20 初めての週間報告
月曜は新宿の本部の方に出勤して週間報告を行うことになっている。
先週は勤務してすぐってことで報告を免除されたため、今日が初めての報告日になる。
いつも自宅のアパートから異世界へ直接出勤しているため、満員電車に乗るのは久々。
マジこれきつい。よくこんな生活に皆、耐えられるよな。前の仕事では海外勤務が多かっただけに、この東京に通勤ラッシュというのだけは本当に耐えられそうにない。
約束の朝九時に本部に赴くとアイリーンさんしかいない。本当にここってアイリーンさん以外に会ったことないんだけど。
「おはようございます」
「おはよう」
「いつも思うんですがここって誰もいませんよね」
「報告とか皆夕方を希望する人が多いですからね」
そうか、夕方報告なら通勤ラッシュで満員電車に詰め込まれることもないか。
「じゃ、俺も……」
「ダメですよ、夕方はすでにいっぱいですから、朝なら曜日の変更も可能ですが」
「そうですか……」
しかたないな。皆考えることは同じってことか。
「それでは週間報告書の方はいただいてますが、口頭で説明お願いいたします」
「はい、わかりました。あちらの世界への輸出品は書面のとおり、砂糖とコショウの販売とサンプル登録を行っております。
また、今後も継続的に取引行えるように進めております」
「わかりました。これらの商品は他でも人気のようですね」
やはりそうだよな。中世世界への黄金パターンってやつなんだろうな。
「試用期間の間は、これらの商品でまわす予定ですが、今後正式採用後に輸出商品も増やせるよう検討しております」
具体的には、シャンプーやリンスなどを広めれないかと思っているのと、真珠や人工ルビーなどを売り物にできないかと考えている。
シャンプーやリンスは広めるための工夫が必要であるし、宝石類は貴族との直接取り引きできるルートを開拓してからにしたいと。
「わかりました。期待しています」
「続きまして、輸入品はまだ試験運用中というのが実情ですが、少々気になる点があります」
「なんでしょうか?」
「まず、薬草として仕入れたものの中に大麻やケシなどのこちらの法律で規制されているものがありましたが、問題ありませんか?」
「総合取引機器で買取可能なものに関しては、すべてこちらでも合法な国・地域で処理しますので気にしなくていいですよ。ただ、あちらの世界での法律には気をつけてくださいね」
「わかりました。そうなると象牙もワシントン条約とか気にしなくてもいいですか?」
「はい大丈夫です。ただこれもむこうの世界で乱獲されたりして生態系を乱さないように気をつけてください」
大丈夫なんだ。じゃ、象牙の方はどんどん冒険者ギルドから仕入れることにしよう。
あっと生態系か、気にしてなかったけど、どうなんだろう?
今度冒険者ギルドに行った時に聞いてみるか。
「あと気になる点が何点かあります」
「なんでしょうか?」
「こちらの世界からの輸出する時のプラスチックやビニルなどですが、ゴミとかどうしましょう?
分別ゴミとかあちらではないですし」
「あら、気にせず向こうで捨てても大丈夫ですよ。
田島さんはあちらでのゴミ処理方法を知らないようですね」
「と言いますと?」
「農村部は別ですがあちらの都市部では、ほぼゴミ処理はスライムに食べさせてます。
あちらのスライムはプラスチックなどの石油製品でもガラスでも金属でもなんでも消化しますからね」
スライム……マジか?
そんなシステムになってたなんて思いもしなかったよ。
「ついでに言えば詰め替えとかもしなくて大丈夫ですよ。他地域でもあちらの世界の商人たちも順応性ありますから、さほど気にせずにすぐ慣れてくれます」
そうなのか……詰替えの手間がないなら、塩とかもそれなりに儲けになるかもしれないな。
「あとこれはできればの要望なんですけど」
「なんでしょう?」
「あちらでの荷物の輸送などが結構大変なんですが、あちらの世界に実在するアイテムボックスとかそれに近いものがあると便利だなと」
「アイテムボックスですか、確かにあったら便利そうですね。ちょっと経費的に厳しいかもしれませんが検討はしてみます」
「よろしくお願いします」
「田島さんの方からはそれくらいですか?」
「はい」
「ではこちらから二点ほど。
まずは、いろいろと機器から給与引き落としで購入してるようですが、あのくらいの金額でしたら気にしなくて大丈夫ですよ。公私の切り分けは重要ですが何が商売につながるかわかりませんから、経費と考えてもらって構いません」
「はい、わかりました」
とは言うもののなんとなく使い込みしてるみたいで嫌なんだよな。あくまで俺の美意識の問題だから。
「それともう一点。
恋愛問題についてはとやかく言いませんが、あくまで自己責任でお願いしますね」
おっと、完全にバレてるようだ。だが自重をするつもりはない。