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2 勤務地は異世界?

 とりあえず、黙ってても仕方ないから、思いついたことから質問させてもらうか。


「その店舗では一人で仕事を行うことになるのでしょうか?」

「あらかじめ現地雇用の従業員を一名雇用済みです。必要に応じて増員していただいても構いません」

「現地雇用従業員の給与はどうすべきですか?」

「試用期間は本部より支払いますが、正式採用後は現地の予算内で対応してください。

 増員分については試用期間内でも現地予算内で行っていただきます」


「最初に大きな損害を出した場合はどうなりますか?」

「試用期間は現金取引のみにしていただきます。最初の開業資金以外に毎月一度まで申請に応じて資金を用意しますのでその範囲内で売買を行ってください」


「現地でのトラブルについてはどうしたらいいでしょう?」

「現地の法律に違反した場合などは、本部で調査の上、社員に非がないと判断された場合は本部で出来る限りの支援を行います。

 ただし社員の非が認められた場合はこの限りではありません」


 うーん、とりあえず聞く限りでは問題なさそうな気がするなぁ。

 じゃ、一番気になってることを質問してみようか。


「勤務地はいったいどこですか?」

「カスターニョ王国の地方都市になります」

 カスターニョ王国……聞いたことないなぁ。スペイン語かポルトガル語っぽい響きがするから、南米かもしれないか。

「そこへは日本から直行便が出てるのですか?」

 飛行機を乗り継いでとか、船とか言われると困るよな。毎週ここに顔を出さないといけないって言ってたし。

「問題ありません」

 問題ないってどういう意味なんだろう?


「その国は言語は何語が使われていますか?」

「現地語ですね。でも問題ありませんよ」

 問題ない? 現地雇用従業員が通訳してくれるってことかな?

 言葉が通じないと取引もなかなか大変そうなんだが。


「やはりこのあたりのことは、なかなか話だけでは通じなさそうですね。

 一度現地の様子を見てみますか?」

 え、見てみるかって……あぁ動画とか撮ってあるんだろうな。確かに一度見ておいたほうがようさそうだ。

「はい、お願いします」

「では、こちらのイヤリングを耳につけてください」

 そう言ってアイリーンさんは片方だけのイヤリングを俺の前のテーブルに置いた。

「イヤリング?」

「えぇ、こういうふうに」

 そう言ってアイリーンさんは長い髪をかき分けて、イヤリングをつけた耳を俺に見せた。

 そう、先がとがって長い耳を。

「エルフ?」

 思わず口に出してしまったけど、まさかな。ファンタジー小説ではあるまいし。

「あら、よく知ってますね」

 え?

 冗談だよな、俺は言われたとおりにイヤリングを右耳につけた。


「それでは、現地を見に行きますね」

 アイリーンさんはテーブルの上に何やら小さな装置を取り出すと、そのスイッチを入れた。

 その装置は青く光るとまわりに魔法陣みたいなものを作り出した。

 いったい、何が起こるんだ?


 周りの景色が揺らめくと、部屋の感じが変わった。

 さっきまでいた応接室ではなく、大きな部屋の隅だ。

 何が起こったんだろう?


「アイリーンさん、いらっしゃいませ」

 横から女性の声が聞こえたので、思わずそちらを見ると、小柄な粗末な服を着た女の子の姿が。

 いや、服なんてどうでもいい。

 その女の子の頭にはどう見てもケモミミが……

 付け耳って感じはしないよな。

「ココさん、こちらは面接に来た田島さん。ここの支店長さん候補の方ね」

「田島さん、こちらのココさんが現地従業員の方です」

 俺は呆然と立ちすくんでる。ここって……

「アイリーンさん、ここって!」

「ここは先程言ったとおりカスターニョ王国の地方都市で商都クレメンテです」

「さっきの装置は? 魔法陣ができたみたいに見えたけど」

「あら、魔法陣とかいろいろ詳しそうですね。次元転移装置ですよ」

 次元転移装置……ってことはもしかしてここは異世界ってやつですか?


「もしかしてアイリーンさんはこちらの世界の?」

「いえ、わたしはこことはまた別の世界で採用された社員です」

「異世界はそんないろいろあるんだ……」

「我が社の支社がある世界だけで三十個ですね。未発達で取引の対象とならない世界はもう数え切れないくらい」

 確かにこれはハンパなメンタルではやっていけそうにないな。常識外の出来事に適応できないやつには確実にムリそうだ。


 ココさんって言ったっけ。ケモミミの女の子がこちらを興味深げに見ている。

 採用されれば俺の同僚か。

 見たところ十代半ばって感じだけど、異種族となるとさっぱりわからないな。

 まぁ俺の節穴のような目では人間の女の子の年齢も正確にはわからないんだがな。

 でも、すっごく可愛い。

 そういえばアイリーンさんはエルフか。こっちのほうがなおさら年齢不詳だよな。エルフって長命って聞くし。

 まぁそういうファンタジーっぽい常識が本当かどうかもわからないけどな。


 そして何やらすっごく面白そうなことになってきたと、ワクワクしてる俺がいる。

 だって異世界だぜ。美人なエルフだぞ。可愛いケモミミの女の子がいるんだぞ。

 常識なんてクソ食らえだ。

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