13 ココさんの手料理
「ただいまー」
商品をひととおり壺に詰めて封ができた頃に、ココさんが帰ってきた。
「どうだった?」
「4000ジェルだったので二つ買ってました」
思ったより安かったな。丈夫だといいけど。
「ありがとう」
さっそく、頭をなでておいた。いいモフモフだ。
何かしたらすかさずに頭をなでる、これを習慣づけよう。
これで商業ギルドに行く準備はできたかな?
時間を確認すると中途半端だな、今から商業ギルドに行くとお昼にかかってしまう。
「商業ギルドに行くのはお昼ごはんの後にしようか。今からお昼にするのはちょっと時間が中途半端かな」
「まだちょっと食堂やってないかも……そうだ!」
「ん?」
ココさんが何か思いついたようだな。
「この前もらったショウユやマヨネーズでお料理作って見たんです。まだ残ってるので食べてみませんか?」
ココさんお手製の料理のお誘いとか、断るわけがないじゃないか。
「ぜひとも。それは楽しみだよ」
「あまり期待しないでくださいよ」
いやいや、たっぷり期待させていただきます。
しばらく、こちらの一般的な料理を知るために食堂に通おうとか考えていたんだが、こういうお誘いなら計画なんてすぐにでも変更しちゃうぜ。
ココさんは冷蔵庫から作り置きした料理を取り出すと、電子レンジで温めている。
こうして見てるとまったく異世界って感じがしないよな。ココさんは日本製の家電を使うのに完全に順応してるようだ。
ピピピピ
と、ごく普通の音を立てて電子レンジが温め完了したようだ。
ココさんは俺と自分の前にそれぞれの皿に料理を盛り分けた。
見たところ、肉と野菜の炒めものって感じだな。
「どうぞ、食べてみてください」
「いただきます」
肉は豚肉っぽい感触の肉で、野菜はキャベツとモヤシっぽい感じだ。
一口食べてわかった。ショウユとマヨネーズの両方で味付けしてあるな。意外とこの組み合わせも合うんだよな。
そして、少量だけどコショウも使ってある感じだ。
食べていて無性に思う。これはごはんが欲しいぞ。
とってもごはんに合う料理だ。
「どうです?」
ガツガツ食べる俺を見ながら、ココさんが不安気に聞いてきた。
「すんごく美味しい」
おもいっきりなでなでしたいところだけど、食事中だからそれはガマンしておく。
「よかった」
ココさんもほっとした表情になって、自分の食事を続ける。
「これなら、俺の国ですぐにでも嫁に行ける」
「ふぇっ!」
ココさんが真っ赤になってうつむいてしまった……また俺の発言が不用意すぎたか。
でも本当だぜ、俺の好みの味で間違いない。
「正直言うと料理にこのパンが合わないかなと」
「そうなんですよね」
ココさんも同じ感想だったようだ。味覚の好みが合うってのは大事だよな。
「俺の国に、『お米』っ主食があるんだけど、こっちでは食べないのかな?」
「『オコメ』ですか? 聞いたことないですね」
なんか今、翻訳イヤリングが仕事しなかったよな……こっちの世界にないものは翻訳できないってことかな?
「今度一度食べてみてよ。もし気に入ったら取り寄せるから一緒に食べよう」
「楽しみにしてますね」
試食はごはんパックでいいけど、実際に米と炊くとなると炊飯器も必要だよな。
あまり私用で機器から発注するのも気がひけるんだよな。
とりあえず、二人とも食べ終わったので、ココさんの頭を俺の気が済むまでなでまわしておいた。
食後のモフモフを満喫したところで、俺はちょっと機器を操作してヘルプを参照してみた。
よく読んでると発注時のオプション選択で、引き落とし先を支店の残高から、俺の給与引き落としに変えれるじゃないか。
完全に私用の物の発注はこっちに切り替えればOKだな。
ついでに、ごはんパックを1つ発注しておくことにした。これも俺の給与引き落としでいいな。
ごはんパックもいろいろあるけど、TVコマーシャルもしている有名なものにしておいた。
ごはんパック 130g 150円
「ココさん、これがさっき言ってた『お米』って食べ物。レンジで温めるだけで食べれるようになってるやつね。
本当は材料から作るんだけど、これはお試し版ってことで。夜にでも食べてみて、今日のような味付けの料理に合うと思うから」
「ありがとうございます。楽しみにしてますね」
「そだ、ココさんに作ってもらった料理の代金だけどどうしよう」
「要らないですよ。いろいろもらっちゃったし」
「それでもこれからもちょくちょく食べさせてもらいたいからなぁ……そうだ、いろいろ素材とか調理道具とか俺の給料の方からの引き落としで出すから、それでチャラにしておいて」
「なんか、それだとわたしの方がもらいすぎなような」
「いいからいいから」
「んじゃ、お言葉に甘えてそういうことで」
うん、なかなかいい落とし所を見つけれたんじゃないかな。
当初の食堂の計画とはまた大きくずれていったが、これはこれでいいだろう。