16 薬草屋
翌朝、ココさんに案内してもらって薬草の小売りをしているお店に行くことにした。
薬草と一概に言ってもハーブのような香草も含まれているそうで、一枚あたり300ジェルくらいのものから高くても一枚8000ジェルくらいまでで、それ以上の特殊な薬草は一般の小売店では扱っておらず、このあたりで採取できるものは冒険者ギルドに頼むか、そうでないものは専門の商人に頼むかしかないようだ。
商業ギルドの商品サンプルに並んでいたのはそういったものらしい。
どの薬草が他の世界で価値があるとされるかはまったく予想がつかないため、とりあえず全部一枚ずつ買っていって機器に鑑定してもらおうという計画だ。
ただ、この店で売られている商品は全部で50種ほど。ココさんに聞いてみても見ただけで名前のわかる薬草は10種ほどのようだ。ココさんは申し訳なさそうにしていたが、そりゃまぁ俺だって日本で同じことしろって言われたらほとんどの草の名前がわからないからしかたない。
しかたなく売られている薬草を一つずつスマホで撮影しては、薬草名と小売価格をメモしていくという地道な作業になった。
きっと、店の人にはおもいっきり不審がられてるだろうなと思うが、あらかじめ全種を一枚ずつ買うと言ってるから、特に文句は言われなかった。
ちなみに一枚としているが実やコケのようなものもあり、小売できる最小単位ずつのことな。
まぁどう考えても面倒で嫌な客だよな。
薬草屋での地道な作業は二時間以上かかった。
51種の薬草で合計213,580ジェルかかったが、高いのか安いのかさっぱりわからないよな。
昨日の売上があるのでとりあえず金額的には問題ないだろう。
問題はこの中に利益をあげれる商品があるかどうかだな。
昼食は薬草屋の近くの店で取ることになった。
「ここのファンタナ焼きはとっても美味しいですよ」
ココさんがオススメなら食べないわけには行くまい。
すべておまかせだったが出てきたものを見てピザかなと思って一口食べてみたところ、なんとそれはお好み焼きと言ったほうがよさそうな感じ。
かかっているソースの味付けがイマイチ好みではなかったけど、これはこれでまぁいけるな。
店舗に戻って一品ごとに機器で鑑定していく。
地球にもある薬草は
【品目:バイエリアの葉/ローリエ 数量:1 買取額8円】
という感じで、両方の名前が表示されるようだ。
また、こちらでしかない薬草は
【品目:ビアリニスの実 数量:1 買取額12円】
となって、こちらの名前だけが表示されるし、名前のところをクリックすると、
「ビアトリスの実:イズランテの各地で生息する植物。現地では解毒ポーションの素材の一つとされるが効能は不明である」
と、ちゃんと解説されているんだよな。
使い方によっては結構便利かもしれない。
それにしても安価とはいえ、機器はこんなものを買い取ってどこかで需要あるのかな? と思って調べてみたところ同じ商品が機器で売られていた。
どうやら、機器で売られている商品って地球産のものには限られてないようだ。
検索の仕方によっては別の異世界の商品でも買えるらしい。
それにしても、小売価格以下か高くても小売価格より二割ほど高い程度の薬草ばかりで、儲けの多そうな薬草が見つからない。
二割ならいいじゃないかと思うが、単価が安いので相当な量を取引しないとまともな稼ぎになりそうにないんだよな。
延々と機器を操作し続けた結果、大きな利益が出るかもしれないなと思える薬草が二種類だけ見つかった。
ガザニスの葉とベアンデの実の二種なんだが、これの日本語名を見てがっかり。
それぞれ、大麻とケシなんだよな。
機器が買い取ってくれるんだから、日本の法律には引っかからないはずだろうけど、どちらかと言えば避けたほうがよさそうだよな。
下手に大量に仕入れたりすることで、こっちの世界で危ない筋の人たちとの利益とぶつからないとも限らないし。
まぁ、このまま持ってるほうが、転移して戻った時にまずいことになるので、素直に買った分だけは機器に引き取ってもらいましたけどね。
この二種がそこそこ高く売れたことで、売上合計が25,628円になって、なんとか一応黒字にはなったかなって感じだ。
丸一日かかって4000円程度の利益とか、時給換算で考えれば完全に赤字だけどな。
これもすべて市場調査だから、すべて買取不能の売上0円になったってしかたなかったところ。まぁラッキーだったと思っておこう。
ただ、これだけの薬草があれば数種は稼げるものがあるだろうと予測していたのが外れたのは痛いところ。
明日はまた別の分野にあたることにしよう。