の通貨を並べてくれた。

「ここでの通貨単位はジェルとなってます。10ジェルは約1円と考えてもらって結構です。

 約ってのは、ジェルの価値自体はほぼ一定なんですが、円の価値のほうが結構動くせいですね」

 確かに円って変動相場制のせいで価値が絶対的ではないんだよな。

「ここで使われている貨幣は順に鉄貨・小銅貨・銅貨・小銀貨・銀貨・小金貨・金貨で1ジェル=1鉄貨で、10鉄貨=1小銅貨・10小銅貨=1銅貨・10銅貨=1小銀貨・10小銀貨=1銀貨・10銀貨=1小金貨・10小金貨=1金貨となってます」

 アイリーンさんは1つずつ硬貨を指差しながら説明してくれた。10進法で助かったな。通貨が12進法の国も知ってるけど面倒でしかたないから。

「つまり1銅貨が約10円って感じですから日本人の田島さんには馴染み深いものがあるかな」

 ということは、100万ジェルで1金貨、10万円って感じになるわけか。金貨が10万円ってのも馴染みがあっていいな。

「通貨についてはOKかな?」

「はい、大丈夫そうです」

「このあたりのことは、わからなくなったらココさんに聞けば大丈夫だから。

 ココさん、通貨を戻しておいてね」

「はーい」


「では次に店舗内の説明を簡単にしておきましょうか。

 これもココさんが詳しいから後で細かいことは聞いてください」

「はい」

「まずこちらが倉庫。田島さんとココさん、それにわたしが登録済みで、扉に手を当てれば認証されて開きます。

 中は見たとおりの本当の倉庫ですから、仕入れた物の一時的保管や店舗で必要なものに適宜利用してください」

 六畳くらいの広さのガランとした倉庫で今は何も入ってなかった。


「ニ階はココさんのプライベートスペースだから、許可なく立ち入っちゃダメですよ」

「ココさんは住み込みなんですか?」

「そうですよ。基本的にいつでも店舗にいてくれます」


「ここは休憩室ですね。キッチンなどもありますからご自由にお使いください」

 見回すと、ガスレンジに電子レンジや冷蔵庫もある。

「あのー、素朴な疑問なんですが、ガスや電気も使えるんですか?」

「ふふ、この店舗内限定ですけど使えますよ。原理は内緒です」

 内緒なんだ……まぁ便利だから考えるのはやめておこう。

 そういえば、あの総合取引機器もどう見ても電気使ってるよな。


 ふと気になって天井を見てみたけど、そこには予想に反して蛍光灯とかはなかった。天井全体が光ってる感じだ。

「天井の光はなんですか?」

「魔法によるものですね、この世界の仕組みです」

 魔法が使える世界ってことなんですね、ここは。

 それにしても魔法と日本の科学技術、そして別の次元のものと思われる高度な技術がいろいろ混ざってる店舗だな。

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